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第三限 文学部は就活に弱いというか、そもそも頭が弱い
しおりを挟む「くそー、また負けた!」
五月。
リリ先輩と初の邂逅を果たしてから、恐るべきことにもう一ヶ月が経とうとしている今日この頃。
一ヶ月間、仲睦まじく蜜月の時を過ごした俺達は、あの最低な出会いが嘘だったかのように友好を深めまくってしまっていた。
それが証拠に、今日もサークル部屋で定例会とは名ばかりのお遊戯会を開き、ガイスターというボードゲームに興じている。
ちなみに、ガイスターというのは、簡単に言うならブラフなど、駆け引きの要素があるチェスだ。
そしてどうも、俺はその手のゲームが大の苦手らしい。
「あなた、ほんと弱いわね。考えてることが顔に出過ぎなのよ」
そんなふうに勝ち誇ったドヤ顔で勧告をしてくるのはもち、リリ先輩。
ところで、これはこの一ヶ月間で学んだことだが、彼女は基本クールな顔立ちで、冗談を言う時でもそのお綺麗な真顔を崩しはしないくせに、どうもそれ以外のシーンでは、意外にも表情が豊からしい。
たった今がそのいい例だ。
この、心底百二十点の顔面、鉄壁に見えてその実、可動域広く、結構崩れる。目とかモノマネ芸人かなってくらい見開かれるし、眉もぐいぐい上下するし、口なんてもはや山姥。
ま、それでも美人は美人なんですけどね!
醜い表情晒しても、元がいいから、怖いものなんてないんですけどね!
たぶんこの女、アホ面で鼻毛切ってる時とかでもかわいいんじゃなかろうか。
やー、バケモン。
とはいえ、とにかく。
ほんと、そういう強い顔面持ちのクセに顔面自体は隙を晒しがち、とかいう安易なギャップ、単純に萌えてしまうから止めてほしい。人間の心を持った精密機械かよ。ぼきはそういうヒロインに弱いんじゃ(ま、一番弱いのはぬいぬいが声あててるヒロインなんですけどね)。
そして、そんな惚れっぽい体質の俺に対し、リリ先輩は憐れむような目を向けて嘲ることで、この体質をありえん刺激してくる。
「ポーカーフェイスの練習でもしたら?」
「そ、そんなにひどいですかね?」
「ええ。なにせ、よくそれでここまで生きてこれたわねってレベルだもの。今だって『くっ、このままじゃリリ先輩のあまりのかわいさに俺のマグナムが暴発しちまうぜ』って思ってるのがバレバレよ?」
「いや、さすがにそれは思ってないです」
まあ、かわいいなあとは思っていたけどさ。それと、ああ今日もえっちだなあ、とか。
ってあれ? でも確かにそうした心情を……、なんだろう、西部劇テイストで文学的に言うとそうなるのかもしれない(?)。
――みたいな感じで、あほらしい思考の海に沈みかけた俺の肩を、リリ先輩はばちこんと叩いて正気に戻し、言う。
「もう、ツクルったら照れちゃってー、あなたみないなキモオタがそんなことしたって、別にかわいくもなんともないわよ?」
「そりゃそうでしょうよ!」
「私はかわいいけれどね!(キラーン)」
「そうっすねー」
もはや日常となりつつある、こんなあほらしい会話。
そこに心地よさを覚えるようになったのは、なにかおかしなことだろうか。
大学という焦土に降って湧いたオアシス。アクこそ強いがその水は、とてもおいしくて。
この、エディプスコンプレックス研究会とかいうわけのわからないサークルは、いつの間にやら、孤独を愛したはずの俺の日常の一部となっていた。
……のだけれど。
はて、そんな平穏を、突如として打ち破る、一つの音。
コンコン。
それは、ノックの音だった。
このイカれたサークルの扉を叩くものなど、どこにいるというのか。
しかし、その扉は、確実に鳴動している。
コンコン。
再び鳴り響くノック音。
そして、扉の曇りガラスの向こうに見える、人影。
「今日、猪俣さんは仕事で来ないはずなのに」
「大体あの娘はノックなんてしないでしょう」
「じゃあ誰が?」
「知らないわ。でも、このサークルに用事があるなんて、どうせろくな奴じゃないでしょうね。無視しましょ」
それが創始者のセリフかよ……。まあ、確かにそうだけども。
とにかく、俺がリリ先輩の決断に反抗するなど不可能なので、心苦しいが、無視を決め込むことにした。
だが、
コンコン! コンコン!
「ええと、外の人、諦めそうにないですけど」
「いい加減鬱陶しいわね。迷惑ってものを知らないのかしら」
「あのーー!!! エディプスコンプッレクス研究会に入部したいのですがーーー!! あのーーー!! ねえ、これ、絶対中にいますよね! 明かりついてますし! ねえ!!!」
知らないらしい。
外からはそんな、どこか間延びした女性の、大きな声がした。なんとなくだが、普段あまり大声を出さないオタクが突然大声を出した時のような不自然な調子がその声にはあり、えも言われずとも溢れ出る陰キャみに、やや親近感を覚えてしまう。
「こう言ってますけど……」
「中に誰もいませんよー」
よくもまあそんな見え透いた嘘を……。
「ええ!! であれば、貴方は誰なのでありますか!?」
いやいや、その反応はおかしいだろ……。頭が弱いのかな?
と思っていたら
「我こそはエディプスの亡霊。我がマザコンだなどとほざく現代人の亡霊を誅殺すべく、黄泉の国より蘇った」
リリ先輩までなんかわけのわからんこと言い出した。
や、まあ確かにこの人はいつもちょっと変ではあるのだけども。
すると、いかにもオタク特有の早口ってな感じの返答が。
「いや、その理屈はおかしいです! オイディプスはギリシャ神話の英雄ですので、死後の世界というならハイドゥーかエリュシオンから蘇るべきです! よって、古事記由来の概念である黄泉の国から死に戻りするのは不適切なのです!」
「……なんなのこいつ?」
げっそりとした顔でこちらを睨むリリ先輩。
こっちが聞きたい。
「神話オタクかなんかじゃないですか?」
俺も正直なところ困惑しかないので投げやりな反応を返すと、リリ先輩も、まるでくだらない政治批判ツイートを見たときのような顔で大きくため息をついた。
「もー、めんどくさいわね……。忌々しい。意味不明なことを言っておけば、キチガイだと思って帰るだろうと思ったのだけれど……、なんなのよ、全く」
しかし、こちらの雰囲気なんて知ったこっちゃないのであろう、扉の向こうのやべえ女は、まだ廊下側から大声を上げ続ける。
「あのー! どうして黙り込むのでしょうかーー!! というか、今のはなんだったんですかあーー?? 入部テストか何かだったのでしょうかーーー? だとしたら、自分は合格ですかー!?」
で、そんなことを続ければあのリリ先輩がどうなるかんなて、火を見るより明らかなわけで。
「ああっ!!! うるさい!!!!!」
そう叫ぶなり、彼女はいよいよずかずかと扉の方へ肩をいからせ突進し、ガバっとドアを開くと、目の前にいた人影の首根っこをむんずと掴み、ぐいっと無理矢理中に引きずり込んだ。
「へっ!? うぎゃあっ!!」
ところで、耳よりな話があるのだが。
あの声の主が、とんでもない美少女だった、って言ったら、どうする?
それも、ゴスロリを着て、やや人間離れしたそれ相応のメイクまで施されてて、髪型は漆黒のロングにツインテで、青のエクステが一筋入ってたりなんかして。肌なんて真っ白。
本当に、画面の向こうから飛び出てきたようなコッテコテのゴス美少女。それも、完全に着こなしている。このレベルだともう、プロの域だよってくらいに。
「これまたやばい女が来たわね」
腕組みをして、片手を頬にやりながら、やれやれというようにぼやくリリ先輩。
彼女をしてそう言わせるという時点で、察して欲しい。
当の本人は、
「う、えっふ、えふっ! けほっ、ごほっ!」
と、優雅な格好からはほぼ遠い醜態を晒しながらむせていたが。
リリ先輩が全くの情け容赦なしに首根っこを掴んで滅茶苦茶やった証拠である。おそろしい……。というか、あの細い体のどこにそんな力があるのだろうか。体格で言えば、先輩の方が、完全に負けているというに。
というのも、ゴス女も、リリ先輩程ではないとはいえ(モデル並みに痩せている、どころか、もはや痩せ過ぎている先輩と比べるのは酷かもしれない)細身だが、身長で優っており(女性にしては結構高い)、そしてなにより、おっぱいで優っているのだ。
そう、おっぱいだ。おっぱいがでかい。
別にぼきは、おっぱいが好きだとか、巨乳派だとか、断然パイズリ派だとか、妖怪出すならこっちを忌み嫌んでいるとか、そうした愛好者でも過激派でもないのだけど、つい目がいってしまうくらいに、彼女の胸は大きかった。
多分あれは、先輩のそれとキロ単位で重さが違うことだろう。それくらい、でかい。
「ごはっ!!」
不意に顎を蹴られた。痛い。
「あなた今、とっても失礼なことを考えていたでしょう?」
バレてた!? ほんと、すみませんでした!!!
またもや、顔に出てしまっていたのだろうか……。ただでさえブスな上に隠し事すら出来ないとか、俺の顔は何の為にあるの? 鼻糞とか捨てる為?
