敏腕ドクターは孤独な事務員を溺愛で包み込む

華藤りえ

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6.愛するドクターの手で幸せになりましたとさ

6-1

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 父が退院した最初の週末。

 塚森病院がある街から、車で一時間半ばかり異動した先にある県庁所在都市の繁華街を、スーツを着た神野と歩く。

 対する朱理はワンピースだ。

 昼にホテルで食事する予定だから、いつもよりきちんとした。

 普段はしめ縄みたいにしっかりと三つ編みにしている髪は早起きしてトリートメントした上で、ネットの動画をみながらまとめ髪にし、ワンピースは奮発して夏のボーナスで買った、秋の新作であるボルドー色のシンプルな形のマキシ丈で、ちょっと大人っぽくしてみた。

 これなら神野に見劣りせずにすむと考えたものの、やはりスーツをきてきちんと髪もセットした彼は格別に格好よく、まだ少し引け目はある。

 だけど、誰より大事そうに朱理をエスコートしてくれるので、それも会って十分ほどで霧散してしまい、今はすっかりリラックスし、しかも手は指を絡める恋人つなぎだ。

(でも、久々にゆっくりと二人きり!)

 とても嬉しい。

 というのも、父が自分が働く病院に入院してからは、病院内での細々としたお使いは、朱理の役目になっており、普段の倍ぐらい忙しく日々をすごしていたためせわしなく、その上、このところカルテ庫に、よく医師や職員が訪れるようになったため、神野と二人っきりになりづらい。

 もちろん、時間を見つけ神野の家で過ごしていたが、まともなデートはできず、恋人らしく指を搦めて歩くのは久しぶりだ。

 数日前にハロウィンが終わった街は、気が早くもクリスマスをアピールし始めていた。

 イルミネーションなどはまだだが、デパートのディスプレイや、店頭に並べられたアイテムはプレゼントを意識させるものばかり。

 店先を冷やかしながら神野にほほ笑む。

 今日は、彼の買い物に付き合うことになっていた。

 家で父の快気を祝う宴がある日なので手伝わなくていいのかと迷っていたら、意外なところから助っ人が現れた。

 尊叔父さんがお付き合いしている女性を連れてきたのだ。

 どうやら、勤務先の病院付属の保育所で働く保育士だそうで、もう七年目続く恋人らしい。

『兄貴が倒れたのを見て、切っ掛けを悩むより今だと思ったし。俺、三十八歳だし』

 あっけらかんと告げる尊に驚く朱理と姉を置いて、両親はようやくという顔をしていた。

 そんな訳で、母から手伝わなくてもいいと宣言され、いそいそと出てきた次第だ。

 店の開き始めで、まだ人が少ないショッピングビルの中、ジュエリー関連の店がフロアを占める階で、エレベーターから下ろされる。

 その中の一つ、黒を基調とした大理石の上にシルバーでロゴが刻んであるブランドショップに入られて驚く。

 店内はまだ客がおらず、広々とした空間にクリスタルのように磨き上げられたショーケースがいくつもあり、阻むものないライトの光が中にあるジュエリーたちをきらめかせていて、朱理はおもわずうっとりしてしまう。

 きらめく光に気を取られていると、静かに背を押され店に足を踏み入れる。

(時計でも買うのかな)

 そういぶかしんでいると、店員がニコニコしながら現れ、あっという間に店の奥にある個室へ案内された。

 個室にはベルベットを張ったシックなソファとガラステーブルがあり、なんだか特別な雰囲気が漂っている。

 戸惑っている間にコーヒーまで出され慣れない好待遇に緊張していると、神野は逆にふーっとため息をついて力を抜く。

「お前の父が元気になってよかった。……俺も肩の荷が下りた」

 しみじみと神野に言われ、本当にそうだと朱理も思う。
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