愛玩人形

誠奈

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第9章   惑乱…

11

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 潤一の立てた計画はこうだ。

 婚礼の儀式のために屋敷を出た智子を、ホテルの控え室に入ったところで、僕が攫う……

 口で言ってしまえば至極簡単そうに感じるが、実際はそんなに簡単なことではないだろう。
 なにせ婚礼ともなれば、智子の傍には常に誰かが着いているだろうし……

 それに父様のことだから、初めて外の世界に出る智子に、蟻一匹だって近付けないよう、きっと厳重な警備を配置するだろう。
 そうなれば、僕の忍び込む隙なんて、どこにもありはしない。

 もし仮に計画が上手く行ったとして、身重の智子を連れてどこまで逃げられるか……


 正直、僕には自信がない。


 「不可能ですよ、そんなこと。出来っこない」

 僕は緩く首を横に振ると、情けない声を上げた。

 ああ、確かに難しいかもしれない。だが、君はそれでいいのかい? このままだと、智子さんは俺の物になることになるが……」
 「それは……」

 智子をこの手に……、その気持ちが無いわけじゃない。


 でも……でも、怖いんだ。
 怖くて怖くて堪らないんだ。


 「出来るのでしょうか、僕に……」


 ただひたすらに智子を愛することしか出来ないこの僕に……


 「出来るさ、君ならね。それに、智子さんもきっと君を待っていると思うよ? 君が迎えに来てくれることをね……」


 悔しいけど……、と潤一は最後にそう付け足すと、そっと瞼を閉じた。
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