ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第５章 ００６

６

「ねえ、俺、思ったんだけど……」

　両腕を組み、神妙な顔で身体ごと智樹に顔を寄せた翔真を、「な、何だよ……」智樹が眉間に皺を寄せ睨みつける。

　翔真の言う〝思いつき〟は、大抵の場合ろくでもないことを、長い付き合いの智樹はよく知っている。
　だから今度もきっと、と思ったら自然と顔が険しくなってしまった……らしい。

「ドアも開いたことだしさ、岸本さん……だっけ……も、無事誘拐出来たし……、俺らの仕事もう終わりで良くない？」
「それは……、まあそうだけど……。つか、そんなこと今更言われなくても分かってるし……」

　そう、智樹は翔真に言われるよりも前に、同じことを考えていた。

　タイミングさえ合えば、行動を起こすことだって考えなかったわけじゃない。ただ、それをしなかったのは、本木の存在があったからだ。
　勿論、相原の存在も気にはなっていたが、それ以上に厄介に思えたのが本木だった。

「なあ、あの本木って奴が次アッチ行ったら……」
「アッチって？」
「だーから、アッチはアッチだろうが！」

　全く智樹の意図を汲み取ろうとしない翔真に、内心怒鳴りつけたい程のもどかしさを感じつつも、智樹はガックリと肩を落としてバスルームの方を親指だけでクイッと差した。