俺のラブコメに嘘はいらない

ふみのあや

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第四限 初夜

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 降りしきる雨が、都会一帯をじんわりと包む。夕の空を。
 ジューンブライドとはおよそ縁遠そうな、水無月がお似合いのキモオタは、今日も窓からぼんやりと、まるで自分の性分かのようにどんよりとした灰色の雲を眺めていた。
 じめじめ、曇天、大いに結構。夏になるとウェイどもが鬼の首を狩るかのような勢いで海だの山だのとイキりだすからな。今のこの小休止こそを、我々日陰者は楽しむべきだ。
 そう考えていれば、校舎を行き交うリア充たちの群れに対しても、ある程度寛容になれるというもの。ふふん、せいぜい梅雨によってその勢力を脅かされているといい。俺達インドア派にとって、雨ぐらいなんてこたあないが、お前らアウトドア人間にとってはさぞ辛かろうからなァ。クハハハ、笑止、笑止!!!
 梅雨万歳!!! 梅雨前線、万歳!!! 
「ツクル……キモいのだけど……、大丈夫?」
「え?」
 向かいの椅子に座る、リリ先輩の心無い言葉に早速傷つけられた今日この頃。
 性懲りもなくこの俺は、サークルに顔を出していたのだった。
 また、猪俣さんは例によって例のお仕事がお忙しいのでお休みだが、ゴスロリっ娘黒栄ちゃんは、こなれた手つきで部屋の隅の椅子に座りゲームをしている。
 しかも、据え置き。それも、わざわざ学生センターにまで行ってプロジェクターまで借りてきて。
 あれ、この子、誰よりもこのサークルに馴染んでね???
「うぇへへ、やっぱりグレクラは最強ですぅ……」
 なんかわけわかんないこと言いながらニヤニヤしてるし。
 気になってスクリーンを見ると、中世ヨーロッパ風な世界をゴスロリ衣装で動き回る操作キャラ(男)が、その厳かな見た目には不釣合いに巨大な棍棒を振るって、ゾンビみたいな敵をなぎ倒していた。
 加えて、ガシャンとかジャキンとかの心臓に悪い音や、くちゃくちゃと気味の悪い音、汚い呻き声みたいなのがひっきりなしに聞こえてくる。
 どうやら彼女は、そのゴシックロリータな見た目通りに、そういう鬱屈としたダークファンタジーなゲームがお好みらしい。
「えへへェ…………」
 画面の中の敵を惨たらしく屠殺しながら笑うその姿は結構やばかったが、着ているゴスロリとそっち系メイクには結構映えていた。
 と。不意に、我がサークルきっての厄介な女神のきまぐれが発動。
 たぶん、神話の女神もこういう感じで人様に迷惑かけてんだろうなあ(特にギリシャ)。
 そう、俺はまだ知らないのだ。この何気ない一言が、後にどんな悲劇を我々に齎すのか。
「ねえ、楽しそうね、ルキア。そのゲーム、私にもやらせなさいよ」
 ボドゲとかのアナログゲームこそ好きなみたいだが、デジタルのゲームにはまるで興味なんてなさそうで、それどころかその手のゲームを「ぴこぴこ」とか言い出しそうなくらいゲームに明るくなさそうなリリ先輩の想定外のアクションに、黒栄ちゃんは驚きで思わずコントローラーを取り落としながらびくんと跳ねた。
 椅子ごと後ろに倒れそうな勢いだったので、俺は慌てて彼女の椅子を押さえる。
「ふぇえええ!? リリせんぱい、だ、ダティソに興味がおありなんでしゅか!?」
 しかし、そう叫んで、カラコンだのつけまだののパーペキめちゃかわゴシックメイクで重武装したぱっちりお目目で彼女が後ろを振り返っている間にも、ゲームは進行しており。
 その刹那、画面の中の自キャラが敵に殺されたらしく、ガチ過ぎる悲鳴を上げて死んでいった。画面に浮かぶ「YOU DIED」の赤文字。こわっ。え、なにこれ、ホラゲなの?
