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『いえのそとにだされて、よるにパパがかえってくるまでなかにはいれなかった』
『いえのなかがよごれるから、なかにあがるなっていわれた
ずっとげんかんのところにたってた
よなかにこっそりへやにもどったら、ママがやってきて、
くびをしめながらうそつき、やくそくをやぶったって、たくさんおこられた』
二度とあの神社に行くことは無いと、私は決心したはずだった。それなのに翌日にはまた、神社の階段を目の前にしていた。学校は休みだというのに、なんの予定もないのに、わざわざ着替えて身なりまで整えて来てしまった。
人通りは無いが、どこかで見張られている様な気がした。右を見て、左を見たが誰も居ない。だいぶ痛みが良くなった右足で階段に踏み込んで、走る様にして上って行き、また本殿の中であの日記を読んでいた。
ページをめくる度に、何度も悲しい感情に襲われた。この日記を書いた子は今、生きているのだろうか?どこに居るんだろうか?
そういえば、昨日出会ったあの女の子が日記を探してると言っていた。これの事だろうか。
こんな、悲しい事がたくさん書かれたものを、どうして探すんだろう?中を見たいんだろうか?
『きょうは、ママがあんまりおこらなかった
あしたもこのちょうしで、いいこでいよう!』
ダメだ。こんなもの、人に見せてはいけない。
だって、これは私だ。私のようなものだ。私と同じ苦しみを味わった子の、大切な記憶だ。
同じ苦しみを知ってる私が、私こそが持つべきだ。
日記を胸に強く抱き締めて、確固たる心持ちで私は覚悟を決めた。この日記は守り通す。この日記は、私自身だから。
そうと決まれば、これを持って早くこの場を離れなくてはならない。あの女の子がここまで来てしまうかもしれない。日記をしっかりと手に持って、私は本殿を後にした。階段を降りて、家まで帰って、私以外の誰にも見られないように隠してしまおう。
「大丈夫だからね」
自然と日記に向かって話しかけながら、階段を一段一段下りていく。しかし、一段踏む毎に不安になった。
何か、バッグでも持って来ていれば良かった。手ぶらで古い日記だけ持っていたら、これを探しているあの子にすぐ分かってしまう。なんとか考えをめぐらせ、己の服の裾を捲ってジーンズのウエストに差し込んだ。腹に直接冷たい感触が当たる。
そうして服を元に戻せば、見た目には分からなくなった。これでいい。我ながらかなり冴えていないか?少しは考えたものだ。
堂々と階段を下り、早足で自宅に戻った。あの女の子にも、他の誰にも、声を掛けられることは無かった。
静かに玄関を開け、静かに靴を脱いで部屋に入る。母の気配はしなかった。しかし、居間のあの置時計の大きな秒針の音が、やたらと私の部屋まで聞こえてきた。もう壊れてるんじゃないか。母は何故あんな、古くて汚い時計を気に入っているんだろう?
そんなことを考えながら、私は部屋のクローゼットの扉を開けて、服の奥の方に押し込んである衣装ケースに日記を仕舞った。
「また後でね。今から宿題しなきゃいけないから、待っててね」
日記の表紙を撫でると、「彼女」が返事をしてくれたような気がした。私を待っててくれるんだ、この子は。母のように私をいじめない、父のように無関心でもない、私を優しく受け入れてくれているのだ。
今まで感じたことの無い満ち足りた幸福感が全身を満たし、私は自然と笑顔になった。友達が出来た。本物の友達だ。
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