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第8章 慕情…
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僕の差し出した座布団に腰を下ろすと、潤一には部屋見回して、くすりと笑った。
「懐かしいな。俺も田舎から出て来てすぐの頃はこんな下宿に暮らしていたんだよ。もっとも、ここよりももっと寂れていたけどね……」
湿気た匂いを懐かしむように吸い込む。
その姿に更に不信感が募る。
「あ、あの……、今日はどうして……」
「言ったろ? 義母上に、君の様子を見てくるよう頼まれたと」
それでも尚僕の信用が得られないと悟ったのか、一つ深い溜息をつくと、潤一は風呂敷包みを僕の前に差し出した。
「これ……は?」
「君の着替えだそうだ。それと……」
潤一は背広の懐に手を入れると、茶封筒を取り出し、風呂敷包みの上に置いた。
「当面の生活費に宛てるようにと」
「助かります。でもどうして貴方が?」
もしかして潤一は僕と智子のことを知らないのか…?
だとしたら、こうして何の疑いもなく母様の遣いを頼まれることにだって頷ける。
「どうして、か……。本音を言えば、君の顔など二度と見たくはなかったよ」
「もしや母様から……?」
「ああ、君と智子さんの間に何があったのかをね……」
知っている。
潤一は何もかも知っているんだ。
僕は全身の血の気が引いていくような感覚に襲われながら、でも潤一の目から視線を逸らすことなく膝の上で拳を握った。
「ぼ、僕は、智子を愛しています。妹としてではなく一人の……」
人として……
「懐かしいな。俺も田舎から出て来てすぐの頃はこんな下宿に暮らしていたんだよ。もっとも、ここよりももっと寂れていたけどね……」
湿気た匂いを懐かしむように吸い込む。
その姿に更に不信感が募る。
「あ、あの……、今日はどうして……」
「言ったろ? 義母上に、君の様子を見てくるよう頼まれたと」
それでも尚僕の信用が得られないと悟ったのか、一つ深い溜息をつくと、潤一は風呂敷包みを僕の前に差し出した。
「これ……は?」
「君の着替えだそうだ。それと……」
潤一は背広の懐に手を入れると、茶封筒を取り出し、風呂敷包みの上に置いた。
「当面の生活費に宛てるようにと」
「助かります。でもどうして貴方が?」
もしかして潤一は僕と智子のことを知らないのか…?
だとしたら、こうして何の疑いもなく母様の遣いを頼まれることにだって頷ける。
「どうして、か……。本音を言えば、君の顔など二度と見たくはなかったよ」
「もしや母様から……?」
「ああ、君と智子さんの間に何があったのかをね……」
知っている。
潤一は何もかも知っているんだ。
僕は全身の血の気が引いていくような感覚に襲われながら、でも潤一の目から視線を逸らすことなく膝の上で拳を握った。
「ぼ、僕は、智子を愛しています。妹としてではなく一人の……」
人として……
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