H・I・M・E ーactressー

誠奈

文字の大きさ
上 下
162 / 688
第13章  scene3:待合室

しおりを挟む
 僕はティッシュで包ん指を後ろに突っ込んだまま、椅子ごとスタジオの片隅に移動すると、誰も周りにいないことを確認してから、指を更に奥へと押し込んだ。

 「ん……、んんっ……」

 直後ってこともあってか、入口はしっかり柔らかくなってるし、痛いとかは全然ないけど、やっぱり多少の違和感は感じるわけで……
 ってことは、なんとなーく……だけど、感じちゃったりもするわけで……
 僕は中に残ったモノ・・を掻き出すように、中に挿れた指を動かした。

 「あの……これ……」

 背中からかけられる声すら、耳に入らないくらいに無心でね。

 「リンゴジュース……、買ってきたんだけ……ど……、置いといた方が良い?」


 はいはい、リンゴジュースね……


 「今ちょっと手が離せない(指が抜けない)から、そこに……って、え?」


 リンゴジュースって、まさか……?


 僕は肩越しに声の主を振り返ると、中に挿れた指をティッシュごとゆっくり引き抜いた。


 だってまさか振り返った先に、リンゴジュースのペットボトルを握った桜木くんが立ってるなんて、思ってなかったんだもん!

 え、え、ってことはさ、見られちゃった……ってこと?
 嘘……でしょ?

 で、でもちょっと待って?


 「えっと……、いつからそこ……に?」


 そうだよ、さっき確認した時は誰もいなかったし、ついさっき来たばっかかもしれないもんね?
 うん、きっとそうだよ……って思いたかったんだけどなぁ……

 
 現実は、僕が思うほど甘くはないらしい。

 「いつからって、そうだな……、HIMEちゃんが指突っ込んだあたりからかな」


 マ、マジ……ですか……

 ってことはさ、こんなガニ股で、しかも後ろに指突っ込んで、声こそ出てない(つもり……)けど、一人感じちゃってる姿を、桜木くんに見られちゃった……ってこと?


 「や、やだぁ……」

 僕は両手で顔を覆うと、その場にペタンと尻もちをついた。


 だってこんな、セックスしてるよりも恥ずかしい姿を桜木くんに見られちゃったなんて、僕……
 穴があった挿れたい……じゃなくて、入ってしまいたいよ……
しおりを挟む

処理中です...