わたしの愛した世界

伏織

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八章

8-5

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店主の死んでいた部屋を出ると、二人は階段下にある扉の前に居た。「地下室だったよ」そう言って扉の中に入るクロス。

扉からすぐに階段があり、クロス、エリザ、私の順番で降りていった。一段降りるごとに、耳に綿が入り込んだような、微妙な閉塞感が強くなる。クロスの無理やり感情を押し殺したような顔を見て分かった。ライラはこの下にいる。そして、あの男の子のような死に様なのだ。


階段を降り、バチンという音とともに地下室の中が照らされた。天井から吊り下げた電球が煌々と輝いている。鼻をつく鉄の臭い。


地下室は食料や使わない日用品と、商品の在庫らしきものが置かれていた。いくつか積み上げられた木箱や、中に入っている芋が零れそうな袋、そして、ライラの死体。



彼女は木箱に持たれる形で死んでいた。両手は膝の上で揃えられており、両方の親指を見たことのないもので挟まれていた。それは万力に似ており、挟む面には凹凸が刻まれていた。中央のつまみのようなものから、おそらくそれを閉めて親指を徐々に締め付けていくものである、ということが伺えた。


「こんな物がある」


と言ってクロスが指差したのは、古い蓄音機だった。芋の袋の間に申し訳無さそうに挟まれているそれを、エリザが引っ張り出すと、袋の芋が床にこぼれ落ちた。


芋の一つが転がり、ライラのむき出しになった太ももにぶつかった。彼女は上半身寝間着を身に着けていたが、下半身はなにも着て居なかった。履いていたであろうズボンが木箱の上に丁寧に畳んで置いてあり、それが私の怒りを強くさせた。

ひどい陵辱を受けたのだろう、彼女は下腹部からひどく出血をしたようだった。しかしそれだけではなく、彼女の全身には無数の出血痕があった。全身に太い針のようなものが刺さり、まるで人間以外の動物にも見えた。


「拷問したようだね。これ以外はうまいこと急所を外してるんだ」


と、クロスが指差したのは、小ぶりの斧だった。柄の一部は黒く変色しており、長いことそこを握って、この斧を使い込んでいることが解る。

斧の刃はライラの頭部に刺さっていた。脳天に、綺麗に刺さっていた。そこから流れた血が、彼女の顔を真赤に染めていた。


「気が向いたときにでもまた、会いに来てね」


数時間前にライラに言われた言葉が、脳内に蘇る。鼻の奥がつんと痛み、気付いたら私は叫んでいた。
ここに来る前にクロスは言った、何かあっても私のせいではないと。しかし今はそうは思えない。言い切れない。逃げられない。


私のせいだ。







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