S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
305 / 369
第25章   End of Sorrow

しおりを挟む
 その場にいる誰もが、声を発することさえ躊躇い、静かに涙を流す智樹から視線を逸らした。

 見ていられなかったんだと思う。
 智樹の叫びは、あまりにも痛々しく、それぞれ形は違ったとしても、同じように智樹を愛している俺達にとっては、悲し過ぎる叫びだったから……

 「分かった……」
 「翔……真さん?」

 一瞬、俺の前に立ちはだかる素振りを見せた和人を押し退け、俺は智樹の細い手首を掴んだ。

 「ね、翔真さん、駄目だよ……、止めてよ……」

 智樹の手を引き、二階へと繋がる階段を昇ろうとする俺の前を、和人が両手を広げて阻もうとする。


 その顔は涙に濡れていて……
 なのに広げた両手は力強くて……


 親友を思う和人の気持ちを考えれば、目の前に伸びる階段を昇ることすら躊躇われた。

 でも俺は、渾身の力を込めて伸ばした細い腕を払い、智樹の身体を引き摺るようにして階段を昇った。


 ごめんな、和人……


 背後で啜り泣く和人に、心の中で詫びた。


 間違ってるかもしれない。
 でも俺にはこんな方法しか、こんなやり方でしか、智樹を深い闇の底から救い出すことは出来ねぇんだよ。



 俺は寝室のドアを開け放つと、キンと冷えた空気の部屋意識を朦朧とさせる智樹を引き込み、冷たいシーツの上にその身体を叩き付けるように押し倒し、その上に馬乗りに跨った。

 「なんのつもりだ……」

 怯えているんだろうか……
 カーテンを開け放った窓から僅かに差し込む月明かりに照らされた智樹の目が……大きく揺れた。

 「なんのつもりかって? 決まってんだろ、お前を抱くんだよ。ほら、さっさと脱げよ」
 「は、はあ? お前、何考えて……」

 それでも抵抗を試みようとする智樹は、細い腰を捩り、俺の下から抜け出そうとする。


 そんな力、今の智樹には残ってないのに……


 必死で藻掻く姿からは、俺に対しての恐怖を感じていることが、容易に感じ取ることが出来た。

 「しょ……翔真、こんなこと……」


 ああ、そうだよ。
 俺だってこんなこと、出来る事ならしたくねぇよ。


 逃げ出したくても、それすらも出来ない智樹を相手に、細い手首を圧倒的な力で押さえ付け、無理矢理身体の動きを封じるなんて真似、俺だってしたくない。

 何より、智樹の涙をこれ以上見たくはない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...