愛玩人形

誠奈

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第7章   哀傷…

15

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 僕は智子の寝衣の前を重ね合わせると、釦を一つずつ嵌めて行った。
 でもその手を智子の小さな手が止めた。

 「兄さま、智子、兄さまになら……」

 一瞬たりとも止めることなく涙を流しながら、智子が濡れた瞳で僕を真っ直ぐに見つめる。
 その目は真剣その物で、僕は智子のその目から視線を逸らすことすら出来ずに、ゴクリと息を飲んだ。

 「む、無理はしなくてもいいんだよ、智子。僕は……」
 「智子、無理なんてしてないわ。だって兄さま仰ったでしょ? どんな智子も好きだって。だから智子……」


 なんて健気な……


 僕は智子を強く抱きしめると、咽び泣き波打つ背中を優しく摩った。

 「そうだね、僕はどんな智子も大好きだよ?」


 好き……、なんて簡単な言葉じゃ足りない程、僕は智子、君を愛している。
 でもだからこそ…… 


 「智子に無理強いだけはしたくないんだ」


 いつか、僕達の間にそのが訪れたなら……


 「あ、そうだ。智子、お腹は空いてないかい?」

 僕は智子から離れると、机の上に置いたままになっていた照手製の握り飯を指差した。

 「そう言えば……」
 「だろ? じゃあ、僕は外に出ているから、先に着替えを済ませておしまい?」

 僕は智子に背を向けると、まるで逃げるように智子の部屋を出た。


 気付かれるわけにはいかなかった。
 この、僕の下腹部に感じる痛みを……、欲情の証である膨らみを……

 智子には、智子にだけは……
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