「ご、ごめんなさい……」
「ふん」
謝ったが、ぷいっと顔を背けられてしまった。
自分から散々下ネタとか振ってくるくせに、いざこっちからいくと怒るのって理不尽じゃない? とか思わなくもないけれど、まあ、日本っていうのはそういう社会だよね。
でもって、そんなモノローグはどうでもよくて、目前の少女の正体を暴こうか。
リリ先輩は常に、容赦無く核心を突く。ストレートに。
「で、あなた、誰?」
「あ、は、ひゃい! く、黒栄は、文学部史学科一年、新入生の黒栄(くろえ)ルキアであります!」
一年のこの時期で、そのスタイル確立してるのかあ……。ひょええ。史学科なのはさっきの会話的に納得だけど、1年目からゴスロリ……。ぱないの……。
まあ、めっちゃキョドってるし謎の初々しさがあるから、たぶん本当に一年生なんだろうけど。
「じゃあ、新入生のあなたは、ここへなにしに来たのかしら」
「さ、先程も申し上げました通り、貴サークルへ入部したく参上仕った次第……」
なんか口調がおかしいのは、緊張しているからなんだろうか。たぶんそうだよね?
オタク文化に浸ってると、そういうのを「お、煽りカスか?」みたいな穿った目でしか見れなくなるからよくない。
「そう。でも、おかしいわね。別にうちは新入生なんて募集していないし、活動場所も明らかにしていないのだけど?」
事実ではあるのだろうけども、その恥ずべき事実を声高に宣言しちゃうリリ先輩ェ……。
「そ、そうだったのでありますか!? そ、それでゃあ、黒栄、どうすれびゃ……」
そしてそれを聞いた黒栄さんは、これがエロゲだったら失禁してるんじゃないかってくらい絶望的な表情と声音で戦慄いた。
しかし、そのような惨状、弱者に対し、慈愛の心を持ち合わせるような先輩ではない。
「そんなの私は知らないわ。こんなクソ大学に入ってくるようなクソ新入生がどうなろうと、知ったことじゃないの。むしろ、死ねとさえ思ってる」
「そ、そんな……。黒栄は抹殺されてしまうのでしょうか……!」
「どうして私があなたみたいな頭のおかしい女をわざわざやらなきゃいけないわけ? あなた、馬鹿なの?」
「はい、不肖黒栄、生まれてきたのを悔い改めるレベルの出来の悪い喪女です故、人望もなく、この大学に入学できたのさえ奇跡と言っても全く過言ではないのであります。つまり、貴方様のおっしゃられる通り、馬鹿者でございます……」
「なるほど、どうやらそうみたいね」
「はい!」
なんだこの会話……。
リリ先輩は当然やばいが、この黒栄さんも、やべえ。
するとどうだろう。
まずい、この場に常識人が俺しかいない……!!!(エローゲーマーの声豚)(コミュ障陰キャ)(ロリコンキモオタク)(終身名誉童貞)(社会不適合者)(お渡し会で差を付けろ)
「なら、どうしてそんな畜生未満の脳みそしかないあなたが、この場所を突き止められたのかしら?」
そう質問されると、彼女は急に意気揚々と。
「はい、あの超前衛的新歓ビラをふと縦読んでみたところ、えふにぜろよん、即ち、この富士見204教室が浮かび上がってきたのです! そして、ドキドキと、心の臓を熱情に奮起させながら、熱烈峻厳、革新たる気魄でこの扉を叩かせて頂きました!」
リリ先輩は、黒栄さんのそのどことなくオタ&カルトっぽい空回りな熱意に、うんざりと額に手を当てうなだれながら、ぼそっとこんなことをつぶやいた。
「ああ、まさかあんなのに気付く輩が本当にいるなんて……。びっくりだわ。確かに立派な社会不適合者は釣れたみたいだけれど、ベクトルがあまりにも予想外すぎるわね……」
「なんのことです?」
よくわかないが、とりあえずこっそり聞いてみると。
「あなたが五十八年館で熱心に眺めてたビラ、あるでしょう?」
「はい」
あの、手書きで滅茶苦茶なことが書いてあった、勧誘の意思がまるで感じられないゴミみたいなビラのことかな? そう思い、頷く。
「あれ、まあ言うまでもなく私が適当に三秒くらいでつくったやつなのだけど、その頭文字を上の階から順に並べていくと、この教室の場所がわかるようになってるのよ」
「なんでまたそんなこと」
「だって……、ただビラ作るだけじゃおもしろくないじゃない?」
「……。」
リリ先輩、あんた、そういうとこだぞ!!(白目)。
「なによ、その顔。一応ちゃんとした理由もあるのに」
こちらがやつれた顔を晒していると、彼女はなんというかこう、かわいらしく拗ね始め、もじもじしだしたので、たぶん聞いて欲しいんだろうなあと、生存本能的な理由から彼女の意図を察した俺は、尋ねる。
「なんですか?」
「保険よ、保険。私が仮にあなたみたいな馬鹿を自力で引っ捕えることが出来なかった時のために、馬鹿が一人でに奴隷にされにここまでやって来るための手段を残しておいたの。といっても、どうやらその目論見は失敗に終わったみたいだけれど」
よくぞ聞いてくれた! といった感じで、得意気に語るリリ先輩。
相変わらずかわいいんだが、ほんと、ろくでもない。厄災。
まあ、とはいえ、その目論見は、成功したのでは?
「そうですか? この子、めちゃくちゃ騙されやすそうですけど」
「私は基本的に同性が大嫌いなの。それにね、こんないかにもなやばい女、奴隷にして何が楽しいのかしら? 厄介事に巻き込まれるのが目に見えてるわ。こういうのはね、オタサーの姫でもやってるのが一番幸せなのよ」
「ああ、なるほどー」
相変わらず偏見が酷い。先輩のこの穿りまくったものの見方は、一体どこで培われたんだろう。やっぱりこうも顔がいいと、苦労することも多かったのだろうか。
などと勝手な勘ぐりをしていると、急に。耳元で。
「というかね、ツクル。もうあなたがいるのだから、ほかになにもいらないの。大好きよ」
「へあ?」
耳たぶにかかる甘い吐息に、首と肩に感じる柔らかな温もりに、それになにより、脳裏を支配する絶対の言霊に、思考が停止してしまう。
なにを考えているんだこの人は、見知らぬやべえ女の前でいきなりこんなこと。
だが、そんな一般的な思念の渦なんかより強く、ただ愛という快感だけが……。
「あ、あのう、黒栄は、入部出来ないのでしょうか? やはり、黒栄みたいな根暗な喪女は、お断りなのでしょうか……」
トリップしかけた頭は、そんなおずぞずとした不安げな声に覚醒した。
眼前で突然こそこそ話を始めた俺達を、不審そうな目で見つめている黒栄さんは、そのインパクト大な出で立ちとは裏腹に、びくびくと所在なさげに佇んでいる。
そして俺は、ここぞとばかりに甘美な毒牙をはねのけて、再度新入生に目を向けさせるよう先輩を促す。
「り、リリ先輩、さすがにかわいそうじゃないですか? きっと新入生で頼れる人もいなくて不安なんですよ」
「なに、あなた、さっそくこの姫の囲いになろうっていうの?」
むっと腕を組んでこちらを睨むリリ先輩。結構怖い。
「いや、そういうわけではないですけど」
「第一ね、そんな不安に身を苛まれてるような小心者が、こんないかがわしさに溢れたわけのわからない癲狂サークルになんて近寄るわけがないでしょう」
「それはそうですけど……。あんなわけのわからないビラを熱心に読み込んできてくれたんですし、話くらい聞いてあげましょうよ」
お互い、自虐がエグい。
「はあ……、それもそうね。この女、適当に追い払ったくらいじゃ諦めそうにないし」
先輩はやれやれと洋画みたいにポーズをとると、黒栄さんを椅子に座らせ、尋問を再開した。そのばちこりキマった、漆黒のゴスロリを指差して。
「じゃあまず、あなたはどうしてそんな気の狂ったとしか思えないようなイカれた格好をしているのかしら?」
「あ、こ、これですかァ?! えへへ、このゴスロリちゃんはですねえ、労働に労働を重ね、艱難辛苦、一念通天、やっとの思いで纏うに至ったボズ様の新作なんですぅ! ヘへ、今まではですね、お値段がべらぼうでしてとてもとても手が届かず、不出来ながら自作などしていたのですが、入学を機に思い切ってみましたあ、うぇへへ……。ドロシーちゃんっていうんですよぉ? かわいいでしょう? ヒヒッ……」
容姿も髪型もメイクもコーディネートもばっちりなのに、どうしてここまで残念になれるのだろうというくらい、「うわあ……」って感じの返答だった。見た目の静謐さや、神秘的なオーラが台無しだよ……。まあ、根暗っぽい感じは、見た目通りだけど……。
てなわけで、そんな要領を得ず、かつ陰キャみ溢れる回答に対しリリ先輩が溢れ出す苛立ちを隠すことなどするわけもなく、怒涛の詰問が執行される。
「あのねえ、私はそんなどうでもいい与太話が聞きたいんじゃないの。あなたはどうしてその格好で通学してるのかと聞いているの。わかる? あなたそれでも文学部なわけ? 日本語がわからないというのなら、国際交流なんたら学科にでも転科したら?」
けれども、そうした畳み掛けるような態度は、逆効果だったようで。
「ひゃ、ひゃい! も、申し訳ございません! お洋服について聞かれたので舞い上がってしまいました……、ごめんさい。黒栄って、本当に気持ち悪い女ですね。聞かれてもないことをぺちゃくちゃと。だから入学してもうすぐ一ヶ月は経とうというに同志の一人も出来なくて……。やっぱり、黒栄、ダメな子なんだ……。ううっ!」
黒栄さんは萎縮したばかりか、涙目になって謝罪を始めた。
うーん、典型的ないじめられっ子って感じだ。
まるで懺悔でもするかのようなその痛々しい様に、俺は思わず声をかけてしまう。
「ちょっと、リリ先輩。黒栄さん、泣きそうですよ」
しかし。
「黙りなさい! メス豚!」
こちらの言葉など歯牙にもかけずそう言うと、彼女は黒栄さんをキッと睨みつけ、
パアン!
