わたしの愛した世界

伏織

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一章

1-9

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そして、中央の人影が自分であることは分かったのだが、


「うわぁ、これは酷い」


まさに、「酷い」その一言に尽きる。私の顔はパンパンに腫れており、はっきり言って不細工過ぎて目も当てられない。瞼や頬は腫れ上がり、所々皮膚が破けて出血している。唇も同様に腫れ、ダランと口を開いて血の混じったヨダレが汚らしく垂れていた。

私の両手は上にあげてある。手の先は誰かの手に掴まれており、それが繋がった肩は黒い頭から生えていた。要は、誰かが私の両手を掴んで運んでるように見えるわけだ。髪の長さや俯瞰から見える体格からして、父親である。私は部屋着をきちんと着直していたが、ボタンが2つほどかけ間違えている。慌てて着せたのだろう。


「彼は、殴りすぎたせいで君が死んだと勘違いをしてるんだ。でも、君は死んでない。脈も呼吸もある。焦ってて分からなかったんだね。
このまま元の世界に戻れば、君はまた意識を取り戻せるよ」

「........なら、」


すぐ戻してくれ、と言いたい自分と、このまま死なせとこう、という自分が居た。どういう訳か、私はこの世界から命を散らすことを躊躇っている。名残惜しい気持ちがあるのだ。
先程、私が「戻りたいかも」と言った。そのとき少年は一瞬だけだが、驚いたように見えた。当然私も驚いた。自分が分からないと思った。
しかし、確かに父は最低な生き物だが、弟は可愛いし、母は少なくとも表面上は優しく、父が居ない時だけは、心からいい母親だと感じることがあった。彼女には罪悪感や贖罪の感情もあるのだろう、必要もない所で「ごめんね」と呟くことも多かった。精一杯謝罪の気持ちを態度や表情で伝えようとしているように見えた。


父だけなのだ。父だけが私の人生を乱しているのだ。今戻れば、生き返れる。まだ遅くない。生き返って、どんな手を使ってでも性的虐待の証拠を確保し、父を排除すればいい。世間から後ろ指刺されようとかまわない。私は何も悪くない。子供を恐怖や痛みで支配し、思い通りに弄ぶ父だけが悪い。私は何も、間違ってない。間違ったのは父なのだ。父さえ居なければ........


「もど、」

「ストップ。よく見て」


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