S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
300 / 369
第24章   A piece

しおりを挟む
 俺はいつしか翔真の隣で眠るようになっていた。
 翔真の隣で、翔真の腕に包まれていると、不思議と良く眠れたし、時々衝動的に起こる薬への欲求も、自然と起こらなくなっていた。
 それから佐藤を求めることも少なくなった。

 満たされていたんだと思う。


 自分でも怖くなるくらい、幸せで、暖かくて……


 でも、幸せな反面、俺は怖かった。


 いつか……いつの日か、この幸せで暖かな時間が消えてしまうんじゃないか、って……
 指の隙間から零れ落ちてしまうんじゃないか、って……


 だから、翔真がどんな仕事をしているのか……
 翔真の過去を、翔真が俺にとってどんな存在だったのか……


 聞くのが怖かったし、あえて知ろうともしなかった。
 そうすれば、俺はずっとこの腕の中で笑っていられる。

 「過去に何があったかなんて関係ない、また一から始めればいい。出会った頃のように」


 そう言った翔真の言葉を信じようと……


 だから俺は決めたんだ、過去へ繋がる扉の鍵は開けずに生きて行こう。
 二重にも三重にも鍵をかけて、二度と開くことはしないと……


 でも記憶の扉を開く鍵は、俺が思っているよりも、うんと近い場所に転がっていたんだ。



 そして、その鍵を開けたのが、まさか翔真だったなんて……



 俺自身思ってもいなかったし、きっと翔真もそうだったと思う。


 凄く……、それまで見せたことのないような、酷く動揺した顔をしていたから……


 暴れるでもなく、かと言って泣き喚くでもなく、ただ静かに零れる涙もそのままに、今にも意識を飛ばそうとした俺を、和人と佐藤が慌てて抱き留めた時も、翔真だけは微動だにせず、ただただ困惑の表情で見ていたから……


 もうここにはいられない。


 一度堰を切って溢れ出てしまった過去の記憶は、もうどうやったって止めることは出来ない。

 「殺して……」

 不意に口をついて出た言葉に、佐藤が俺の頬をピシャリと叩いた。
 それでも俺は朦朧とする意識の中、二人の腕を振り切った。

 「殺せよ……! 頼むから、俺を殺して……」


 こんな穢れた身体を……


 許しがたい罪を冒した俺には、愛される資格なんてない。
 生きている資格なんてない。


 だから……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...