手心のない、ガチなビンタをかました。
え、ええ……。
どうして彼女は初対面の女性に対しここまで非情になれるんだ……。
「私はね、そうやって涙を流すことで周囲の同情を集めようとするプライドの無い女が大嫌いなの。だからソレ、まだ続ける気なら、本当に出て行ってもらうわよ」
「な、泣いてないです! だいたい、黒栄が泣いたところで、誰も同情なんてしてくれませんし……。根暗とか、気持ち悪いとか、泣き虫とか、メンヘラとか、死ねとか、うざい、消えろ、とか、言われるだけです……」
「でしょうね。このメンヘラサブカルクソ歴女。くたばれ」
ええーっ!!! そこまで言う!?
「う、生まれてきてごめんなひゃい……」
なんかもう塩かけられたナメクジみたいになってるよお……。
そして、そんな黒栄さんを励ますような口調で、ナチュラルに暴言を吐くリリ先輩。
「あのねえ、確かにあなたは何のために生まれてきたのかもわからないゴミ虫かもしれないけれど、私はそんな言葉が聞きたいわけではないの。いい加減にしてちょうだい。もう一度だけ聞くわ。あなたはどうしてそんな退廃的な格好をしているの?」
「そ、それは……」
黒栄さんはおずおずと口を開く。
「自分に自信がなくて……」
「はあ?」
リリ先輩は、何言ってんだこのアマ? みたいな目で黒栄さんを睨んだ。
「この服を着ている時だけは、少しだけ強くなれるような気がするんです。だから……」
「ふーん。なるほど。そういうこと。でも、このサークルはコスプレサークルでも、イメクラサークルでもないわよ?」
相変わらずの冗談なんだか本気なんだかよくわからないリリ先輩のたきつけるような発言を真にうけて、黒栄さんはかっと目を見開き、叫ぶ。
「そ、そんなサークル、黒栄は入れまふぇん! こ、これは、コスプレとかじゃなくて、単にお外用の普段着です……! これじゃないと、不安で、家なんて出れないから。メイクも、すっぴんだと怖くて出歩けないからしてるだけですし……。お守りなんです……」
その叫びは、どこか悲痛だった。
ゆえに、なんとなくだけど、彼女の気持ちが理解できる気がした。きっと彼女は、素のままの、ありのままの自分が嫌いなんだ。だから、こんなにもゴシックロリータに閉じこもり、完璧なメイクで武装している。
その気持ちはわかる――いや、本当はただ、わかった気になっているだけなのだろうけど。だって、ベクトルこそ違えど、俺も自分が嫌いだから。だから俺は、ぼっちでいることに決めたから。彼女とは、きっと――真逆だ。
彼女は、たぶん。勇気を出して踏み出したんだ。あちら側へと。
「じゃああなたは、このサークルに何を求めてやってきたのかしら?」
「それは、黒栄にもよくわからないのですが……。で、でも、あのビラを見てなんかピンと来たんです。ここなら黒栄でも受け入れてくるかもしれないって! 一縷の希望と――」
「そ。ところで、あなたって女子高出身?」
リリ先輩は突然、黒栄さんの――あの時に俺が感じていたことと完全に一致している――セリフを遮り、脈絡をぶった切った。
あるいは、彼女の言葉に、その美しい鉄仮面が外れるのを恐れたのかもしれない。
「へ?」
真っ当に困惑する黒栄さん。
有無を言わさず詰め寄るリリ先輩。
「どうなの?」
「そ、そうですが……、なぜそりぇを……?」
その言葉を聞くと、彼女は満足気に頷いた。
「やっぱりね。よし。じゃ、いいわ。あなたの入部を認めてあげる」
「え? え?」
急変する己を取り囲む環境に適応できず、目を白黒させる黒栄さん。
このていたらくではきっと自然界を生き抜くことはできないだろうなと感じさせるくらいには、大げさにキョドっている。
だが、彼女は人間、捕食されることはない。いやーよかったよかった。
……なんてことにはならない。
人間界にも食物連鎖(カースト)があり、食う(虐げる)者と食われれる(虐げられる)者がいる。
「なに、不服なの?」
「あ、え、いえ。喜んで!! 粉骨砕身、精進させていただきまひゅ!」
まるで、カーストの頂点に君臨するギャル系女王様の様に冷たい声音の一言で、黒栄さんはほぼ条件反射が如く肯定の言葉を口にした。
なんか、これだけ見ていると、あまりにもリアルな高校生活を思い出して吐き気がしてきたので、俺は少しでも場を和ませようと、努めて明るい声を抽出し、吐き出した。
「よ、よかったね、黒栄さん! お、俺は三年の倉本創。よろしくね!」
「は、はいっ! こちらこそ、なにとぞよろしくおねがいいたしますぅ!」
なれないことをしたせいで、すごく気味の悪い甲高い声が出て死にたくなったが、対する黒栄さんも調子っぱずれの奇声を上げていたのでよしとしよう。
だが、それを可とする権限は俺にはないらしい。
「あれれ~? ツクル~。なーに勝手に奴隷が喋っているのかしら~?」
天からの声がしたかと思うと、ほっぺたをつねられる。
「いたたたたたた」
「ふぇ、ど、どれい!?」
あまりも降って湧いた非日常ワードにおののく黒栄さん。そら、そうなる。
「そうよ、このツクル先輩はねえ、私の奴隷なの。ねえ、ツクル?」
「え、いやーそんなことは――アッーーーー!」
人権を主張しようとしたら、世にも恐ろしいことをされ、二の句が継げなかった。
「どどど、どうしたんでしゅか!?」
「なんでもないわよねえ、ツクル?」
「は、はい。なんでもないです……。ぼくはリリ先輩の忠実なる奴隷です」
「え、ええ……。こ、これはなにかの特殊なお夜伽なのでしょうか……?」
「違うわ。これはねえ、単に、サークル活動の一環?」
いや、その紹介の仕方はいかがなものか。
「ひっ……。あ、あの、つかぬことをお伺いしても……?」
上がる、ひくひくと揺れる掠れ声。
あっ……。とうとう、黒栄さんも気付いてしまったか。
「なにかしら?」
「こ、このサークルは、一体なにをするサークルなのでしょうか……?」
戦々恐々、彼女はまるで怪談が終わったあと、恐る恐る背後を振り返る時のような神妙さで、その質問を口にした。
さすれば先輩は、今更すぎるその質問に、堂々と。
「そんなもの、決まっているじゃない」
「……?」
「私という女神(イカオステ)に、愛を捧ぐサークルよ」
彼女はそう、胸を張って言い切った。
紆余曲折、波乱万丈、てんやわんやで、なんやかんや四人目の入部者が加入したエディ研。
あれから一週間と四日後の金曜。定例会。
サークル部屋は、大いに賑わっていた。
「へー、新しい子入ったっていうからどんなやべえ奴……じゃなかった、面白い人が入ったのか見に来たけど、すごーい! それ、なんのキャラのコスプレー??」
今日も今日とて目を引くゴスロリ姿の黒栄さんに対し、初見の猪俣さんがまあありきたりな反応をする。ちなみに、お分かりかと思うが彼女は黒栄さんの前ではとりあえず猫をかぶることにしたらしい。
「い、いえ、これは、コスプレとかじゃなくて……」
「残念だったわね、結霞。彼女、あなたと違ってオタクじゃないから、コスプレなんてしないそうよ。その仰々しい黒服も、ただの私服らしいわ」
「へー、そうなんだー。でも、あたしー、べつにオタクとかじゃないですよー?」
「あら、そうなの? ごめんんさいね。私の奴隷と親しげだからてっきりそうなのかと」
「は、もしかして、彼女さんなんですか!?」
確実にその不遜過ぎる発言が原因で、黒栄さんからは見えないようにしこたま俺の足を踏みつけながら、猪俣さんが返答。
「ああ? んなわけねー……、ごほんごほん。やだなあ、そんなわけないじゃんw むしろー、倉本君の彼女は、先輩っしょーw なにせ待受にしてるくらいだしーw」
「ふぇ、やっぱりそうだったんですか!?」
「そう見える? 見えるなら、あなたの目、腐ってるから取り替えてあげるけれど?」
「むぎゅぎゅぎゅぎゅ、は、はやとちりでちた、リリせんぱいごめんなひゃい!」
「ほんとだよ、黒栄さん。俺みたいな陰キャがこの二人に釣り合うわけないじゃん。あんまそういうこと言ってると、この二人に殺されかねないから気を付けようね?」
主に俺が。
「は、はい、以後気をつけましゅっ!」
「体育会系じゃないんだから、そんなにかしこまらなくても……」
「は、はい。ありがとうございます!」
「あははー、この子おもしろいねー」
「あなたほどではないけれどね」
「どう言う意味かなー? センパーイ?」
「はて、言ってもいいのかしら。言われたら困るのはあなたじゃないの?」
「んー?」
「ふふふ、みすぼらしい化けの皮ほど、見ていて楽しいものもないわね」
「ちっ」
「がはっ!」
だから、どうして俺が殴られるんだ……。
「どうしたんですか、倉本せんぱい!? だいじょうぶですか?!」
ああ、黒栄さん。このサークルでそんな無垢な瞳を持っているのは君だけだ……。
君は、そのままでいてね……。
さて、人数も揃ったことだし、余興をってなわけで、今日はこの日のために俺が持参した、ドミニオンというカード(ボード)ゲームで遊ぶことになった。
というわけでこのゲーム、どんなゲームかというと、普通のカードゲームとはちょっと違って、自分のデッキをゲーム中につくるゲームである。
簡単に言うと、定められたプールの中から、自分の手番になったらアクションカード、財宝カード、勝利点カードのうちのどれかを購入していき、自分のデッキを毎ターン毎ターン育て、強くしていく、というわけ。
つまり、デッキ構築ゲーであり、デッキビルディングの腕が問われるのだ。
また、普通のカードゲームと違い、デッキを事前に組んでおく必要はないので、札束で殴り合っているだけ、といったような事態にもならないし、一般的なTCGと比べれば、お財布に優しい。
それに、デッキ同士で戦うわけじゃないから、他のカードゲームと比べて運の要素が殆どないわけで、実力が出やすい。あと、一人が基本セットを持ってくればみんなで遊べる神仕様で、初心者にも優しい。プレイヤー一人ひとりが、デッキを持っている必要がないのである。
そんなような内容を、噛み砕いて説明したところ、リリ先輩はうっとりと。
「いいわね、なんて完璧なゲームなのかしら。まるで、私のようね……」
アッハイ。
「てか、それだと、なにかしらやっばい欠陥があるんじゃない?」
やや本性を現しつつある猪俣さんが、余計なことをのたまった。
であれば向けられるのは、敵意。
「どう言う意味かしら?」
「べっつにーー?ww」
ゲームの説明してるだけなのに、バチバチ始めないでほしい。
「ほへー、よくわかんないけど、おもしろそうですね!」
黒栄ちゃん、君だけが、このサークルの良心だ!
