愛玩人形

誠奈

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第10章   傀儡…

11

 掴まれた手首が、強烈な力で捻り上げられ、僕の手からペーパーナイフが滑り落ちた。

「ぐっ……、あぁっ……」

 きつく引き結んだ唇の端から呻きが漏れる。

「くくく、痛いか? そうだろな……。でもな、翔真? 一人息子に裏切られた父の、この胸の痛みが幾許いくばくか分かるか?」

 般若の面に笑を浮かべ、父様が僕を見下ろす。


 そうだ……、この目だ……
 この蛇のような目に、僕は支配されて来たんだ、ずっと……

 きっと母様も同じ。
 智子と言う、決して父様に逆らうことの出来ない弱みを見せつけられ、どんなに心が痛かったことか……

 だから母様は智子にあれ程辛く……

 でも……僕はもう父様に支配されるだけの、小さな子供じゃない!


 僕は全身の力を振り絞って、空いた手で父様の胸を突くと、一瞬怯んだ隙に腕を振り切った。

 そして僕の足に縋り付く智子の肩を抱くと、

「今のうちに……、さあ……」

 脱力した身体を抱き起こし、開け放ったままの窓に向かった。

 その時、

「危ない!」

 潤一の声に僕は一瞬振り返った。

「う、うわっ……!」

 僕の目に飛び込んで来たのは、ペーパーナイフを振り翳し、今にも僕に突き立てようとする、本物の鬼と化した父様だった。

 僕は智子を突き飛ばすと、ペーパーナイフの切っ先が刺さる寸での所で父様の手を掴んだ。
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