296 / 369
第24章 A piece
4
しおりを挟む
でもそれは、俺の思い違いで……
薬物依存の恐怖は、そう簡単に払拭出来るものじゃなかった。
思い通りにならない時、自分の思いが伝わらない時、勿論そればかりじゃないけど、つい薬に縋りたくなる瞬間が何度もあった。その度に俺は、視界に入る物全てを佐藤や和人に投げつけ、どうにもならない苛立ちをぶつけた挙句、手足をばたつかせ泣き喚いた。
そんな発狂寸前の俺を、二人は全身で受け止め、俺が再び落ち着きを取り戻すまで見守ってくれた。
もし二人がいなかったら……、そう考えるだけで怖かった。
佐藤に抱かれていたのも、佐藤という男を繋ぎ止めるため。
和人の存在は勿論だけど、佐藤の加護がなければ、俺は生きていられないって分かっていたから。
それがあの光を持った男を苦しめていたなんて、思いもしないで……
そんなある日、二人が揃って家を空けることになり、広い家に残されたのは、あの男と俺、そして犬が1匹だけ。
正直、戸惑った。
二人きりになることが怖かったわけじゃない、どうやってその時間を過ごしたらいいのか分からなかった。
でもそう思っていたのは俺だけじゃなかったみたいで……
男は所在なさげに部屋を彷徨いてから、畳の上に寝そべる俺の隣に寝転がり、俺の描いている絵を覗き込み、「楽しいか?」と言った。
絵を描くのは嫌いじゃない。多分……だけど、昔はもっと上手く描けていたのかも知れない。
でも今の俺は、自分の気持ちを落ち着かせるため、そして光の正体を確かめるためだけに、赤いクレヨンを手にし、真っ白な画用紙を赤く染めている。
だから、楽しいかと聞かれても、どう答えていいのか分からず、でもこの男に笑って欲しくて、俺は「うん」と頷いて見せた。そして思い出したように身体を起こすと、和人が画材なんかを仕舞っている棚を開け、そこから使っていないクレヨンの箱を取り出した。
俺は蓋を開け、男に向かって青いクレヨンと、真っ白な画用紙を差し出した。
男はクレヨンを受け取ると、「俺に絵を描けって?」と、一瞬困ったような顔をしたけど、すぐに画用紙に向かって青いクレヨンを走らせ始めた。
薬物依存の恐怖は、そう簡単に払拭出来るものじゃなかった。
思い通りにならない時、自分の思いが伝わらない時、勿論そればかりじゃないけど、つい薬に縋りたくなる瞬間が何度もあった。その度に俺は、視界に入る物全てを佐藤や和人に投げつけ、どうにもならない苛立ちをぶつけた挙句、手足をばたつかせ泣き喚いた。
そんな発狂寸前の俺を、二人は全身で受け止め、俺が再び落ち着きを取り戻すまで見守ってくれた。
もし二人がいなかったら……、そう考えるだけで怖かった。
佐藤に抱かれていたのも、佐藤という男を繋ぎ止めるため。
和人の存在は勿論だけど、佐藤の加護がなければ、俺は生きていられないって分かっていたから。
それがあの光を持った男を苦しめていたなんて、思いもしないで……
そんなある日、二人が揃って家を空けることになり、広い家に残されたのは、あの男と俺、そして犬が1匹だけ。
正直、戸惑った。
二人きりになることが怖かったわけじゃない、どうやってその時間を過ごしたらいいのか分からなかった。
でもそう思っていたのは俺だけじゃなかったみたいで……
男は所在なさげに部屋を彷徨いてから、畳の上に寝そべる俺の隣に寝転がり、俺の描いている絵を覗き込み、「楽しいか?」と言った。
絵を描くのは嫌いじゃない。多分……だけど、昔はもっと上手く描けていたのかも知れない。
でも今の俺は、自分の気持ちを落ち着かせるため、そして光の正体を確かめるためだけに、赤いクレヨンを手にし、真っ白な画用紙を赤く染めている。
だから、楽しいかと聞かれても、どう答えていいのか分からず、でもこの男に笑って欲しくて、俺は「うん」と頷いて見せた。そして思い出したように身体を起こすと、和人が画材なんかを仕舞っている棚を開け、そこから使っていないクレヨンの箱を取り出した。
俺は蓋を開け、男に向かって青いクレヨンと、真っ白な画用紙を差し出した。
男はクレヨンを受け取ると、「俺に絵を描けって?」と、一瞬困ったような顔をしたけど、すぐに画用紙に向かって青いクレヨンを走らせ始めた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる