ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第３章 ００３

７

　〝０号室〟と書かれたプレートがかけられた部屋は、見取り図でははっきりとは分からなかったが、丁度スタッフ専用の出入口を抜けた所にあった。

　同じフロアにはフロントもあれば喫茶室、ホテルのオリジナルグッズなどを扱うちょっとしたショップまであり、しかもその付近にはご丁寧に防犯カメラまで設置されている。
　とても人目を避けられる状況にないことは、翔真にも智樹にも容易に判断出来た。

「どうする……？」

　ここに来て急に怖気付いたのか、翔真が弱音を吐く。
　カードキーを持つ手も、心做しか震えているように見える。

　智樹は「チッ」と小さく舌打ちをすると、「貸せよ……」と翔真の手からカードキーを奪い取った。

　内心では、智樹も翔真と同様、今すぐにでもこの場から逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

　そもそも智樹はこの話には乗り気ではなかったし、ある意味翔真の脅しに負けただけで、翔真程金に困っているわけでもなかったのだから、そう思うのも当然のこと。
　最終的には、翔真に全ての罪を押し付けて、自分は知らぬ存ぜぬを通せば良いとまで考えていた。

　ところが……だ、翔真のあまりに頼りない様子を見ているうち、少しづつ智樹の考えが変わった。

　翔真に任せておいては、どれだけ綿密に計画を立てたところで、失敗に終わる。
　そうなれば、翔真の身は勿論のこと、智樹の身の安全だって保証は出来ない。


　計画を成功させるためには、俺がしっかりしないと……


　智樹はいつしかそう思うようになっていた。