H・I・M・E ーactressー

誠奈

文字の大きさ
上 下
543 / 688
第29章  日常14:はじめの一歩

16

しおりを挟む
  チャポンと湯面を揺らして翔真くんが湯船に浸かる。

  大人二人が入ったら窮屈に感じるバスタブの中で向き合って座ると、僕達の距離が近くなって……

  視線なんて全然合わせなくても、自然と唇が重なった。

  どちらともなく舌を絡め合い、混ざり合った唾液がポチャンと音を立てたタイミングで唇を離す。

  「これ以上は止めらんなくなるから」って。

  ちょっぴり寂しいけど、僕もその意見には賛成。

  だってまだ父ちゃんだって、それから母ちゃんだってお風呂に入るのに、汚すわけにはいかないし、それに僕……

  「そろそろ上がって良い?」

  これ以上浸かってたら、確実に逆上せてしまう。

  「そうだね、その方が良さそうだね。智樹の口の中、超熱くなってるし」
  「ふふ、翔真くんだって……」
  「よし、じゃあ一緒に上がろうか」
  「うん♪」

  って頷いたものの、ちょっと待って?


  一緒に上がったら、僕のチクチクのお股見られちゃう……よね?

  それだけは絶対ダメ!


  「しょ、翔真くんはもうちょっと入ってなよ。僕、先上がるか……、えっ……?」

  さり気なくお股を隠しながら立ち上がった僕の手が引かれ、僕は再び湯船の中に引き込まれてしまう。

  それも翔真くんの腕の中、背中からギューッと抱きしめられて……

  「あ、あの、翔真……くん?」

  振り向こうとした僕の肩口に、ほんのり父ちゃんの匂いがする翔真くんの髪の先が触れた。

  ってゆーか、翔真くん……笑ってる?

  「すげぇ可愛い」


  へ?


  「あのさぁ、智樹は俺が気付いてないと思ってるかもしんないけどさ、俺しっかり見ちゃった……つか、見えてたし」


  え…?


  「風呂入る前、俺が見てる前で勢い良く服脱いだの、誰だっけ?」

  あ……
  そう言えば僕、汗でベチョベチョなのが嫌で、お股のことなんてすっかり忘れてポンポンって……

  「だからさ、無理に隠さなくて良いから……つか、そうやって隠される方が、実はすげぇ気になったりすっからさ……」

  そう……なの?
  そんなもんなの?

  僕全然知らなかったよ……
しおりを挟む

処理中です...