ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第３章 ００３

２

　後ろから羽交い締めにされ、おまけに強く口を塞がれた岸本は、ハンカチから香るキツい匂いに、視界が霞んで行くのを感じながら、意識を朦朧とさせた。

　当然、抵抗することなど出来ず、立っていることすら出来なくなった岸本は、一瞬グラリと身体を揺らすと、そのまま翔真の腕の中に倒れ込んだ。

　慌てたのは翔真だ。
　そうなることは予想はしていたし、そうなることを想定の内だった……が、まさかドラマで良く見かけるような光景が、まさか自分の目の前で起きていることが、不思議でならなかった。

　ズッシリと、翔真の身体に全体重を預けて来る岸本の目の前で手をヒラヒラとさせてみるが、岸本はピクリとも反応しない。

「すげぇ……」

　翔真は、溜息混じりに呟くが、そんな悠長なことをしている時間はない。

　グッタリとした岸本の腕を肩にかけ、まるで酔っ払いでも介抱するかのように装い、公園の脇に停めた車を目指すが、思ったよりも距離があることに翔真は気付く。

「クッソ……、こんなことならもっと近くに停めりゃ良かった……」

　自分の計画性の無さを呪った。

　そして片腕で岸本の身体を支えながら、ポケットから携帯電話を取り出すと、唯一……いや、厳密に言えば〝二人〟なんだが、その一人……智樹に電話をかけた。

　勿論、助っ人を頼むためだ。