348 / 369
第27章 All for you
4
しおりを挟む
楽屋からステージに続く通路に出ると、見知った顔がいくつも並んでいて、皆一様に舞台衣装に身を包んだ俺を拍手と、そして新人ダンサー達の羨望の眼差しが、俺を出迎えてくれた。
正直こんな風にされるのは、照れ臭いのもあるけど、それ以上に俺の復帰にかける期待を感じずにはいられなくて……
「あれれ、智樹固まっちゃってんじゃん」
「う、うるせぇ、衣装が重すぎんだよ」
揶揄う雅也に言い返してはみたものの、実際には足が竦んでしまって、思うように身体が動かない。
前はこんなんじゃなかったのに、今はステージに上がることが、怖くて堪らない。
「智樹、身体の力抜いて? ね?」
「和人、俺……」
「大丈夫、皆智樹の味方だから、安心して?」
分かってる。
今日俺のステージを見に来る客全てが敵じゃない、ってことは分かってる。
でも、やっぱ怖ぇよ……
怖くて怖くて、この場から逃げ出したくなる。
「あのさ、智樹? きっと見てるから」
和人の腕が、俺を衣装ごと包み込む。
そして雅也も……
「そうだよ、きっと伝わるからさ、だから泣かないでよ」
両目に涙をいっぱい溜めて、俯いてしまった俺を覗き込む。
「でもアイツはもう……」
そう、何がこうも俺を不安にさせるのか……
その理由は、俺自身が一番良く分かってる。
アイツが……、俺が誰よりも傍にいて欲しいと願う、アイツがここにはいないからだ。
翔真に傍にいて欲しいのに。
「緊張なんかしてんじゃねぇよ、馬鹿」って抱きしめて、キスして欲しいのに。
なのに翔真はもうここにはいない。
そのことが俺の不安を掻き立てる。
「ねぇ、智樹? 翔真が智樹の傍から離れられると思ってんの?」
「えっ?」
「馬鹿だなぁ、だって翔真だよ? 智樹命のあの翔真が智樹から離れられるわけないじゃん」
「そうだよ、翔真さんだもんね?」
「幽霊になってでも、智樹の傍からは離れないって」
「ひっでぇ言い方。でも……」
そうだよな、翔真はいつだって俺の隣に……
「ありがと……な。俺、行って来るよ」
翔真が惚れ直すくらい、最高のステージにしてやるよ。
だから見ててくれよな、翔真。
俺は一瞬天を仰ぎ、そこに翔真の顔を思い浮かべると、ステージに向かって一歩、また一歩と足を進め始めた。
正直こんな風にされるのは、照れ臭いのもあるけど、それ以上に俺の復帰にかける期待を感じずにはいられなくて……
「あれれ、智樹固まっちゃってんじゃん」
「う、うるせぇ、衣装が重すぎんだよ」
揶揄う雅也に言い返してはみたものの、実際には足が竦んでしまって、思うように身体が動かない。
前はこんなんじゃなかったのに、今はステージに上がることが、怖くて堪らない。
「智樹、身体の力抜いて? ね?」
「和人、俺……」
「大丈夫、皆智樹の味方だから、安心して?」
分かってる。
今日俺のステージを見に来る客全てが敵じゃない、ってことは分かってる。
でも、やっぱ怖ぇよ……
怖くて怖くて、この場から逃げ出したくなる。
「あのさ、智樹? きっと見てるから」
和人の腕が、俺を衣装ごと包み込む。
そして雅也も……
「そうだよ、きっと伝わるからさ、だから泣かないでよ」
両目に涙をいっぱい溜めて、俯いてしまった俺を覗き込む。
「でもアイツはもう……」
そう、何がこうも俺を不安にさせるのか……
その理由は、俺自身が一番良く分かってる。
アイツが……、俺が誰よりも傍にいて欲しいと願う、アイツがここにはいないからだ。
翔真に傍にいて欲しいのに。
「緊張なんかしてんじゃねぇよ、馬鹿」って抱きしめて、キスして欲しいのに。
なのに翔真はもうここにはいない。
そのことが俺の不安を掻き立てる。
「ねぇ、智樹? 翔真が智樹の傍から離れられると思ってんの?」
「えっ?」
「馬鹿だなぁ、だって翔真だよ? 智樹命のあの翔真が智樹から離れられるわけないじゃん」
「そうだよ、翔真さんだもんね?」
「幽霊になってでも、智樹の傍からは離れないって」
「ひっでぇ言い方。でも……」
そうだよな、翔真はいつだって俺の隣に……
「ありがと……な。俺、行って来るよ」
翔真が惚れ直すくらい、最高のステージにしてやるよ。
だから見ててくれよな、翔真。
俺は一瞬天を仰ぎ、そこに翔真の顔を思い浮かべると、ステージに向かって一歩、また一歩と足を進め始めた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる