わたしの愛した世界

伏織

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九章

9-14

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*****




夜中の十二時を回った頃に、酒臭い息をした父が帰宅した。私は朝から一度も着替えていない、パジャマ姿で出迎えた。達也と母は寝ている。


「おかえりなさい」

「ああ」


不機嫌そうだ。こういうとき、余計なことは言わないに限る。いつ父のスイッチが入ってしまうのかが、こちらにはわからない。何かで彼の癇に障ってしまえば、また殴られてしまう。昨晩といい、容赦なく顔を殴るということは、それなりに外でストレスを受けて来ているからだ。いつもなら、バレにくい様に体を殴る。

父も、一応は家族のために仕事を頑張ってくれているのだ。私達を養うために、そして私や達也をいい学校に通わせるために。その点に関しては、父に感謝しているし、あの件を除けば、父のことを大事に思っている。

家族として、父を愛している。
しかし、それとこれとは別問題。
どこまで許して、どこまで許さないかの線引きは、「家族だから」という理由で曖昧にしてはならない。父を愛しているからこそ、私は父を許さない。
父には、今から苦しんでもらわないと。



母は夕方には帰宅しており、夜の九時過ぎに達也と一緒に寝室で眠りについた。寝室には両親のベッドと達也の小さなベッドがあり、いつも三人は同じ部屋で寝る。最も、昨日は達也は寝ている間に父によってリビングのベッドに運ばれていたそうだが、まあ、それがなぜかはここでは伏せておこう。
わざわざ書かなくても、懸命な読者諸君には察することができるだろう。


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