S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
222 / 369
第19章   Clue

しおりを挟む
 智樹が出て行ってからというもの、まるで激流を下るように傾きだした経営を立て直すため、俺は昼夜を問わず奔走した。

 ……と言っても、俺に出来ることなんてたかが知れていて、それでもなんとか劇場の運営を維持出来ているのは、親父の力が大きく作用しているわけで、こうなった以上プライドなんてモンは何の役にも立たない。
 不本意ではあったがその親父の力を頼ることにした。
 親父自身、劇場に対しては深い思い入れがあることを、俺は幼い頃から知っていたから。

 智樹に関しても、殿様探偵から時折寄せられる情報だけでは足りなくて、親父の人脈を利用させて貰うことにした。
 風俗業界に携わる人間なら、親父を知らない奴はいないってくらい、業界内では顔が広いし、当然顔だって利く。その力を利用しないって選択肢は、情けないことだけど俺にはなかった。

 ただその親父の力をもってしても、坂口が言っていたMという人物に関してだけは、どうしても情報が得られなかった。
 それどころか、例のショーパブの周辺にある風俗店の殆どに、風俗業界のドンとまで呼ばれる親父の顔が通用しなかったと言うんだから驚きだ。

 「打つ手なし、か」

 殿様探偵から送られてきた調査書と、親父の部下が持ち込んだ報告書を交互に見て、雅也が落胆の息を吐き出した。
 雅也は雅也で、和人のことが心配で仕方ないんだろうな。
 時間を見つけては、茂美さんの店に和人から連絡があるかもしれないからと、わざわざ足を運んでいるとも聞くし……
 このままじゃ、劇場は何とか持ち堪えられたとしても、俺と雅也の方が先に潰れちまう。


 何とかしねぇと……


 「俺さ、一度智樹の実家に行ってみようと思うんだ」

 俺は少し前から考えていたことを口にした。

 「智樹の実家に?」
 「ああ。智樹が実家を出たのは十七の時だからな。当然、親御さんだって智樹のことは調べてる筈だろ?」
 「確かに……」
 「っつーことで、ちょっと出かけてくるわ」

 勿論、情報が得られるなんて保証は、どこにもない。
 寧ろ、行くだけ無駄……なんてことも考えられないわけじゃない。


 でも今は……


 どんな小さなことでも良い、、僅かな可能性に賭けたいんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...