わたしの愛した世界

伏織

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七章

7-8

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地図を見る限り、あの村の西側に位置するこの家は、周りを森に囲まれており、かつ村との間に川を挟んでいる。近くに橋もない。そのため、彼らがここまで来るのは少々苦心するだろう。
そして、同じように彼女が村に向かうことも困難だろう。あの村以外に一番近い町は、山を越えた先である。


「毎日どうやって生きてるんです?食事の材料などどこで手に入れてるんですか?」

「あら、怪しまれてる」


口元に手を当て、エリザはクスクスと笑った。彼女の目尻に皺が寄る。白髪混じりの彼女の頭髪が、明かりに照らされてキラキラと光る。


「私の友達に、定期的に食材を運んでもらっているのよ。ここでは毎日お花を育てたり、本を読んで生きてるわ」

「なるほど」

「家族と生き別れてしまって、そのことで人から同情されるのが煩わしくてね」


「そう、なんですか」なんとも可哀想なことだ。どのような経緯で生き別れたのかはわかりようがないが、彼女の孤独と悲しい気持ちはきっと、胸を引き裂かれんばかりだろう。同情されることか煩わしい、人の気遣いが邪魔に思えてしまう。無意識に自分の境遇と彼女を重ね合わせてしまい、僅かに申し訳なくなった。人の痛みなんて、正確に理解出来るわけが無い。自分の経験を反芻して彼女と同じ気持ちになろうなどと、烏滸がましい。


「気にしないで。もしかするとまだ、どこかで生きてるかもしれないんだから」


顔を曇らせた私とクロスに、エリザは快活な声を掛けた。そしてテーブルに両肘を乗せると、前のめりになってこう言った。「もしあなた達が構わないのなら、私も一緒に連れて行ってほしいわ」

突然の申し出に、私は思わずクロスの方を見た。彼も私の方を見ており、困惑した顔で肩を竦めた。元々彼と二人での旅のつもりだったし、ライラのように近くの町まで、という制限があれば構わないのだが、彼女のそれは未知数だ。家族の状況や何処に居るのかの明確な手掛かりさえあればいいのだろうが。


彼女と旅をすることは、今はとても考えられない。しかし、エリザは信用に足る人物であり、困った時に協力して欲しいという気持ちもある。

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