愛玩人形

第８章 慕情…

７

　僕のきっぱりとした言いように驚いたのか、一瞬潤一が目を丸くした。

　「全く君という人は……、…恐れ入ったよ。俺はね、最初から気付いていたんだよ、君達が互いに想い合っていることをね」
　「では何故智子と婚約なんて……」

　互いに気持ちが無かったとしても、結婚することは可能だ。　
　ただ、例え結婚したとしても、智子の心が自身の物になることはないと、それを分かっていながらどうして……

　「さあ、何故なんだろうな。俺にも分からないよ」

　フッと息を吐き出すと、潤一は目尻りを僅かに下げ、困ったように笑った。

　「それはそうと……、君は智子さんと、その……」

　潤一にしては珍しく、その先の言葉を言い淀む。
　僕はその様子から、潤一が何を言いたいのか察すると、それまで全身に張り詰めていた緊張を解いた。

　「ええ、貴方が想像している通り、僕は智子と情を交わしました。でもそれが何か……？」

　わざわざ僕の口から聞き出さなくとも、母様から事の顛末は聞かされているだろうに…

　「ならば、君は智子さんの身体の秘密を？」

　一瞬僕の脳裏に、恥じらうように小さな身を丸めた智子の姿が浮かんだが、僕はそれを打ち消すかのように頭を緩く振った。

　「その様子だと、君も相当驚いたようだね」

　君も……ということは、潤一は知っていたということなのか？
　智子の身体に、紛うことなき男性の象徴が着いていることを……

　「やはりそうか、俺の聞き違いではなかったんだね」

　潤一は一瞬天を仰ぐと、少し身を乗りだした。