「あ、ぴやあああああああああ! じゅ、十万ソウルが………………」
 死亡によるペナルティでもあったのか、めっちゃ落ち込んでる黒栄ちゃん。
 そんな意気消沈の彼女の事を、「なにを急に落ち込んでいるのかしら? 生理?」みたいな目で見ているリリ先輩。時代が時代なら、この人、マリーアントワネットとかになってたんだろうなあ……。パンがないならお菓子を~のくだり、絶対素でやるよ、この人。
「だてぃそ?」
「あ、ええと、はい。ダティソというのはこのゲームの略称で……、正式名称はダーティソウルというのですが……」
 落ち込みながらも、自分の好きなゲームについて興味を持ってくれたリリ先輩に対し、きらきらとした目を向ける黒栄ちゃん。ううっ、なんて健気なんだ。黒栄ちゃんマジマッチ売りの少女。マッチ売りの少女みが深すぎて、バイカル湖になった。
 そして、そんな人情など一切持ち合わせていないサイボーグ美人は、最低な感想を抱く。
「そう、ひどい名前ね……。まあなんでもいいわ。はやくやらせて」
 彼女がそう言うと、黒栄ちゃんはまるで継母にいじめられるシンデレラのような手つきで(主観のバイアス)、プレイ画面からメニューを開き、タイトルに戻ると、握っていたコントローラーを手渡した。
「わかりました。じゃあ、New gameで……。コントローラー、どうぞ」
 すると画面上には、『DIRTY SOUL Ⅱ』という白文字が、真っ黒の背景にでかでかと投射。そしてその下部にあった「NEW GAME」が選択された。
 つまり、大天使黒栄ちゃんは、この魔王リリ先輩の為に、わざわざはじめから、新たなゲームデータを作ってくれる心づもりらしい。
 そしてその寛大な処置に気付かぬ暴君は、見当違いの質問をする。
「ん? 一緒にはできないのかしら?」
「ええっと、オフラインでは無理です……。オンラインなら……」
「じゃあオンラインにすればいいじゃない」
「そ、それはPS4が二台ないと……。ごめんなさい……」
「ふーん。まあよくわからないけれど、無理なのね。なら仕方ないわ」
 さて、そうこうする内にムービーが流れ始めた。
 すげえ……!
 全体的に漂っている重厚で暗い空気感がゾクゾクするし、CGも驚くほど美麗。最近のゲームってここまで進化してたのか……。それに、嗄れた老婆のイングリッシュなナレーションも、雰囲気を出すのに一役買っていて、クール! 最高にダークファンタジーだ!
 うおおおお!! 高まってきた!! やっぱゲームはOPが肝心だよな、うん。
「ふふへ、やっぱりかっこいいなあ、うぇひひ…………。ろんぐあごう、ぐれいときんぐ、あん、ぐれいときんぐだむ…………。おーばー、おーばー、おーばー」
 黒栄ちゃんなんか、テンション上がり過ぎていつものように陰キャっぽく笑うだけじゃなく、もはや英語台詞の暗唱まで始めてるし。や、大好きかよ。
 だというに、リリ先輩はご不満らしい。
「なかなか始まらないわね。はやく雑魚を殺し回りたいのだけど」
 たぶんこの人、GTAとかやらせたらものすごい勢いで街を暴力と破壊で埋め尽くすのではなかろうか。
「リリ先輩、たぶんこれ、そういう無双ゲーじゃないですよ」
 そんな妄想にげっそりしながら、結構有名なゲームらしく、どこかで聞きかじったような情報を元に未プレイの俺がそう言うと。
「知っているんですか!? せんぱい?!」
 めっちゃ食いついてきた。
 あの、そのかわいい顔を輝かせて急接近するのやめて(やって)。き、緊張するから。