ちなみに、勝利条件はよくあるボードゲームといっしょで、最終的に自分がデッキに組み込めた勝利点が、プレイヤーの中で一番多いこと。
けれど、この勝利点というのは、それ以外になんの意味もないブタカードなので、早い段階で調子に乗ってデッキに組み込み過ぎると、自分の手番で何もすることができなくなり(デッキの回転率が下がり)、負ける。
この辺のバランス感覚や計画性が、勝負のキモだ。
あるいは、デッキを船に例えるとわかりやすいかもしれない。
そうだな、プレイヤーは、魔法使いとなり、太平洋上のとある島を小さな船で目指していると仮定しよう。
プレイヤーは毎ターン、自分の船を魔法で整備させること(アクションカードの使用)、その船を魔法でより大きくすること(アクションカードの購入)、その魔法の出力を鍛えること(財宝カードの購入)、その魔力で宝石を生み出すこと(勝利点カードの購入)の四つが出来る。最終目標はもちろん、出来るだけ多くの宝石を島まで運ぶことだが、だからといって毎ターン宝石を生み出しているだけでは、ゴールにたどり着く前に船は沈み、何もできなくなってしまうし、修行をしていないちんけな魔力では大した量を生み出せないだろう。だからプレイヤーは、適度に船を整備、拡張し、より強力な魔法を使えるよう己の魔法を研鑽させつつ、そろそろ目的地が近づいてきたなと感じたら、大きくなった船に蓄えてきた魔力を全投資して、宝石を生み出していく、そんな感じだ。
どうだろう。面白そうでしょ?
「なるほどですー」
わかってんだがわかってないんだかはっきりしない声で、黒栄さんが相槌をうつ。ほんと、見た目ゴスゴスな割に言動がなよなよしているので、調子が狂う。
「よくわかんないわーw」
そして、まだ猫被り気味で、はっきり物申すのは勿論、猪俣さん。
「ま、バカが負けるってことだけはわかったわ」
リリ先輩は、なんというか、うん。その通りなんだけども。
そういうのって普通、頭のいい人が勝つって言いません?
てなわけで、取り敢えずルール把握のために一回テストプレイをしてからの、本番。
持ち主である俺も、実は初プレイだったのでわくわくで臨む。
前からずっとやりたかったのだが、やってくれるような友達がいな(ry。
おおん(泣)。
では、早速二回戦、開幕。最初の手番は、ジャンケンで勝った、リリ先輩から。
「じゃ、私は『銅貨』(財宝カード)三つで『村』(アクションカード)を買って終わりね」
立ち回りに関してはとくになんも説明をしていないのに、このゲームの肝を掴んだらしいリリ先輩は、最も基本となる立ち回り(デッキの潤滑油となるアクションカードの購入)をして初手を終えた。
さすがである。
こんなクソ大学に置いておくにはもったいないくらい、頭がいい。
次は、猪俣さん。
「おー、手札全部銅貨だー。ってことはこれ、コストが5のカード買えるのよね!」
「そうなるね……(汗)」
この女、8・3%の確率を引き当てやがった……。
というのも、このゲーム、最初はみんな同じデッキ内容からスタートするのだけど、その内訳が、『銅貨』(最弱の財宝カード)七枚、『屋敷』(最弱の勝利点カード)三枚の十枚で、最初の手番は、そっからシャッフルした後の五枚を手札として使用する。
だから、九十パーの確率で、手札には三枚以上の『銅貨』が手に入るわけで。
よって、だいたいのプレイヤーは、三枚の『銅貨』で買うことの出来る一番無難なカード、『村』を買って一ターン目を終えるのだが……。
「じゃ、あたし―、この、『魔女』(アクションカード)っての買うー!」
こいつ……!
俺にだけ見えるよう、悪魔のような顔でニヤリと笑ったところを見るに、確信犯だ。
何を隠そう、この『魔女』というカード、文字通り魔女なのだ。
なにせ、このゲーム、基本的にはお互いに対戦しているっていうアトモスフィアはなく、ただ黙々と自分のデッキを高みへと導いていって最終的に一番儲けてた人の勝ちっていう、ちょっと違うけど、例えるなら、人生ゲームとか、モノポリーみたいなゲームであるというに、この『魔女』というカードは、それを根本から覆すお邪魔カードなんだ!!!
お邪魔カード、これがボードゲームやパーティーゲームにおいてどのような結末をもたらすか、きっとこれまでの人生で一度くらい友人と桃鉄やマリパをやったことがあるであろう同年代の諸氏には、お分かりのことと思う(俺は友達がいないので~以下略)。
だってCPUにやられてすらあの憤りなのだから(パーティーゲーを一人でやっていた悲しい過去の記憶)、リアルの熱を持った人間がそんなことをやりあえば、泥沼だろう。
その先には、闘争しかない。
このあとに起こる惨劇を予期した俺は、思わず頭を抱えた。
だが――。
「じゃあ黒栄の番ですねー! ってやったー! 黒栄も五枚『銅貨』ですー! じゃ、じゃあ黒栄はこの、『議事堂』(アクションカード)を、か、買ってみます!」
な、なにィィィ!? 『議事堂』だとーーーーっ!? そんな馬鹿なっっっ!!!
俺は驚きで思わずガバっと起き上がる。
なぜ、カードを購入しただけで、俺がここまで驚くか、それにはきちんと理由がある。
まあ、猪俣さんだけでなく、黒栄ちゃんまで低確率の五枚銅貨を引き当てたのに驚いた、というのも勿論あるが、それくらいでここまで驚きはしない。それくらいよくあることだろう(たぶん)(算数が苦手なので確率論のわからないクソ雑魚文学部)。
であれば、なぜか。
その理由は、彼女が購入したアクションカード『議事堂』、その効果にある。
では、その、効果とは!?
ばばん!
なんとぉ! 『議事堂』とは、強力な効果を持つ代わりに、自分だけでなく、相手にまで利益を与えてしまう、言わばデメリット持ちカードォ!
具体的に言うと、同コスト帯のカードが基本的には一枚で二ドローであるのに対し、このカードは四枚のドローを可能にするのだ。実際スゴイ。
ところが、そのデメリットとして、このカードを自分が使うと、対戦相手にも一枚ドローさせてしまう。まさに、敵に塩を送ってしまうのだ。おお、ゴウランガ!
つまり、この『議事堂』、敵に利益を与えてしまうカード。コワイ!
一般論として、常人は、こういうゲームをする時、何か特別なコンボでもない限り、いくら効果が強いといっても、敵に無条件で恩恵の生じるカードというのは使いたがらないものだ。
そうだ、そんな慈善団体染みたボランティア、誰がするというのかっ?!
ふざけるな!!!!!!!
そんなもの、言語道断。見下げた同情など、いらぬ。隣人愛など糞食らえ。托鉢になんぞ誰が飯をくれてやるか! 一生動物性タンパク質取らずに往生してろ、このハゲ!!!
他人なんてどうでもいい!!!
俺達は、自分が気持ちよくなりたくてゲームをしているのだあっっっ!!!
全ては自分の、快の為に!!!! 森羅万象全て、己の、快楽の為にっっっ!!!!!
ゲームでくらい、己のエゴを通させろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
Yeeeeeeeeeeeeerrttttttttt!!!!
