S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
272 / 369
第22章   Not Believe

しおりを挟む
 「これが何か分かるか?」

 佐藤がオーナーの前に例の小袋を広げて見せた。

 「これ……は?」

 オーナーが小袋を手に取り、しげしげと見つめる。

 「分からないかい?」

 そう問われても、オーナーはそれが何なのか分からない様子で、しきりに首を傾げる。

 「そうか、分からないなら仕方ないか。でも、ならば聞くが、君は智樹とは旧知の仲だと聞いているが、今の智樹の変わり様を見てどう思う?」
 「どう思うって、それは……。でも、それとこれと何の関係が?」
 「智樹がこうなったのが、これのせいだと言ったら?」

 一瞬……、本当に僅かな一瞬だけど、オーナーの彫りの深い端正な顔がピクリと歪んだ。


 違う……
 末端の俺の耳にも入るくらいだ。
 財界にも顔の広いオーナーが、あの噂を知らない筈がない。

 分からないんじゃなくて、分からないフリをしてるんだ。
 その証拠に、袋を持つ手が酷く震えている。

 きっと、目の前に突き出された現実を受け止められないんだ。

 この人も、苦しい程、智樹のことを愛してるから……


 その場にいる誰もが口を硬く閉ざしたまま開こうとはせず、時間だけが無駄に過ぎて行く中で、ただ一人智樹だけがコロコロと笑い声を立てている。
 自分の置かれている状況が、全く理解出来ていないようだった。


 このままじゃ駄目だ……


 どれだけ時間を費やしたところで、このままでは何の解決にもならない。
 俺はテーブルの上の小袋を一つ手に取ると、虚ろに空を彷徨う智樹の目の前に差し出した。

 「これ……、智樹のだよね? こんな物どこで手に入れたの?」

 心神耗弱状態の中でも、俺の声は届いているのか、それまでの笑い声がピタリと止まり、見開いた目の端から、大粒の涙がいくつも零れ落ちては、膝の上で硬く握った拳を濡らした。


 その姿が、これまで見たことがないくらいに、痛々しくて……


 「誰も智樹を責めたりしないから、だから教えて? どうしてこんなモノに手を出してしまったのか。俺達友達でしょ?」

 そうだ、俺達は例えどんな状況に置かれようと、友達であることに変わりはない。


 だからこそ、俺には……
 俺だけには、全てを打ち明けて欲しい。


 そう願わずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...