29 / 227
第4章 迷夢…
5
「着いたぜ、ここだ」
不意に言われて顔を上げると、そこにさっきまでの喧騒はなく、代わりに、着物の襟を大きく肌蹴た女達の、噎せ返るような香水の匂いが溢れていた。
「二木君、ここ……は?」
聞かなくたって、凡その見当はついてる。それでも確かめられずにはいられなくて、僕は二木君の肩を掴んだ。
でも二木君は振り向くこともせず、一軒のカフェーを指差すと、僕の手を振り切るようにして、そちらに向かって歩を進めた。
「あ、あのっ……」
「ここ、俺の家。まあ、家と言ってもご覧の通りだけどな?」
言いかけた僕を遮るように言って、二木君はいかにも安っぽいステンドグラスで飾られた扉を開けた。
「おい、そんな所に突っ立ってないで、来いよ」
「で、でも……」
「なんだ、がっかりしたか? こんな所に住んでる奴が学友だって……」
「べ、別にそういうわけでは……」
咄嗟に誤魔化しはしたけれど、実際は図星だった。
僕が通っている学校は、僕も例外ではないが、比較的良家の子息が多いと聞いていたから、二木君がまさかこんな場末の街に暮らしているなんて、想像もしていなかった。
「遠慮するな、早く来いよ」
二木君が僕の腕を引き、僕は引き摺られるようにしてカフェーの中に足を踏み入れた。僅か十坪程の店内に充満した煙草の臭いに、息が詰まりそうになる。
「適当に座れよ。あ、何か飲むだろ? 珈琲でいいか?」
「あ、ああ……、うん……」
二木君が店の奥に消えて行くと、益々身の置き場に困った僕は、辺りを見回してから、入り口近くに空席を見つけて、そこに腰を下ろした。
不意に言われて顔を上げると、そこにさっきまでの喧騒はなく、代わりに、着物の襟を大きく肌蹴た女達の、噎せ返るような香水の匂いが溢れていた。
「二木君、ここ……は?」
聞かなくたって、凡その見当はついてる。それでも確かめられずにはいられなくて、僕は二木君の肩を掴んだ。
でも二木君は振り向くこともせず、一軒のカフェーを指差すと、僕の手を振り切るようにして、そちらに向かって歩を進めた。
「あ、あのっ……」
「ここ、俺の家。まあ、家と言ってもご覧の通りだけどな?」
言いかけた僕を遮るように言って、二木君はいかにも安っぽいステンドグラスで飾られた扉を開けた。
「おい、そんな所に突っ立ってないで、来いよ」
「で、でも……」
「なんだ、がっかりしたか? こんな所に住んでる奴が学友だって……」
「べ、別にそういうわけでは……」
咄嗟に誤魔化しはしたけれど、実際は図星だった。
僕が通っている学校は、僕も例外ではないが、比較的良家の子息が多いと聞いていたから、二木君がまさかこんな場末の街に暮らしているなんて、想像もしていなかった。
「遠慮するな、早く来いよ」
二木君が僕の腕を引き、僕は引き摺られるようにしてカフェーの中に足を踏み入れた。僅か十坪程の店内に充満した煙草の臭いに、息が詰まりそうになる。
「適当に座れよ。あ、何か飲むだろ? 珈琲でいいか?」
「あ、ああ……、うん……」
二木君が店の奥に消えて行くと、益々身の置き場に困った僕は、辺りを見回してから、入り口近くに空席を見つけて、そこに腰を下ろした。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。