……とまあ、ここまで行かずとも、ゲーマーってのは基本、協力プレイでもない場合、ゲームをする上で自分の快を優先し、いかに相手を不快にさせるかということに終始しがち。シャカパチとかシャゲダンとか死体蹴りとか煽りジェスチャーとかエモートとかね(わあ……)。
それでも、まあ、この理論に納得できぬというのなら、数十秒前の猪俣さんのターンを思い返してみて欲しい。
あの女、早速一ターン目からお邪魔カードなんつー妨害札を握りに行ったんやぞ。
ある意味、欲望に忠実過ぎるところが一周回って好感持てるけども。
あるべき人間の姿って感じだ。サツバツ!
そして、だというのにですよ。
黒栄ちゃんはそんな悪魔の誘惑に耳を貸さず、敵にも利益を送ってしまう恵のカード、『議事堂』を選んだのだ! なんともまあ、綺麗な心の持ち主なのだろうか! 天使かな?
正に、清廉潔白、上杉謙信って感じだ(ゴスロリなのが草だけど)。
で、その線で行くと、逆に悪辣で腹黒な猪俣さんは、松永久秀あたりだろうか。
そんでリリ先輩は、堅実で地味だけど終盤巻き返してきそうなラスボス感が完全に家康。
一ターン目からここまで性格が出るとは思わなかったので、なんかもう楽しい。
戦国武将に喩えられるのとか、特に。
……え、拙者でござるか? やだなあ、そんなのあの御仁に決まっているでござろう?
言わせないで欲しいでござる、恥ずかしい。そんなの勿論、みんな大好き第六天魔王、織田(久遠)信長殿に決まっているでござる。
あんなにかわいい戦国武将がかつて日本に存在したでござろうか? ノッブの女体化というのはこれまさに、歴史の新たな可能性であると同時に、数百年後の史実にござる。
ドプフォwww とまあ、つまるところ、近年のサブカルチャー的枠組み内の信長像におけるバタイユの不可能性が萌の記号と化したガワでもって人物を擬人化し幼年性をアンビバレンスにロリババアとしてアウフヘーベンする、というところにですねwww
オウフwww
いやー、失敬失敬。フォカヌポウwww 拙者、これではまるでオタクみたいwww 拙者はオタクではござらんのでwww コポォ。
……ってなんだこれ。俺の頭マジでどうなってんだ。テンションが酔っぱらいのソレ。
いや、まあ、たしかに俺は戦国武将に例えるなら完全に信長だけど???(イキリ)
信長かなーやっぱり。ちなみに嫁も信長に似てる(二次元)。
んでまあ、とまれかくまれ、ゲームは進んで。中盤。
「『村』『村』『市場』(アクションカード)で6金(6コスト)ね。『金貨』(財宝カード)を買うわ」
リリ先輩はやはり賢いので、着実にアクションカードを駆使して最強の財宝カードである『金貨』を購入し(ちなみに、『市場』というのは、簡単に説明すると、村の上位互換)。
そしてまあ、猪俣さんは……。
「ふっふふー、あたしのターンが来たということは、わかるよねえ? 魔っ女でーすww」
ノリノリで他人の妨害に精を出していた。
うっきうきだなあ? オメエ?(ブチギレ)
「腐れビッチ。やっぱりこういう茶髪の女にろくな奴はいないわね! fuck!」
「禿同」
「あああ……。また『呪い』……。やっぱり黒栄は忌み子なんですね……」
キングボンビーみたいなゴミクズ野郎を前に、俺達は、三者三様に、暴言を吐く。
黒栄ちゃんなんてもう、なんか早くもダークサイドに落ちようとしてるし。
でも、その気持ちもわかる(あと、なんも関係ないんだけど、ゴスロリっ娘が呪いとか言ってんの、未だに厨二病が治らずにいるぼき的にめっちゃ高まる!!!)。
だって、この『魔女』とかいうカード、さっきも言ったように凶悪で、他人のデッキに『呪い』というゴミクズカードをばらまく(つまり、相手のデッキの回転率を低下させることが出来る)という悪質なもの。しかもこの『呪い』、持っていると最終的に勝利点にマイナス1される。産廃。マジでクソ。ディスアドしかない。まーじこんな『魔女』とかいう畜生カード使うようなどうしようもない輩は人間性がうんこ未満であることを自ら喧伝するようなもん。ほんっとーにゴミ。しね?
そんな俺達の気持ちを知らず、いや、むしろ知っているからなのか、輝かしいばかりの笑顔で、恍惚と高笑いする猪俣(さん)。究極に性格の悪い笑みだ。
「あー、倉本―、このゲーム最っ高ねぇーーー! 楽しいわーwww たまんない!」
おーい本性漏れてんぞー。
「だまれ死ね」
ちなみにこれは当然だが俺じゃなくて、無機物のようなリリ先輩が発した声です。
「ええーーー?? どうしてですかぁー??? 別にあたしなんも悪いことしてないですよねぇーー??? ただ楽しくゲームで遊んでるだけなのにーー???」
「そう? まあ精々最後までその威勢が持つといいわね。殺す」
「やだーーww センパイこわーいww」
なんか、こう、女の醜い部分が火花散らしてる感じだ。いつものことなんだけど。
すると、見るに見かねたのか、
(あ、あの、恐れながら……、お二人のこと、止めなくていいんでしょうか……?)
右隣に座る黒栄ちゃんが、びくびく震えながらそんなことを、小声で言ってきた。しかも、その際にちょんちょんと俺の肩をそのしなやかな指で小突いたのだが、まじでかわいすぎてテンパるので止めてほしい(ぜひやって)。
(へっ! え、ええと二人はいつもこんな感じだから、い、いいんじゃないかな?)
(そうなのですか……。喧嘩するほど仲がいいなどという嘘八白の都市伝説……。実在したんですね……。うらやましい……)
う、うらやましい?
なんか闇が深そうなので、追求はしないでおこう。
うん、それにしてもこの子、やっぱり完全に不思議ちゃんだなー見た目通り。いや、まあ、性格は、凛々しい見た目と真逆ではあるのだけど。でも、奇抜という意味では、合致。
それと、おっぱいの大きさと、心の図太さってのは比例しないんだなあ……(みつを)。
って、巨乳に見とれてる場合じゃない。
大丈夫、俺はロリコンだ。おっぱいに負けるな。
いや、でもロリ巨乳という概念についてのディスカッションの終着点は未だにだな……。
「あ、あの、倉本先輩。つぎ、黒栄はなにを買うべきでしょうか?」
「え、ああ、えーと」
卑猥なことを考えていたはずなのに急に目の前のおっぱいが話しだした(失礼オブ失礼)のでびっくりしてしまったが、彼女からすればさっきの会話の続きのつもりなのだろう。
ここは勝手におかしなことを考えてしまった非礼を詫びるというのも兼ねて、適切なアドバイスを送らねば。
「黒栄ちゃ……。く、黒栄さんはさっき『議事堂』を買ってたよね?」
「は、はい!」
あっぶねえ、勝手に脳内でちゃんづけしてたのを危うく口走るところだった。これが黒栄ちゃんの小動物っぽい雰囲気(つっても背丈自体は結構あるのだけど)とゴスロリおっぱいがなせる技か……。リリ先輩が彼女はオタサーの姫is天職みたいなこと言ってたけど、なるほど、あながち笑い飛ばせん。
たしかに彼女がオタサーになんか入ったら、きっと数多のキモオタ達を勘違いさせてしまっていたことだろう。いやー、無自覚なんだろうが、末恐ろしい。
「だったら、『民兵』(アクションカード)を買うのがいいと思う」
「な、なるほど!」
セリフに反してわかってなさそうなので、解説。
「なんでかっていうと、『民兵』を使うと相手の手札を三枚にまで減らすことが出来る、こういうのを巷ではハンデスっていうんだけど……まあそんな用語はどうでもよくて。えーと、つまり、これがどういうことか、わかる?」
「んーー? ……あっ! 『議事堂』の相手の手札が増えちゃうっていうデメリットをそれで打ち消せるってことですね!! ひゃーー!! す、すごいです!」
「そういうこと。あーでも、アクション権が足りないから、『村』とかのアクション権が増やせるカードと一緒に使うのを忘れずにね」
「あ、はい! ひゅえー、すごいです! ドミニオン、面白いですね! これはきっと仙才鬼才、絶世独立に孔明な方が作ったに違いありません! 感動です!」
大げさだなあ。
まあでも、そんなに言ってくれるのは嬉しい。それにこの子はお世辞なんて言っていないというのが俺にでもわかるくらいに全力で嬉々としていて、微笑ましいのだ。
「ねえ、ツクルぅ? どうしてルキアにだけ優しくするの? ずるくないかしら?」
今更だけど、リリとかルキアとか、なんかキラキラネームっぽいの多いな、この部。
名前負けしない美貌をお二人共お持ちだから、あんま気になんないのが幸いだけど。
「いや、べつに、そういうつもりでは……」
「そーだそーだー! アタシにも教えろー」
「ええ……」
なんやこいつ。
『魔女』の悦びを知って頭がおかしくなってしまった猪俣さんに辟易していると、リリ先輩がぐいっとその美しい顔面を近づけてきた。いい匂いがして非常に、よくない(いい)ので止めてほしい。
「じゃあどうして、私にはなにも教えてくれずにいきなり谷へ突き落としたのに、彼女には手とり足とり、一から十までちゃーんとエスコートしてあげてるの? 不平等よねえ?」
「まあ、それは、リリ先輩が優秀だから……」
「あらまあ。そんなわかりきったことを再確認したくらいじゃあ、別に私のご機嫌は治ったりなんかしないんだからね?」
なぜ急に思い出したかのように雑なツンデレ?!
