わたしの愛した世界

伏織

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三章

3-6

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男性はマルトキッと睨みつけるが、彼女は微塵みじんもうろたえる様子もなく、ただ可愛らしく舌を出して笑った。「お前!」マルトを捕まえようとする男性の手をスルリと避け、彼女は私の元に戻ってきた。そして私の腰に抱きついて、「叔父さん、お願い!」と甘えた声を出した。うん、可愛い。


「お金なら払いますよ」

「幾ら出しても無駄だよ」

「でも欲しいです。どうしてもダメですか?」

「それは人に譲れるようなものでも、売れるようなものでもない」


その口ぶりから、単なる意地悪ではなくてナイフ自体を恥じている____........というか、出来に納得していないらしいことが解った。

確かにここにある刃物は美しいが、よく見ればわずかな歪みがある。気に入らないものをわざわざ飾っている理由は、さすがに分からないが。
もしかすると彼はただ不器用なだけで、実際はただ自分に厳しい人なのかもしれない。


「売れるようなものではない、ならタダでください。ありがとうございます」

「ちょっと待て。なんでそうなるんだ」


うーん、さすがに強引すぎたかもしれない。


「ごめんなさい、あまりにも素晴らしかったので、欲しくて仕方なくなりました。
私はミミと申します。旅をしておりまして、身を守るためにいい武器を探しています」

「だから、町にある店に量産品のナイフが安く売られている。それを買えばいいだろ」


壁際に置かれていた木製の椅子を引きずって私達の近くに置くと、私がナイフに手を出さないよう見張るかのように、男性はそれに座った。
腕を組んで私の手元を睨み付けている。

よく見ればいい男だ。歳は30代あたりか。宿屋で会ったマルトの父親は人の良さそうなおじさん、という感じの男性だったが、目の前に居るその弟は狼のような鋭い目を持ち、通った鼻筋はツンと高い。こういう整った顔の人の睨み顔は、凡庸な人のそれよりずっと恐いし迫力はあるが、同時に目を惹かれてしまう。



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