上 下
117 / 143
第8章  009

しおりを挟む
 翔真と智樹、二人が持つ二台の携帯電話には、弘行が持っていた携帯電話から送られた、全く同じ文章が表示されていて……

 顔を見合わせるでもなく、ゴクリと息を飲んだ二人の脳裏に浮かんだのは、「終わった」の四文字だった。

 二人と弘行との関係が知れてしまったのだから、二人がそう思うのも無理はない。

 本木は再び弘行の携帯電話を手に取ると、二人に送ったメール画面を閉じ、携帯電話に残されていた送信履歴を確認した。
 そして、「おかしいな……」と、まるで独り言のように呟くと、携帯電話に表示された履歴画面を二人に向けた。

「これを見てください。この一番上に表示されているのが、私が先程予約送信したメールです」
「は、はあ……」

 翔真は動揺しながらも、一応は頷いて見せるが、智樹は咄嗟にそこから視線を逸らしてしまう。

「ですが、今確認したところ、他のメールは予約送信された物ではないようですね……」
「え、それってどういうこと? だってその時にはもう弘行さんは……」

 智樹が驚くのも無理はない。本木が指で差し示したメールの送信時刻は、弘行が死亡したと思われる後に送られた物で、死んだ人間がメールを送ることなど、当然のことながら不可能だからだ。
しおりを挟む

処理中です...