「じゃ、アタシはー?」
「おめえは勝手に魔女という名の悪の街道を突っ走ってっただろうが!」
あ、思わず本音が……。
ならば、数秒後の未来は、明らかで。
「ああん? 誰がおめえじゃコラァ?! てめ自分の立場わかってんのか、ゴラァン??」
机を挟んで座っているのに、わざわざ身を乗り出して俺の頭を二つの拳でぐりぐりと痛めつけてくる猪俣さん。
「あ、いたい、いたい、ごめんなさい。僕が悪かったです許してくださいほんとごめん」
あまりの激痛に、一瞬で降伏した。
かつての私は、女性声優に痛めつけられるのなら、それがどんな苦難であれ、ご褒美以外のなのものでもないと思っておりましたが、過ちでした。
痛いものは痛い。苦しいものは苦しい。現場からは以上です。
「ハ? すみませんでした結霞様、でしょ?」
「すみませんでした結霞様」
「声が小さい!!!」
「すみませんでした結霞様ァ!!!!」
このサークルにいる間だけは人権だけでなく恥も失っている俺は、心の限り叫んだ。
「よし」
一人の成人済み男性を屈服させたことに、自尊心が満たされたのか、俺は解放された。
そんなぼろぼろのこの身に言い渡される、次なる試練。
「お楽しみのところ悪いのだけど」
「今のどこが楽しんでるように見えました?!」
「ハア? アタシに絞められて楽しめないってのはどういう了見なワケ?」
「はい、大変楽しかったです!」
ヨロコンデーー!!!
「ねえ、ツクル……」
「なんでしょうか?!」
声が怖いかったので、思わず身構えてしまう。
すると。
「あなたの番よ。早くして?」
「あっはい。ほんと、すいません」
リリ先輩、あんた……、けっこうハマっとるやんけ。
さてさて、堅実のリリ、呪いの猪俣、コンボの大天使黒栄といった三者三様の展開が続く中、ゲームもそろそろ終盤になりつつあった。
「『村』『村』『市場』『鍛冶屋』(アクションカード)で、8金あるから、『属州』(勝利点カード)を買って終わりね。ふふ」
「おおー! すごいです!」
「とうとう勝負を決めに来ましたね……」
リリ先輩は、着実に自身のデッキを強くした結果、初期段階ではとても手が届かない、最も高価な勝利点カードである『属州』を購入するまでに至り(ほくほく顔で嬉しそうにはにかんでいるのがかわいい)。
「どうぞーみんなー、『呪い』だよーw えへへェ……、キモチィ……」
相も変わらず考えなしにひたすら『魔女』を乱用し、呪いを配ることしか能がない猪俣さんは、もはやアル中やヤク中となんら変わらぬトンだ目で笑っていた。
こいつはもう、手遅れだ……。このゲームの勝利条件、最終目的を忘れてやがる……。
なんとなくだが、彼女を見ていると、タバコを吸うのは止めないとな、みたいな気持ちになる。
「もはや怒りを通り越して哀れになってきたわね……」
「ここまで人間って自分の欲望に忠実になれるんですね……」
「おそらく、例のお仕事でよっぽど精神的に病んでいるんでしょう。それがここにきて、爆発したんだわ。普段はなんでもないように振舞っていたけれど、ああ見えてかなり無理してたのね」
「そうかもしれませんね。ひどい人だなあと思ってたけど、俺、今度からはもう少し猪俣さんに優しくしようと思います」
「そうね。それがいいわ。ま、私はそんなこと、絶対にしないけれど」
「鬼かあんたは!」
「ええと、猪俣せんぱいは、なにかお仕事をされてるんですか?」
「あー、言ってたなかったっけ? アタシ、せいゆ」
「いやー、その話はまた今度したほうがいいと思う! 今はドミニオンに集中しよう! ほら、次、黒栄さんのターンだし!」
もうかなり、アレな姿を見せてしまってるし、今それを言うのはよくないと思う。うん。
「そ、そうでした! じゃあ、黒栄はー『村』、『議事堂』……、『民兵』で! うぇへ……」
俺の教えたコンボを忠実に決める黒栄ちゃん。どことなく嬉しそう。
だが、その度に俺の方を「やりましたー!」みたいなキラキラした目で見つめるのはやめて欲しい(やって)。かわいい。いい子かよ。こんなん好きになってしまう。
けれど唯一の救いは、その度に出す笑い声がくっそ陰キャっぽいことだ。その残念さに必死になって耳を傾けることで、俺は彼女に心を許さずにいられる。
そうさ、叫べ。
ぼきは、ぬいぬいとくるみん単推しです!!!!(単推しの概念、壊れる)
ふー。
大丈夫、俺はまだ俺でいられてる(限界)。
にしても、自分のかわいさを知っている女ってのも恐ろしいが、反対にそれに無自覚な女も恐ろしいな? ていうか、かわいい女が、こわいな?
いやこれ、別に、まんじゅうこわい的なあれじゃないからね。ガチだからね?
2及び2・5次元なら歓迎だけもさ。
と、またもいつもの如く脳内を限界色に染めていると。
「そ、それじゃ、えーと、6金あるので、こ、この『冒険者』(アクションカード)を、買いますっ!」
黒栄ちゃん、意気揚々、宣言。
しかし、その選択は、どう足掻いても、悪手――!!!
なぜなら、そのカードは強力な効果を持つ代わりに下地を整えなければ三分の一のコストで買える『村』未満の出力しか算出できないトリッキーなカード。
特に、デッキ内に複数の強力な財宝カード――即ち、『金貨』――を抱えていなければ最大効率は期待できない。だけれど、『金貨』というのは、リリ先輩が中盤で買っていた、最上級の財宝カードのこと。ゆえに、それを複数個抱え込むというのは、中々難しい。
それが証拠に、実際、黒栄ちゃんのデッキには、『金貨』は皆無。その下位互換である『銀貨』と『銅貨』のみ。『議事堂』と『民兵』のシナジーを重視した結果だ。
それをここから方針転換して、『冒険者』用にデッキを調節していくのは難しいだろう。
なんてったって、もう先のリリ先輩の手番の時点で、このゲームが終盤になりつつあるというのは決定してしまったのだから。『属州』という、一番高い勝利点を買えるようになったプレーヤーが現れたというのは、真実そういうことなのだ。
あれを放っておけば、彼女は全『属州』を買い占め、破格の勝利点を我がものとし、一位の座にふんぞり返ることだろう。
だから、このタイミングで、デッキの中に新たな戦略を組み込むのは、論外。
今買うべきは、勝利点カード。なにをしてでも、勝利点だ。
そしてなにより一番に買うべきは、最強の勝利点カード、『属州』。偏に、『属州』。
そう、もうこの段階にまでゲームが進行してしまったのなら、『冒険者』など買っている場合ではないのだ。なぜなら、おそらくそれを使えるようになる頃には、ゲームは終了しているであろうから。
決着の瞬間になってアドが稼げるとか言い出したんじゃあ遅いのである。そんなのは齢百歳のジジイが、「ワシの年収一億!」とか言ってイキっているようなもの。そんな年になって一億稼いでも、絶対使い切る前に死ぬ。そういうこと。
けれど。
「『冒険者』、甘美な響き……。ずっと気になっていました……、『冒険者』。素敵なカードですね! 黒栄、やりました! やりましたよー! ふおー!」
きらきらと目、輝かせ。るんるんと声、かきたてて。
うっとりとカードへ見入る、その様は。なによりも、幸せそうで。
守りたい、この笑顔。
そう思わせるだけに十分な、楽しんでゲームをプレイする女の子(一年生ならまだ十八歳なのでギリまだ女子)がいた。
うん。なんかもう本人が楽しそうだからいいや。
ゲームってのは勝ち負けが全てじゃないからね。楽しいなら、それが一番だよ。
俺から言えるのはただ一つだけ。なんというかほんと、黒栄ちゃん、尊い……。
――だがァ、こっから先は、俺の、タァーンだぁ……!!!(ねっとり)
本物のカードゲームっていうもんを味あわせてやる。ふっ、俺の『金貨』が火を噴くぜ!
俺の、タァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーン!!!!
「じゃ、『市場』『鍛冶屋』でー、全部で16金あるんで、『属州』2つ買って終わりです」
「くっ……!」
俺の凶行に、忸怩たる思いで目を伏せ歯を食いしばるリリ先輩。
フフフ、そうさ先輩。あんたはさっき『属州』一つ買ってドヤ顔でいたが、この俺は一ターンにその『属州』を二つ買える。わかるか? これが俺の力だ!!! ククク、フハハハハハ!!! 悔しいのぉ? 悔しいのぉ?(オタク特有の醜いマウント取り)
「16!? すごいですね!」
「これで、ようやくボドゲでリリ先輩に勝てそうですねえ?」
「奴隷のくせに調子に乗って……」
悔しがるリリ先輩の顔ってのはたぶん初めて見たので、とても気分がいい。そして無論、かわいい。いや、まじでなんでこんなにも表情歪んでんのにかわいいんだ? 眉間とか、皺やばいぞ?
