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九章
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声を殺して泣いていると、今度は一際小さな足音が部屋に近付いてきた。そして、
「ハルねえちゃん、大丈夫?」
と、弟の達也が部屋の扉をノックする。「ママが朝ごはん用意してるから食べてねって言ってたよ。一緒に食べようよ」と、心配そうな声で言う。達也は私と父との間のことを詳しくはわかっていないが、父が私になにか不穏なことをしている、ということは察しているようだった。
「開けていいよ」
と答える。扉を開けて達也が入ってくる。青いパジャマ姿で、頭の天辺の髪の毛に寝癖がついている。達也は私が寝ているベッドに駆け寄ると、私の頬の上に乗っている氷が落ちない様に、ゆっくりとした動作でベッドに登ってきた。
そして私に背を向ける形で横向きに寝そべると、背中を私の体に擦り寄せる様にして密着させてきた。それを後ろから抱きしめながら、バレないように涙を拭く。
「パパがまたお姉ちゃんのこといじめたんだ」
「うん。でも達也はパパに逆らっちゃだめだよ」
父は今の所、達也のことは息子として可愛がっている。しかし、それはあくまで「今の所」だ。父は間違いなく、自分のことしか愛していない。それ以外のものは、全て自分の思い通りにならなくなると、一気に態度を一転させるのだ。私に対してだって、私が従っている限りは暴力も振るわない。普段は良い父親の皮をかぶって接してくる。
「お姉ちゃんはなんでパパに逆らうの?」
「逆らっているんじゃないんだけどね」
「じゃあ、なんで?」
うつ伏せの体勢になって、達也が私の顔を覗き込む。「痛そう。よしよし」と、小さな手で私の頭を撫でてくれる。
「ハルねえちゃん、大丈夫?」
と、弟の達也が部屋の扉をノックする。「ママが朝ごはん用意してるから食べてねって言ってたよ。一緒に食べようよ」と、心配そうな声で言う。達也は私と父との間のことを詳しくはわかっていないが、父が私になにか不穏なことをしている、ということは察しているようだった。
「開けていいよ」
と答える。扉を開けて達也が入ってくる。青いパジャマ姿で、頭の天辺の髪の毛に寝癖がついている。達也は私が寝ているベッドに駆け寄ると、私の頬の上に乗っている氷が落ちない様に、ゆっくりとした動作でベッドに登ってきた。
そして私に背を向ける形で横向きに寝そべると、背中を私の体に擦り寄せる様にして密着させてきた。それを後ろから抱きしめながら、バレないように涙を拭く。
「パパがまたお姉ちゃんのこといじめたんだ」
「うん。でも達也はパパに逆らっちゃだめだよ」
父は今の所、達也のことは息子として可愛がっている。しかし、それはあくまで「今の所」だ。父は間違いなく、自分のことしか愛していない。それ以外のものは、全て自分の思い通りにならなくなると、一気に態度を一転させるのだ。私に対してだって、私が従っている限りは暴力も振るわない。普段は良い父親の皮をかぶって接してくる。
「お姉ちゃんはなんでパパに逆らうの?」
「逆らっているんじゃないんだけどね」
「じゃあ、なんで?」
うつ伏せの体勢になって、達也が私の顔を覗き込む。「痛そう。よしよし」と、小さな手で私の頭を撫でてくれる。
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