「いや、名前を聞いたことがあるくらいだけど……。たしか、マゾゲーだって」
 俺は、このゲームが難易度の高いオープンワールドの3DアクションRPGである、ということくらいしか知らない。後は日本製だけど海外で人気らしい、ってこととか。
「まぞげー? まぞげーってなんですか?」
 そういえば、こんななりだけど意外にも(失礼)、黒栄ちゃんは別にオタクではないので、そういう用語には疎いらしい。
「普通に考えて、マゾのド変態がやるゲームって意味じゃなくて?」
「まあ、大体あってますけど」
 なんというか、言葉の裏に悪意があるんだよなあ……。
「ええっ! 黒栄はマゾでもへんたいでもありませんっ!」
「そうかしら? たぶんそれはあなたが本当のあなたに気づいていないだけ。あなたの本来の姿は、そっち。ねえ、これまでのあなたの人生を思い返してみて。きっと思い当たる節があるはずよ……」
 急に空中浮遊とかするような人がやりそうなことを始めるリリ先輩。まずいですよ。
 心理学科の人ってみんなこんななのかな? 統計を取りたいのでそうだよーって人はリツイート、違うよーって人はいいねをお願いします!(絶対違う定期)
「リリ先輩、唐突にうさんくさいことを言い出すのは止めてください」
 なんとか止めようとするが、肝心の黒栄ちゃんが止まらない。
「ええっ!? そ、そうなんでしょうか……? 黒栄は、まぞの、へ、へんたい……。そうなのかな……? だから、黒栄、いつも、いじめられて……」
 いじめ!? ナチュラルに闇を出していくのやめて?! というかマジやめてくれ、いじめの話題は俺にも刺さる……。うわあああああああああああああああああ!!!!
「ちがうから。黒栄ちゃんは大天使だから。いちいちこの人の言葉を真に受けない!」
 あっ、やべ、テンパりのせいで思わず変な言葉が。
「だ、大天使!? く、黒栄がですかっ……!? それはエンゲル的な意味の?! そんな、ありえません! それを言うなら黒栄はむしろ、デーモン、それかクランプス。いえ、それすらおこがましい。もっと黒栄は醜くいグズ。貪りデーモンがいいとこです……」
 なだめたつもりが、もっとやべえ袋小路へ入り込み、なんかぶつぶつ言い始めた黒栄ちゃん。リリ先輩はその顛末を無表情で聞き流し、むッとした目をこちらへ向けた。
「ちょっと。邪魔しないでくれるかしら」
「いや、目の前で急に催眠みたいなことしだすやべー女がいたら止めるでしょ」
「それになに? 黒栄“ちゃん”って。いつのまにそんなに仲良くなったわけ? なるほどね。やっぱりあなたは私みたいな女より、こういうオタサーの姫みたいのがいいってことかしら。それともなに、ロリコンのくせに乳はでかいのが好きなわけ? 最低ね」
 聞かれてたかーーーー。あー死にて。
「いや、そういうんじゃなくて……、言葉の綾というか……。てか、逆に俺が先輩のことリリちゃんとか呼んだらどうですよ? キモいでしょ」
「キモい。たぶん吐くわね。想像しただけでかなり催したわ」
「ひどい!」
 吐くボディランゲージがガチ過ぎて涙が出そう。
 なのに。
「ま、まあ、でも、あなたが呼びたいっていうのなら、我慢してあげるけれど?」
 ……はあ? ほ、ほう。
 いいや、だがしかし!
 ふ、ふん! 今更そんなふうに肢体をもじもじさせてバリ萌えるセックスアピールしながら猫撫で声ととろんとした目でこっちを見つめたって先輩のことなんて全然好きになったりなんかしないんだからね! 勘違いしないでよね!