なーんて、そんな疑問を俺以外のみんなが浮かべている訳もなく、彼女達の関心はもっと別のところにあった。
「でも、なんでそんなに『金貨』がいっぱい……?」
「たしかに、ずっと不思議だったのよ。あなた、どうしてそんなに、ばしばし『金貨』を買えたわけ?」
「それはですねえ、ふふ……」
いい感じに場があったまってきたな。
俺は生まれてこの方ずっと言ってみたかったセリフを口にすべく、息を吸い――
「このゲーム、必勝法がある」
なんて言っちまった刹那、空間が凍てついた。
「キモ」
「うっわ、イキリオタクきっつ」
ねえそれ、言葉の暴力だよ? うんまあ、確かに俺はそれ相応のことをしたけれども。
あとその、ゴミを見るような蔑みの目、視線のスタングレネードだよ?
「あー、うん。そうですよね自分でもわかってますちょっと気分が高揚して調子乗っちゃっただけです、ほんとすいませんでした。普通に説明します」
ところがぎっちょん!
「……ほわー」
ああ……。
そうやって純粋な目で俺を見てくれるのは黒栄ちゃん、君だけだ。なんなのこの子? なんでこんないい子なのに、変人なの? 変人じゃなければもう聖人なのに。
!……気付いてしまった。俺みたいな社会不適合者に優しくしてくれるような人間なんて、常人の中にはおらんということに。え、泣いてもいい?
「で、その必勝法(笑)ってのはなんなのかしら?」
あっ、泣いてる場合じゃなかった。
「『礼拝堂』(アクションカード)による圧縮です」
「ええー、でも、『礼拝堂』って、自分のデッキのカードを廃棄しちゃうんですよね? 何が強いんですか?」
「あー、なんのことかと思ったら、あの『呪い』を捨ててた小賢しいカードか」
『呪い』には人一倍敏感だった猪俣さんが、反応した。
というのも、『礼拝堂』の効果は、手札のカードを好きな枚数、廃棄――即ち、デッキから除外――できる、というもので、俺はそれによって手札に来た『呪い』を廃棄していた。
「そうだね。でも『礼拝堂』は別に、『呪い』を捨てるためだけにあるんじゃない」
そこまで言えば、さすがにリリ先輩はピンと来たのか、おもむろに口を開いた。
「……なるほど。してやられたわね。つまりこういうことでしょう? 最初にもっている『銅貨』や『屋敷』は、正直な話、中盤以降デッキにあると邪魔。ノイズになりかねない。だから、思い切ってそれらを破棄。そうして、その空いた枠を上位の財宝である『銀貨』、『金貨』で埋める。デッキの枚数はあまり増えないけれど、デッキは確実に強くなる」
「さすがリリ先輩。その通りです。このゲームはなにも、デッキの枚数が多ければ強いっていう単純なものではないですからね」
「なるほど! 奥が深いです!」
「え、一番『呪い』を多くまいた人が勝ちなんじゃないの?」
「ちがうよ、猪俣さん……」
「あなた、疲れてるのね……」
「え、ええ?!」
ダメみたいですね。
そうしてそのままゲームは進み、結果、二回戦は俺が勝利した。
「まあ、ともかく、今回はあなたの勝ちね、ツクル。臓腑が煮えたぎりそうな程悔しいけれど、おめでとう」
「そこまで?!」
「黒栄は、とっても楽しかったです! みんなでこんなゲームをわいわいやったのなんて、はじめてですし!」
「俺もこんな大人数でやるのは初めてだったから楽しかったよ。ありがとう」
なにせ、そんな経験をしたのは、幼少期か、最近リリ先輩とやっていたボードゲームくらいなものだもの。
「たまには群れるのも悪くなかったわ」
「はー、みんな、ほんと残念な人生送ってんねー」
「ふーん。でも、そういうあなたはどうなのかしら? どうせ、大勢の気持ち悪いオタクに囲まれてお歌を歌うのが関の山でしょう?」
「うるさいうるさい! ええそうですよ! アタシだって芝居ばっかで、ろくに友達もいなかったし! こんなことしたのなんて精々がラジオの企画ぐらいだわ! ぼっち営業とかネットで叩かれてるけどガチだし! クソが! 悪かったな、この行き遅れ女!」
え、そうだったの……?! たしかに、大学には友達いなさそうだったけど……。
「行き遅れェ? そのセリフ、あなたみたいな水商売についてる売女にだけは言われたくないのだけれど」
「誰が水商売だし!」
「あなた」
「ちくしょう、この口の減らないメンヘラめぇ!」
「口にしか価値のない癖に、表舞台に出ようとする勘違い女」
「私だって好きでグラビアだの生放送だの出てるんじゃないだっつーの!」
「く、倉本せんぱい、お二方、こわいですっ…………うっ……」
平素のじゃれあいがいつの間にやらガチ喧嘩に発展しそうなのを、がくがく見守る黒栄ちゃん。うん、俺だって怖い。でも、彼女の怯え方は、ちょっと尋常じゃなくて。
「うーんそうだね、さすがにこれはとめるかあ……」
はあ……(クソデカため息)。
「あのー二人共、さすがにそれは言い過ぎ……」
「「はあ?」」
声を揃えてガンを飛ばされる。やっぱり根が仲良しなんだよなあ……。
「あっはい。ごめんなさい。でもこのまま言い合ってもたぶんお互い減らず口……」
「「減らず口?」」
いや、もうハモっちゃってるし。
「や、すいません。ちょっとオタクなんで語彙力なくて言葉を間違えました。で、だからとにかく平行線なんで、せっかくだしドミニオンで決着つけませんか?」
「「のった!」」
ガッと二人に、それぞれ右肩と左肩を掴まれた。……だから仲良しかよ。
「だいたい、ツクルに負けっぱなしとかイライラしてたのよね。感謝なさい、あなたたち、全員屈服させてあげる……」
「まあ、さっきのはおふざけで負けてあげた節もあったし? 次は本気でぶちのめすから」
しかして、三回戦開始。
「なーんちゃって。このアタシが『魔女』を使わないわけないっしょ!」
「Fuck」
「くるいそう」
「ま、また地獄が、始まるんですね……うるっ」
真面目に戦うといったくせに初っ端から『魔女』を購入した『魔女』キチガイに、一同総スカン。
そして……。
「こうなったら……」
リリ先輩の目は血走っている。
「リリ先輩、それだけは……」
よほどさっきの試合でヘイトを溜めていたのか、あのミス冷血漢筆頭代表みたいなとこのあるリリ先輩までもが、感情に流され、結果――
「私も外道に落ちてやるわ……! やられっぱなしとか、ムカつくのよ! 5金、『魔女』!」
外道に堕ちた。
「アハ、ついに本性を表したじゃん? センパァイ?」
そして数ターン後、仲間が増えたことを喜ぶ罹患者にむけて、一閃。
「だからあなたにだけは言われたくないのよ! 私のターン! くらいなさい、『魔女』!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「くそがあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「ううっ……」
地獄の釜が、開いた。
だったら俺だってもう、やけくそになるしかない!
「くそっ、この顔面性格反比例女どもめ! こうなったら俺もやってやりますよ! やられたらやり返す! それがオタクの生き方だァっ!」
あーもうめちゃくちゃだよ。
「おら! 『魔女』だ! 『呪い』を喰らえ!」
「ほーりーしっと……!」
「死ね陰キャ! 死ねェ!!!」
「ははは、なんとでも言うがいい! これがドミニオンじゃ!」
ン、ギモヂィィィィィィ!!!!!!!
「そ、そんな……。あんまりです。救いは、救いはないんですか……」
「ないです」
「あなた、これまでの人生で何を学んできたの? そんなもの、あるわけないでしょう?」
「全くだっての。んなもん存在しねーし。ばーか」
「ううっ……」
厭世的部員に囲まれ、孤立無援と化し、一人絶望に暮れる黒栄ちゃん。
そこへ這い寄る、悪魔の囁き。
「ふふふ、それが嫌なら、あなたも『魔女』を使えばいいの。そうすればあなたもすぐに楽になれるわ」
「いやーまじ、これ一度やるともーやめらんないくらいきもちーわ。この快感知らないとか人生の半分は損してるっしょ」
「そうだよ、黒栄さん。何も考えず、ただ呪いをばらまくだけでいいんだ。これほど素晴らしいものはない……。議事堂民兵のシナジーとか礼拝堂圧縮なんてすぐにどうでもよくなるよ……」
しかし、大天使黒栄ちゃんは負けない。
「く、黒栄は『呪い』になんて絶対屈したりしませんからぁっ!」
「ふふ、その威勢がいつまでもつか見ものねえ……」
「ほんっと、そんなこと言ってられるのも今のうちだってのに」
「まあまあ、二人共。せいぜい黒栄さんが頑張っている姿を肴に楽しもうじゃないですか」
「それもそうね」
「たしかし」
「「「ぐへへへ……」」」
まるでR18作品に出てくる竿約モブの様な笑い声を上げる三人。
我ながら限界過ぎる。
そして、
「ひ、ひいいっ……」
怯える黒栄ちゃんは、ゴスロリ服なのも相まって、マジでそういう系のファンタジー作品にでてくるヒロインみたいになっていた。
がんばれ、黒栄ちゃん!! 魔女に負けるな、黒栄ちゃん!!!
