ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第３章 ００３

１１

「落ち着けって！」

　智樹が振り回すホウキを一瞬の隙をついて掴んだ翔真は、智樹の手から強引にホウキを取り上げ、ソファの向こう側へと放り投げた。

　身を守る術を失くした智樹は、両手に拳をつくり胸の前で構えて見せるが、その手はブルブルと震えていて……

「あのなぁ……」

　呆れたと言わんばりに溜息を落とした翔真は、被っていたキャップを外すと、手の中でクシャッと丸めた。

「俺が人殺すような人間に見えんのかよ……」
「そ、それは……見えねぇけど、そんなの分かんねぇだろ……」


　そもそもこの計画に俺を誘ったのは、翔真自身が犯した罪を俺に擦り付けるためだったのか？
　ってことは、つまり自作自演……ってことなのか？


　智樹は心の中で思ったが、喉まで出かかった言葉を寸でのところで飲み込んだ。
　もし智樹の考えが当たっていた場合、図星を指された翔真が激高するかもしれないと考えてのことだった。

　ただ、冷静になろうとすればする程、翔真に対する疑念は深まるばかりで……

「お、俺も殺すのか？」
「はあ？　お前さっきから何言ってんの？」
「だ、だから……っ、お前が殺したんだろ？　それで、俺のことも……」
「あのさあ、俺は誰も殺してないから……」
「じゃあ誰が……？」
「そんなのこっちが知りたいよ……」

　翔真はもう一度溜息をつくと、その場に胡座をかいた。