君の声が聞きたくて

誠奈

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第26章  番外編☆dolce

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 店の閉店時間が近付くと、自然と落ち着きがなくなる俺。

 最後の客を送り出し、レジ締めをしながら気にするのは、店の入り口と時計ばかり。


 そろそろ来る頃かな……


 時間に正確な人だから、いつも閉店の五分前には必ずと言って良い程、あの人はこの暖簾を潜る。


 そしていつもと同じように、今日もやっぱり、「お疲れ様。今日も冷えるね」そう言って口元まで覆ったマフラーを外すんだ。


 「もう帰れそう?」
 「レジ締めだけしたら今日は上がりだよ」

 電卓とレジから視線を逸らすことなく応えると、その人はせっかく外したマフラーを再び首に巻こうとする。

 「そっか、じゃあ外で待ってるから」

 しかも、また寒空の下に戻って行こうとするから慌てる。

 「いいよ、中で待っててよ」

 俺のためにわざわざ来てくれたのに、この寒空の下で待たせるわけにはいかない。

 「でも、皆まだ仕事中だし、迷惑だろ」

 それでもバイト君達の手前、外へ出て行こうとするんだから、真面目って言うか、何て言うか……


 ま、そういうとこが好きなんだけどさ。


 「俺が良いって言ってるんだから、気にしないで?」


 だって俺、これでも一応店長だし。


 「そう? じゃあ邪魔にならない所で待たせて貰うよ」
 「うん、俺も急いで済ませるから」

 俺が笑顔を向けると、漸く着ていたダウンを脱ぎ、入り口近くのカウンターの一番端に腰を下ろした。

 俺はフッと息を吐き出すと、集計表と照らし合わせながら、レジの中の金を数え始めた。
 元々計算が得意じゃない俺にとっては、一日の中でこのレジ締めが一番の苦痛を感じる時間でもある。


 店長と言う立場上仕方ないことだと分かっていても、苦手なモンはどうしたって苦手なわけで……


 急ぐと言った割には、一円の狂いもなく集計を終えた頃には、時刻は天辺を越えようとしていた。
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