ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第５章 ００６

７

　智樹の意図を漸く理解したのか、翔真がポンと手を叩いて大きく頷く……が、どこか不安を感じた智樹は、小さく息を吐き出すと、翔真をその場に残し、床に散らばった掃除道具を一つ一つ拾い集め、リネン用のワゴンに無造作に突っ込んだ。

　相原は勿論だが、謎の男本木に怪しまれないよう部屋から出るには、清掃員に徹する必要があると智樹は判断したのだ。

　智樹は掃除道具を積んだワゴンを入口ドア付近まで押し進めた。
　後はタイミングを見計らって翔真に合図を送るだけ……そう思った智樹は、ワゴンのハンドルを握ったまま、その時を待った。

　そして、

「相原社長、ちょっと宜しいでしょうか」

　本木が相原を部屋の奥、寝室部分になっている場所に呼びつけたと同時に、智樹の動きをジッと見ていた翔真に、顔をクイッと上げて合図を送った。
　すると、智樹の合図をしっかり受け取った翔真は静かに腰を上げ、尻のポケットに捻じ込んであったキャップを目深に被った。

　それを見て智樹も同じようにキャップを被り、ゆっくりとワゴンを前に押し進めた……が、一瞬、ワゴンのタイヤがキッと軋んだその時、

「まだ掃除が済んでいないようですが」

　背中から声をかけられ、二人の肩が同時にビクンと跳ね上がった。