 それになんだよそのピンクアッシュのセミロング! 今日もかわいいな!(完堕ち)
 という激しい葛藤を経て、俺が平静を装うと、
「いや、いいです。それよりほら、ゲームしましょ」
「なにそれ。……あっそ」
 彼女はつまらなそうに、無表情にそっぽを向いた。

 そうこうするうちにOPムービーは終わり、主人公っぽい人が草原っぽい場所に投げ出され、ゲームがスタートした。どうやら視点は一人称ではなく三人称らしい。
「ふーん。こうやって走るのね」
 そういいながら、リリ先輩がコントローラーを操作すると、主人公は向いていた正規ルートっぽい道に背を向けて、何もない後方へと走り出した。
「え、ええっ、リリせんぱい、どうしてそっちに……」
 百人中百人が向かうであろう正面の一本道を無視するという先輩の奇行に、たぶんこのゲームをそれなりにやり込んでいるのであろう黒栄ちゃんは、困惑。
 だが、
「あのまままっすぐ行ったら、製作者の思うがままに進んでいる感じがして嫌。私はね、誰かに敷かれたレールを進むのが一番嫌いなの」
「か、かっこいいです……!」
 え、ええ……。黒栄ちゃん、騙されないで。なんかそれっぽいこと言ってるけど、この人、単に天邪鬼でイカレポンチな人格破綻者ってだけだから……。
 して、数秒後。
「なにこれ、先が真っ暗だけれど」
「あ、そのままいったら……」
 主人公の目前は、明確に崖。どう見ても落ちたら命を落としそうな暗闇。ゲーム的に言うなら完全なエリア外。絶対行っちゃいけないゾーン。
 なのに……。
「え、なにかしら?」
 哀れにもリリ先輩という魔人に操作されることとなってしまった主人公は、その奈落へと疑いもせず突進していった。
 すると主人公は、物理法則に逆らうなんてファンタジーな能力は持っていなかったらしく、落下。はるか低みへ真っ逆さま。すぐにその姿が見えなくなり、画面は暗天。
 そしてそこには、ばばんと「YOU DIED」の赤文字が刻まれていた。
 ええ……。最初の死が落下死って、それは……。
 それと……、死ぬの早っ! まだ開始一分も経ってないよ???
「はあ? どうして?」
「いや、あんな高いところから落ちたら死ぬでしょ普通!」
「なに? 最初にあんな壮大な世界観を見せつけておいて、こんな簡単に主人公が死ぬっていうの? おかしいじゃない。だったらさっきの映像でドス黒い渦潮みたいな中に飛び込んでいったのはなんだったのよ。穢れた刻印は?」
「あー、あれは演出なんじゃないですか?」
 不服げにしてたくせにちゃんと見てたんですね、OP。
「はあー? なによそれ。詐欺? このゲーム、もしかしてクソゲーなの?」
「そんなことは……」
「え、ええと、確かにオープニングは詐欺のきらいがあります……」
 ええ……。
「ふん。やっぱりクソゲーじゃない。だいたい、名前からして汚れてるし」
 なんか、今日はいつにもましてクレーマーだけど、なに、女の子の日?
「で、でも、めちゃくちゃかっこいいし、抽象的に見えて実は重要なことを言っていたりして、出来はすごくいいのです! あ……、というか、良すぎちゃったんです……。そ、それに、ダティソは人生……。たしかになにくそと思うことは多々……というか不遑枚挙ですが、最後までやってほしいのです……」
 それに比べて、今日も黒栄ちゃんの綺麗なこと。心が洗われるわ。
「そうですよリリ先輩。クソゲーをクソゲーとこき下ろせるのは最後までプレイした人だけです。こんな序盤でクソゲー認定はあんまりですよ。せめてもう少しやってみましょ」
 俺の大好きなゲームを、プレイもせずネタバレだけ読んで叩いてた掲示板のむこうのくそくそうんこ野郎、まーじで許さねえからな?
