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十章
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「クロスさあ」
「なにさ」
「前にエリザさんに“どこかで会ったことがありますか?”って聞いたことがあるよね」
エリザの家を出ると、外は昼間だった。日差しは強いが空気は秋らしく、ひんやりしている。マフラーをしっかりと巻いて、先を歩き出したクロスの後を追う。
「うん。なんとなく覚えがある気がして」
「確信はないのか」
「ないね。あの人なんか“皆のおばあちゃん”って感じの雰囲気あるじゃん。そのせいじゃないかな。なんか懐かしい気がしちゃってさ。だから勘違いだよ」
“皆のおばあちゃん”の雰囲気か……、言い得て妙である。
確かに、エリザの優しい笑顔や、落ち着きのある声、包容力、皆のおばあちゃんって感じだ。きっと誰もが彼女に安心感を覚える。クロスが勘違いをしてしまうのも、無理はないかもしれない。
やがて私達は無言になり、森の中を早足で歩き続けた。
ザワザワと風が鳴り、木々が揺らぐ。あの朝のときとは違い、すべての音がはっきりと聞こえる。今思えば、あの朝はおかしかった。すべてあの“ねじ”が、私を呼ぶために起こした現象だったとすれば合点は行くが、一抹の不安も生まれる。一抹どころではないかもしれない。
あの“ねじ”は、周囲、しかもなかなかの広範囲の自然を操ることができるということになる。しかも触った瞬間に私の意識は飛んだ。掴んで引っ張る?……私は馬鹿か。また同じことが起こったらどうする?今度は夢の中で空でも飛んでみるか?飛んでみたいけども。
「大丈夫だよ」
前を歩くクロスが、急にそう言った。落としていた視線を彼に向ける。木漏れ日の隙間から差し込む陽光が、彼の金髪を一瞬強く照らした。
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