その後も。
「『魔女』!」
「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
「「くそ! しね! 人非人!」」
「う、ううっ……。こんなのって、ひどい…………」
というやり取りが無限とも思える程に永劫続き、果たして。
いつのまにやら、開始時には大量にあった『呪い』カードが尽きてしまった(普通尽きるまで使わないんだよあ……)。
しかも、最終的には『呪い』のせいで全員の勝利点がマイナスで終わるという、最低な結末に。ひっどい。史上稀にみるクソ試合だった……。
てなわけで。
「……こんなのじゃ納得できない。もう一回やるわよ」
「えー、もうよくない? アタシ、へとへとなんですケド?」
「ふーん。ま、逃げるなら勝手にすれば?」
「アタシがセンパイから逃げる? ハッ。片腹痛いわ! いいじゃん、その安い挑発、乗ってやろうじゃん!」
「そんな大口叩くと、後で負けた時に恥かくわよ」
「その言葉、そっくりそのまま返してあげる!」
ほんとめんどくさいなこの二人は。素直に仲良く出来ないのか。
……出来ないんやろなあ(ジト目)。
そんな下らないことで世を憂いていたのも束の間。
「黒栄も、ぜひもう一回やりたいであります!」
く、黒栄ちゃん?!
あんなにも呪い打たれる度涙目になってたのに! しかも、印籠を掲げるがごとく嬉しそうに使ってた『民兵』もみんなの手札が殆ど呪いで埋まってるからあんま効果なかったのに! それでも黒栄ちゃんは、この暗黒のドミニオンを楽しんでいたというのか!?
天使。マジで天使だ。それ以外に、彼女を形容する言葉が思いつかない。
大学に通ってる女なんてもう、身も心も汚れ切った心身ともに非処女な淫売しかいないと思っていたが、こんなにも心の綺麗な子がいたなんて……。
俺は今、猛烈に感動している。
――という、胸の火照りにインターセプト。
「なんか黙ってんけどぉ、倉本ももちやるんだよねえ? まさか自分で持って来といてもう飽きたー、なんてナメたこと言わないっしょ?」
「当たり前じゃない。ツクルは私の奴隷なんだから。主人が遊び足りないと言っているのに勝手にお開きにするはずがないでしょう? ねえ、ツクル?」
なるほど、俺に拒否権はないらしい。
ま、望むところだけど。
四回戦、序盤。猪俣さんの手番。
いたって真剣な面持ちで、先輩は言った。
「ねえ、いい加減『魔女』を買うのはやめない? これだとあなた、感情的になってしまって、勝敗よりも、いかに相手を蹴落とすか、みたいなことしか考えなくなってしまうから、良くないと思うの。それに今回こそは私、ちゃんと勝ち負けにきっちりオトシマエつけたいし。ね、ダメかしら?」
「なるほど。一理あるかも。じゃー今回はせっかくの五金だけど、別のに使うかー」
しかし、その時俺は、リリ先輩が不敵に笑ったのを見逃さなかった。
数ターン後。
「ふっふふふふ、あっはははは、バカね結霞。いつどこで誰が、私が『魔女』を買わない、なんて言ったのかしら。私はただ、あなたに買わないほうがいいと忠告をしただけ。」
「き、貴様ァ……!」
「つまり、このターンで私が五金払って買うカード、それは……」
極限にまで歪んだ笑顔で、いやマジで賭ケグルイか遊戯王かな?みたいな顔面崩壊(なおそれでもかわいい模様)でリリ先輩は満面に抑えきれぬ笑みを湛え、全力で決壊させた。
「『魔女』を置いて他にないわぁ! ふふふふ、あははははははははは!!!!!」
「くそがああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!! 殺してやる! 殺してやる! アンタの面の皮を剥いで財布をつくってやる!」
本業が役者だからだろう、凄まじく声の通る猪俣さんの絶叫。迫真すぎる。
そしてそれと対等とまではいかずとも、さっきまで完璧な演技してたリリ先輩、マジ、ナニモン???
「あはは、醜いわぁ。滑稽ねえ結霞ァ。騙される方が悪いのよ?」
「このメンヘラメンタルブス! ぜってー負かす!」
こわっ。
あのー、なんかここだけ時空間違えてません? これなんて闇の決闘? 賭博目次録?? ライアーゲーム????
再び、数ターン後。
「『村』『魔女』『魔女』」
「地獄に落ちろ、大根チビ狐」
「一ターンに、呪いを二枚もなんて、ひどすぎます……。むごいよお……」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
結局魔女ゲーじゃねえか!!!!! ごみ!!!!!!
しかし、それから数十ターン経過して、終盤。ゲームは意外な展開へと転んでいった。
「ぼ、『冒険者』を使います! ふおー」
そういえば、黒栄ちゃん、今回は議事堂民兵コンボがこの『魔女』飽和環境では無用だと気づいたのか、使っていなかったが……。戦略を『冒険者』一本に絞ったのか?
「そして……、やった! 八金あるので、ぞ、『属州』を購入します!」
なっ……!
こ、こいつ!
どうやら彼女は、俺たちが呪いで呪いを洗う醜い争いにかまけている間、ひっそりとノイズとなる『銅貨』を廃棄し、必死になって『金貨』を集めていたらしい。
気が付かなかった……。
黒栄ちゃん、いつの間にそこまで出来るように成長したんだ……。
そのうえ彼女、こっちにむけてにっこり微笑みかけてくれてるし。
「倉本せんぱいのおかげで『礼拝堂』を使えば強いって気付けました! あ、ありがとうございまひゅ!」
いや、まじで、天使かな? ゴスロリだけど。
すると、生意気な天使を追い落とそうと、箒にのった魔女が、まとわり騒ぐ。
「へえ、『属州』を買ったのォ? なかなかやるじゃない。でも、そんなの私たちには関係ない」
「だって、『属州』の勝利点なんて、しょせんは八点だし?」
「つまり」
「「『魔女』を八回打ち込んでやれば問題ない!!!」」
この人ら、もう完全に、目が据わっちゃってる……。
もういかに効率的に他人を呪うかしか頭にねえ!
だから、そうして迎えたリリ先輩のターンは、地獄だった。
「『研究所』『研究所』『村』『村』『村』『魔女』『魔女』『魔女』『魔女』ォ!!!!!!!」
「はああああああああああクソクソクソクソクソクソクソクソクソ!!!!!!」
「しねええええええええ!!!! 淫乱巻き毛女ああああああああああああ!!!!!!」
俺と猪俣さんは、恥も外聞もなく、頭を掻き毟り、椅子の上をドタバタとのたうちまわって、思うがままに咆哮した。
黒栄ちゃんは青い顔をしている。
「…………のろい、よん、まい……? ふぇえ……」
それを見て、一言。
「ちっ、四枚しか打てなかったわ」
うっそだろ!? この女、マジで八枚打つ気でいたんか?! 馬鹿なの?!
「安心しなよ、リリ先輩。残りの四枚は、アタシがうったげる……」
ええ……。なんだその敵はとってやるみたいな口調。こんなの絶対おかしいよ!
するとまた、怨嗟の化身と化したリリ先輩が、ぽつりと。
「ほろびろ」
……どの口が言うんだろう。
そんなこんなで、阿鼻叫喚の屍山血河、というか魔山呪河ってな感じの第四回戦は、黒栄さんの一人勝ちで幕を閉じた。
この『魔女』tir1環境には、呪いを無視して財宝を掘り進められる『冒険者』が丁度いいメタ(対策)カードとして機能したようだ。というか、機能したどころか、ガン刺さりだった。黒栄ちゃんがそこまで考えてプレイしていたのかは謎だけれど、もしそうなら、なかなかのキレ者である。
ということで、相手が何を使ってくるかによって、自分がどのカードをピックすると強いというような、場、及びカードごとの特徴、相性、プレイヤーごとの傾向のようなものを今回の一戦で学んだ俺たちは、次の一戦から凄まじい速度で成長していった。
具体的に言うと、一番多く使われているカードをメタったカードを投入し、すると今度はそれに対し優位を取れる戦略で~、というようなデッキの組み方をみんながするようになり、メタが循環し、環境が流動的に毎試合変わるようになったのである。
なんか、カードゲームっぽかった(KONAMI)。
そう、これまで俺達はいかに効率よく『魔女』を打ち込めるかのみに主眼を置いてデッキを作っていたが、今度は逆に、相手の呪いを利用して優位に立てるデッキであったり、呪いを防ぐデッキ、あるいは呪いを無視できるカードを多数組み込んだデッキなどを構築し、各々が独自の『魔女』対策を講じながら、『魔女』を打ち込んでいったのである。
けれど、最終的に何度戦っても、みな(無論、黒栄ちゃんは除く)、絶対『魔女』に固執しない方が強いのに、決して『魔女』を手放さそうとしなかった辺り、このサークルはまーじで人間の屑の掃き溜めなんだなと思いました。まる。
やっぱり文学部って感性で生きてるんだろうね。頭が悪い。
きっとここに理系だとか法学部、経済学部がいたら話は変わったろうに。きっと彼らはもっと合理的に試合を進めたことだろう。
あるいは文学部唯一の異端(パンピー)、英(ウェイ)文学科とか。彼らがいた場合は、ここまで場を殺伐とさせずに、なあなあな試合展開となっただろう。いなくてよかった。はっ、文学部の面汚しめ。かーーーっ、ぺっ!
まあでもきっと、だから僕たち文学部は、就活に弱いんだ……。
非合理でコミュ力低めなわがまま偏屈軍団。
誰がそんな社会不適合者とるよ?
大体、就職に真剣な奴はこんな学科こないからね、仕方ないね。
結論。文学部は頭が弱いというか、そもそも就活に弱い。
以上、ドミニオンに学ぶ就活講座でした。完。
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