愛玩人形

誠奈

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第13章   特別編「偏愛…」

36

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「愛していたから……」

 そうだ、僕は妹としてではなく、一人の〝人〟として智子を愛していた。
 だから異形の身体を持つ智子を、心だけでなく、全身全霊で愛することが出来た。

「僕はお母さんを愛していたから、だから……」

 一度だって智子の身体を恐ろしいと思ったことはない。

「お母さんは幸せね、お父さんみたいな人がいて……」
「そんなことは……、智翔だっていつかは……」
「お父さん、私ね、お慕いしてた方がいたのよ?」
「え……?」

 智翔の年を考えれば、好いた相手がいたって不思議ではない。


 けれど、そうであるなら何故……?

 いくら智子の提案であったとしても、潤一を拒むことだって出来た筈なのに……


「その人とは……?」
「私の気持ちはお伝えしたわ。そうしたらね、彼も私に好意を持って下さってたみたいで……」


 なのに何故智翔は潤一を……?


「でもね、私の身体の秘密を明かした途端、その方ったらまるで鬼でも見るかのような顔をして、私の前から逃げて行ってしまったの……」


 僕の知らない所でそんなことが起きていたなんて……、僕は父親失格だな……


「そのすぐ後だったかしら……、私潤一先生を訪ねたの、抱いて欲しい、って……」

 智翔がどんな思いで潤一の元を訪ねたのか……、その時の心情を思うと胸が苦しくなる。
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