44 / 227
第5章 妬心…
8
潤一に手を引かれて智子が庭先に降りるのを、僕は瞬きすらせずに見つめていた。
「…翔真 、聞いているの、翔真」
僕の名を呼ぶ母様の声すら耳に入らないほど、じっと。
「え、あ、は、はい……」
「潤一先生のお父様があなたに質問があるそうよ。 答えて差し上げなさい」
能面のような顔の、唇の端だけを僅かに上がる。その血の色にも似た赤い唇に、僕の背筋が一瞬凍りつく。
何故だろう、これ程までに恐ろしい母様の顔を、僕はこれまで見たことがない。
いや違う、あの時もそうだった。
智子の頬に、一生消えない醜い傷を付けたあの時も、今みたいに恐ろしい顔をしていた。
もしかして母様は、僕の智子に恋心を抱いていることに気付いているのでは?
まさか……、そんな筈はない。
「あ、はい。すいません、ついぼんやりしてしまって。あの、質問というのは」
僕は自分に言い聞かせるようにして、視線を潤一の両親へと向けた。
「何でも、智子さんの兄君は、とても成績が優秀だと倅から聞いたんだが、将来的にはやはりお父君の跡を継いで貿易のお仕事を?」
潤一の父親は長く伸ばした顎鬚を指で弄りながら、元々皺だらけの顔に更に深い皺を刻んだ。
意外だった。
潤一の本心は僕には到底推し量ることは出来ないが、てっきり嫌われているとばかり思っていたから、潤一が両親に僕のことをそんな風に話していたなんて、思ってもいなかった。
「…翔真 、聞いているの、翔真」
僕の名を呼ぶ母様の声すら耳に入らないほど、じっと。
「え、あ、は、はい……」
「潤一先生のお父様があなたに質問があるそうよ。 答えて差し上げなさい」
能面のような顔の、唇の端だけを僅かに上がる。その血の色にも似た赤い唇に、僕の背筋が一瞬凍りつく。
何故だろう、これ程までに恐ろしい母様の顔を、僕はこれまで見たことがない。
いや違う、あの時もそうだった。
智子の頬に、一生消えない醜い傷を付けたあの時も、今みたいに恐ろしい顔をしていた。
もしかして母様は、僕の智子に恋心を抱いていることに気付いているのでは?
まさか……、そんな筈はない。
「あ、はい。すいません、ついぼんやりしてしまって。あの、質問というのは」
僕は自分に言い聞かせるようにして、視線を潤一の両親へと向けた。
「何でも、智子さんの兄君は、とても成績が優秀だと倅から聞いたんだが、将来的にはやはりお父君の跡を継いで貿易のお仕事を?」
潤一の父親は長く伸ばした顎鬚を指で弄りながら、元々皺だらけの顔に更に深い皺を刻んだ。
意外だった。
潤一の本心は僕には到底推し量ることは出来ないが、てっきり嫌われているとばかり思っていたから、潤一が両親に僕のことをそんな風に話していたなんて、思ってもいなかった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。