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第二章 ー月ー
十
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程なくして、照が朝の膳を手に、蔵の錠を開けた。
潤一は照が扉の向こうへ消えるのを、長持ちの隙間に身を潜めて待ち、扉が閉ざされた瞬間、蔵の外へと駆け出した。
蔵から自室まで一目散に駆け戻ると、着ていた服を脱ぎ捨て、継ぎ接ぎだらけの寝巻に着替え、撫で付けた髪は、両手で乱暴に掻き乱した。
照が寝起きの悪い潤一を起こしに来るのは、毎朝の日課になっている。
だから寝た振りさえしておけば、怪しまれることはないだろう、潤一はそう思って頭から布団を被った。
不思議なことに、一睡もしていないというのに、一向に眠気が湧いて来る気配のない目を閉じると、蔵での智樹との会話が呼び起された。
智樹の名は、大田智樹。
大田家の主人の実の息子であり、翔真とは双子の兄弟。
智樹はその異様とも言える姿と、古来よりの言い伝えで、双子を忌み嫌う風習があったため、生まれてすぐに蔵へと幽閉された。
智樹が閉じ込められている蔵は、言わば座敷牢なのだ。
悲しいことに、智樹の存在は、大田家ではとうに死んだものとして扱われていた。
だから、智樹の存在を知る者は少なく、今では大田家の主人と世話係の照、そして双子の兄弟である翔真だけなのだ。
智樹にとって、あの薄暗い蔵だけが世界の全てだった。
潤一は照が扉の向こうへ消えるのを、長持ちの隙間に身を潜めて待ち、扉が閉ざされた瞬間、蔵の外へと駆け出した。
蔵から自室まで一目散に駆け戻ると、着ていた服を脱ぎ捨て、継ぎ接ぎだらけの寝巻に着替え、撫で付けた髪は、両手で乱暴に掻き乱した。
照が寝起きの悪い潤一を起こしに来るのは、毎朝の日課になっている。
だから寝た振りさえしておけば、怪しまれることはないだろう、潤一はそう思って頭から布団を被った。
不思議なことに、一睡もしていないというのに、一向に眠気が湧いて来る気配のない目を閉じると、蔵での智樹との会話が呼び起された。
智樹の名は、大田智樹。
大田家の主人の実の息子であり、翔真とは双子の兄弟。
智樹はその異様とも言える姿と、古来よりの言い伝えで、双子を忌み嫌う風習があったため、生まれてすぐに蔵へと幽閉された。
智樹が閉じ込められている蔵は、言わば座敷牢なのだ。
悲しいことに、智樹の存在は、大田家ではとうに死んだものとして扱われていた。
だから、智樹の存在を知る者は少なく、今では大田家の主人と世話係の照、そして双子の兄弟である翔真だけなのだ。
智樹にとって、あの薄暗い蔵だけが世界の全てだった。
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