君の声が聞きたくて

第２６章 番外編☆dolce

21

　暫くじっと手を合わせていると、あんなに冷たいと感じていた風が、不意に暖かな物に変わった。
　それは俺だけじゃなく、雅也さんも同じように感じていたようで……

　「和人の奴、智樹のこと待ってたのかもね？」

　俺の隣で、墓石を見上げて雅也さんがポツリ呟く。
　俺はそんなことないと思いながらも、心の片隅ではその言葉を信じたい気持ちもあって、雅也さんと同じように目の前の墓石を見上げた。

　「ねぇ、雅也さん？」
　「ん？」
　「俺さ、和人のこと好きだったよ」
　「うん、知ってる」
　「勿論、翔真さんに感じる《好き》とは、ちょっと種類が違うっていうかさ、上手く言えないんだけど、すげー好きだった」


　多分、その気持ちは今でも、そしてこれからも、何があったとしても変わることはない。


　「アイツさ、すげーひねくれてるし、素直じゃねーし、一度拗らせると面倒くせえしさ、ゲームばっかやってて俺の話なんで聞いてくんねぇし、頑固……なのは俺の方が多分勝ってると思うけど、とにかく一緒にいて全然楽しいと思ったことは無かったけどさ……」


　でも、それでも俺は……


　「和人が好きだった。一緒にはいられなくても、ずっと……」


　お互い、別の道や、別の人を選んだとしても、それでも一緒に生きて行きいたかった……、生きていて欲しかった。


　込み上げて来る感情に、目頭が熱くなる。
　俺は泣き顔を和人に見られたくなくて、キャップのツバで濡れた頬を隠した。

　「和人はさ、不器用な奴だったから、本心は絶対口にはしなかったかもしんないけどさ……」

　雅也さんの腕が俺の肩に回され、そっと引き寄せられる。

　「同じだったんじゃないかな、智樹と」
　「俺と、和人……が？」
　「うん、俺からしたら、二人共似たようなもんだよ」

　肩に回した手で俺の肩をポンポンと叩きながら、雅也さんがクスリと笑った。