わたしの愛した世界

伏織

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九章

9-5

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どの様に説明すればいいのだろう。あなたの父親は、血のつながった娘であるあなたの姉を手篭めにしているなどと、口が裂けても言えるわけがない。第一、四歳の子供に意味が理解できるはずもない。


「お姉ちゃん、なにか悪いことをしたの?それで怒られてるの?」

「それも違うんだよね。ちょっと、君には説明しにくいことなんだよ」

「んん~。でも、僕は嫌だよ。お姉ちゃんが痛そうなのはかなしいもん」


達也は眉根を寄せて、大粒の涙をこぼしはじめた。その姿に私の胸もギュッと痛くなり、思わず小さなその体を強く抱きしめた。「お姉ちゃんも、凄く悲しい」


いつまで、私は父にいいように捌け口にされるのだろう。弟は、いつまで私を慕ってくれるのだろう。いつかすべてを知ってしまったら、私のことを嫌うだろうか。汚物を見るような目で、憎らしそうに睨み付けるのだろうか。それとも、父と同じ様に私を虐げる様になるのだろうか。


「このままじゃ駄目だね」


これでは、この家の人間は全員悪人になってしまいそうだ。


「今夜はお父さんとちゃんと話し合うよ。もういじめないでって」

「僕もパパにお願いするよ」

「駄目。君は何も知らないフリをしていなさい」

「なんでだめなの?」

「それは…………、君が大人になったときに話すよ。
君はまだ四歳でしょ、だからまだわからないことのほうが沢山でしょ」


「うん」手の甲で涙を拭きながら、弟は大きく頷いた。寝癖の付いた頭を撫でると、細くてサラサラとした髪の毛が私の指先に触れた。クロスの髪の毛を思い出した。彼の髪の毛はもっと柔らかくて、ふわふわとしていた。日の光を浴びて輝く金髪を眺めながら、何度も羨んだものだ。


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