131 / 227
第11章 信愛…
2
しおりを挟む
智子との生活は、僕が想像していた以上に大変で……
二木の手を借りはしたものの、父様に手を引かれて屋敷に来た時から、一度も外の世界を見ることなく育った智子にとっては、全てが物珍しく、また恐怖でもあった。
我儘を言っては僕を困らせることだって、一度や二度じゃない。
その度に僕は智子をきつく叱ったりもした。
それでも、狭く薄暗い部屋で過ごす時間は、それまで自由に愛を語らうことすら許されなかった僕達にとっては、至上の幸せでもあった。
僕達は心の赴くまま、身体が求めるまま、互いを求め合い、抱き合った。
きっとそうしていないと、不安で不安で堪らなかったんだと思う。
住む家も、財産も、そして無償の愛で僕達を守ってくれた母様も……、全てを失くした僕達には、そうすることでしか互いの居場所すら見つけることは出来なかった。
智子がいれば、僕はそれだけで幸せだった。
智子が隣で笑っていてくれれば、僕はそれだけで何もいらなかった。
そうして何ヶ月か過ぎると、智子の腹も益々膨れ上がり、元々小柄な智子は動くことすら億劫に感じるようになった。
「もう直だねぇ」
身重の智子を案じてか、二木の母親は度々下宿を訪れては、智子の面倒を見てくれた。
「赤ちゃん、もうすぐ来るの?」
「ああ、そうだよ?」
「とっても痛いんでしょ? 智子、不安だわ……。おばさま、智子と一緒にいて下さる?」
智子は僕には言えない不安を、二木の母親には何の躊躇もなく打ち明けた。
「なあに、怖がることはないさ。何たって、お母さんは強いんだから」
智子にとっては、二木の母親が、母様の代わりだったのかもしれない。
二木の母親もまた、智子を本当の娘のように可愛がってくれた。
二木の手を借りはしたものの、父様に手を引かれて屋敷に来た時から、一度も外の世界を見ることなく育った智子にとっては、全てが物珍しく、また恐怖でもあった。
我儘を言っては僕を困らせることだって、一度や二度じゃない。
その度に僕は智子をきつく叱ったりもした。
それでも、狭く薄暗い部屋で過ごす時間は、それまで自由に愛を語らうことすら許されなかった僕達にとっては、至上の幸せでもあった。
僕達は心の赴くまま、身体が求めるまま、互いを求め合い、抱き合った。
きっとそうしていないと、不安で不安で堪らなかったんだと思う。
住む家も、財産も、そして無償の愛で僕達を守ってくれた母様も……、全てを失くした僕達には、そうすることでしか互いの居場所すら見つけることは出来なかった。
智子がいれば、僕はそれだけで幸せだった。
智子が隣で笑っていてくれれば、僕はそれだけで何もいらなかった。
そうして何ヶ月か過ぎると、智子の腹も益々膨れ上がり、元々小柄な智子は動くことすら億劫に感じるようになった。
「もう直だねぇ」
身重の智子を案じてか、二木の母親は度々下宿を訪れては、智子の面倒を見てくれた。
「赤ちゃん、もうすぐ来るの?」
「ああ、そうだよ?」
「とっても痛いんでしょ? 智子、不安だわ……。おばさま、智子と一緒にいて下さる?」
智子は僕には言えない不安を、二木の母親には何の躊躇もなく打ち明けた。
「なあに、怖がることはないさ。何たって、お母さんは強いんだから」
智子にとっては、二木の母親が、母様の代わりだったのかもしれない。
二木の母親もまた、智子を本当の娘のように可愛がってくれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる