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十章
10-15
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「何やってんの」
蔦を掴んで登ろうとした私に、クロスが呆れた声をかける。振り返ると、彼は腰に手を当ててため息を付きながら、指でこちらに来るようにと合図してきた。
その態度に少し苛つかなかったといえば嘘になるが、文句を行っても仕方がない。私は黙ってクロスのもとに向かった。「はい」差し出されたクロスの右手を握ると、強く握り返してきた。あの山から外界に移動する際に手を握ったときは、指が触れた瞬間にたじろいでいたクロスだったが、もうだいぶ慣れたようだ。
「なんだっけ、地球で妖精の粉を浴びたら飛べる話ってあったよね」
クロスがポツリと言った直後、ふわりと己の身が宙に浮いた。横を見ると、彼は私の手を握っていない方の手を軽く握り、人差し指を軽く伸ばして何やらよくわからない動きで『操縦』している様に見えた。
「あれね。世界的に有名な話だと思うよ」
「口ぶりから察するに、君はあんまり好きではなさそうだね」
「うん」永遠に子供でいるなんて、考えただけで馬鹿らしい。私は弱い子供のままでは居たくない。もっと強くなって、もっといろんなことを学んで、大人になりたい。
束の間の空中浮遊を終え、私達は大岩の上に降り立った。そこには先日と変わらぬ姿で、あの“ねじ”が地面に刺さっている。クロスもそれを視認したようで「ほう。これか」とつぶやいた。
「完全に崩壊した国のそれは見たこと合ったけど、現在進行系で術が進行している状態のものは初めて見た。なるほど、これは強力だ」
「なんだか嬉しそうだね」
「まあね。初めてだよ、こんな魔法。さすが師匠だ、きっとこれは彼の作り出した、この世界に二つとないオリジナルの魔法だよ」
「この世界の至るところにあるけどね」
「そうだけど、そう意味じゃないの」
「わかってるよ」
蔦を掴んで登ろうとした私に、クロスが呆れた声をかける。振り返ると、彼は腰に手を当ててため息を付きながら、指でこちらに来るようにと合図してきた。
その態度に少し苛つかなかったといえば嘘になるが、文句を行っても仕方がない。私は黙ってクロスのもとに向かった。「はい」差し出されたクロスの右手を握ると、強く握り返してきた。あの山から外界に移動する際に手を握ったときは、指が触れた瞬間にたじろいでいたクロスだったが、もうだいぶ慣れたようだ。
「なんだっけ、地球で妖精の粉を浴びたら飛べる話ってあったよね」
クロスがポツリと言った直後、ふわりと己の身が宙に浮いた。横を見ると、彼は私の手を握っていない方の手を軽く握り、人差し指を軽く伸ばして何やらよくわからない動きで『操縦』している様に見えた。
「あれね。世界的に有名な話だと思うよ」
「口ぶりから察するに、君はあんまり好きではなさそうだね」
「うん」永遠に子供でいるなんて、考えただけで馬鹿らしい。私は弱い子供のままでは居たくない。もっと強くなって、もっといろんなことを学んで、大人になりたい。
束の間の空中浮遊を終え、私達は大岩の上に降り立った。そこには先日と変わらぬ姿で、あの“ねじ”が地面に刺さっている。クロスもそれを視認したようで「ほう。これか」とつぶやいた。
「完全に崩壊した国のそれは見たこと合ったけど、現在進行系で術が進行している状態のものは初めて見た。なるほど、これは強力だ」
「なんだか嬉しそうだね」
「まあね。初めてだよ、こんな魔法。さすが師匠だ、きっとこれは彼の作り出した、この世界に二つとないオリジナルの魔法だよ」
「この世界の至るところにあるけどね」
「そうだけど、そう意味じゃないの」
「わかってるよ」
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