H･I･M･E ーactressー

第４章 日常１：僕

５

　そっちの世界で一躍人気者になった僕の元へは、ビックリするくらい沢山の仕事の依頼が舞い込んで来た。
　そっち系のＡＶは勿論のこと、そっち系のグラビア雑誌の依頼まで、ありとあらゆる仕事がね。

　でも実際、僕は本当のアイドルじゃない。
　僕には本業（……と言ってもバイトだけど）だってあるし、それに「ＨＩＭＥ」を長く続けるつもりもなかった。
　だって、ＡＶに出ること自体、僕にとってはバイトの一つでしかなかったから。


　やっぱさ、言えないじゃん？
　親とかさ、友達とかにはさ、いくら人気があったっ「ＡＶ男優やってま～す♪」なんてさ、胸張れないじゃん？
　僕の場合はある意味女優・・でもあるわけだから、余計にね。

　考えた僕は、ＡＶ以外の仕事は全部断って、ＡＶの仕事だけを受けることにした。
　ついでに、撮影は週に一回だけ、とも。

　僕もこの仕事をするようになってから知った事なんだけど、ＡＶの仕事ってさ、思ってた以上に大変で……
　一見、セックスして、「アンアン」言ってりゃ良いって思われがちだけど、実際はそうでもなかったりする。

　特に僕は受け・・専門でもあったから、普通にセックスするだけでもけっこう腰に来るのに、乱暴にされた時なんかは、もう腰が砕けちゃうんじゃないかってくらい痛いし、中にはゴムすら着けてくれない男優さんなんかもいてさ……
　そういう時に限って中出しされたりするとさ、後処理が大変で、しかもちゃんと綺麗にしてないと、次の日には地獄を味わうことにもなる。

　とにかく大変なんだよ。
　それが分かってるから……なのかな、長井さんも、事務所の社長さんも、ちょっぴり残念そうな顔はしてたけど、それでも良いって言ってくれた。
　アルバイトなんだから、当然と言えば当然なんだけどね？

　僕は週に二日貰えるレンタルビデオ店の休みを、「ＨＩＭＥ｣のために使うことにした。
　まあ、休みなんてあったところで、特にすることもないし、どうせ暇ならって感じなんだけどね。