視・束ーGaze to chaseー

誠奈

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「ああ、分かってるって。つか、あんたの方こそ約束ちゃんと守れよな? 他の奴らもだけどさ、今日みたいなのは、偶然とは言え勘弁だ」


 今日みたいなのって……何のことだ?
 それに〝他の奴ら〟って?


 俺が知る限り、和人は友達が少ない。

 尤も、俺は和人の全てを知り尽くしているわけじゃないから、俺が知ってる和人の姿が全てではないんだろうけど……

 それでも電話をかける程親密な関係であれば、俺が知らないわけがない。


 だって俺は……

 もしかしたら和人はセフレくらいにしか思っていないかもしんないけど、俺は和人を形だけかもしんないけど、恋人だと思っている。

 勿論、恋人だからって、お互い隠すことなく全てを晒さなきゃいけないってことはないんだろうけど……

 俺にだって、和人に言えない秘密の一つや二つ……どころじゃなくあるわけだから。

「連絡はなるべくこっちからするようにするから」

 じゃあまた……、そう言って和人が携帯をパタンと閉じる。

 俺は咄嗟に瞼をギュッと瞑り、寝返りを打つフリをして、布団を頭まで引き寄せた。

 どうしてだか理由は分からないけど、何故かそうしなきゃいけないような、そんな気がした。

 俺がまだ寝ていると思ったんだろうか、和人が物音を立てないように、静かに部屋を出て行き、パタン……とドアの閉まる音がして、続けて水の流れる音が聞こえて来た。

 どうやら和人が向かった先は風呂場のようだ。


 そっか、昨夜あのまま寝てしまったから、だからか……


 俺はゆっくり布団の中から抜け出すと、脱ぎ散らかしたままになっていたセーターだけを身に着け、鞄の中から自分のスマホを取り出した。

 バイト先の店長からの伝言を、雅也はに伝えていなかったことを思い出した。

 ただ、時間的なことを考えると、流石に電話をかけるのは躊躇われて、結局店長からの伝言は、メールのメッセージで伝えることにした。


 勿論、「遅くなってごめん」と一言添えて……


「これでよしと……」

 メールを送信し、スマホを再び鞄の中に仕舞った。

 キッチンからは、朝飯……の準備だろうか、米の炊ける匂いが漂って来る。

 不精に見えて、和人は意外と家庭的なところもあったりして、俺は米の炊ける匂いに刺激されたのか、キュルッと鳴り始めた腹を摩った。

 潤一に振られたおかげで、昨日の夜からろくに食ってもないから、流石に腹も減る……よな。
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