「うるさいわね……。まあいいわ。そこまで言うのならやってあげる。私、寛大だから」
「あ、ありがとうございます、リリせんぱい!」
 むしろ厚意でやらせてもらっているのはリリ先輩なのだから君が感謝するのはおかしいだろうとも思ったが、また言うとややこしくなりそうなので黙っておいた。

 さて、再度最初のスタート地点からやり直しとなった主人公は、今度こそ正面の道を歩みだした。
 そしてしばらくして、川にかかった橋を渡ると。目の前には趣のある木造の家屋が。
「ひどいあばら家ね。しかもこんな河川の真横に建てるなんて、正気を疑うわ。馬鹿なの? 大雨でも降ったらどうするつもりなのかしら?」
 どうしてコメントがそんなに辛口なんだ……。謎に現実的だし。
「で、なに? これはここに入れってことでいいの?」
 家の扉の前で立ち止まる主人公。
「はい」
「ふうん。じゃ、お邪魔するわよ」
 すると、再びムービーが。
 してその内容は、妖しい雰囲気の洋物魔女のような老婆が、主人公に対し「なんだくっせえ田舎もんが来たと思ったら、とんだ曰くつきのバケモンだぜ。なあ、どうせオメエめてえなろくでなしはじきその呪いに身を蝕まれて人を襲い始めるだろうよ、ぐへへ、ざまーみろ。死ね」(意訳)と、めたくそにけなしてくる、というもの。
「この老害、私にむかって亡者だの呪われてるだのって、喧嘩を売っているの?」
 リリ先輩がそういうのも無理はないかなーってくらいには、失礼な婆さんだった。
 まあ、ダークファンタジーの始まりって感じで情緒はあったけど。
「あらかた、リリ先輩の美貌と若さに嫉妬してるんじゃないすか?」
「へえ、ツクルにしてはいいことを言うじゃない。褒めてあげる」
 さて、ムービーが終わると、キャラクリ――即ち、操作キャラクターの外見や名前、素性などの選択――をすることとなった。
 が、そうして生まれたキャラクターは、最悪、最低、その一言。
 リリ先輩という悪魔が創造をする、という時点で、そうなるのは必然だったのだろう。
 悲しいかな、今回の主人公のお名前、なんと、「フェラ」。
 先輩曰く、主人公がムービーで亡者だと言われていたので、世界一有名な金の亡者、ロック・フェラーからお名前を拝借した、伸ばし棒をどう入力すればいいのかわからなかったのでフェラーがフェラになってしまった、とのこと。
 でも、そこにいた全俺が思った。
 いや、あんた絶対ただ下ネタ入れたかっただけだろ! と。
 しかも、素性という、職業のようなステータスは、黒栄ちゃんがそれだけは止めた方がいいと言っていた「持たざるもの」に決定。
 他の素性は、「騎士」とか「魔術師」とか「聖職者」みたいな、よくある無難なやつなのに、一個だけあった、どう見てもやべえやつ。
 他の素性は、みんな鎧やらローブやらの防具を纏い、剣や杖で武装しているのに、無刀というか、無力というか、大事な所を覆う布以外何も身に着けていない、着の身着のまま未満の、やべえやつ。
 ステータスも、異様に低い。他の素性の二分の一と言っても過言ではない。
 唯一の救いは、性別が女であること。
 それ以外は、ひどい。なんか外見も意図的にブサイクにしてたし。
 こんな人がいたら、確実に人生ハードモードだろう。そんな具合だ。まじで、悲惨。
 
 かくして、冒険が始まった。最悪の旅路が。
 キャラクリ後のムービーが終わるなり、彼女は言う。
「ルキア、これってどうやって攻撃するの?」
「攻撃ですか? 基本的にはR1で弱攻撃、R2で強……」
「R1……、あっ、これね!」
「そうですそうです……って、ああっ! なんてことをするんですかっ!」
 画面上では、先程まで意味深なことを主人公に言ったり、主人公のことを嘲笑したりしていたなんか凄みのある語り部っぽい老婆が、主人公に殴り付けられていた。
「? 私に生意気な口を聞いたクソババアを誅殺しているだけだけれど……」
「で、でも、その人は悪い人じゃないんです……。それにそのままじゃ、死んじゃう……」
 確かに、主人公が無抵抗の老婆を殴るたび、ちょっとずつ体力バーみたいなゲージが減っていっている。微々たるものだが。
「そりゃあそうでしょう。殺る為に殴っているのだから」
 この人、やっぱりサイコパスなのかな?
「ううっ……。」
 打ちひしがれる黒栄ちゃんの代わりに、一応忠告してみる。
「あのー、たぶんそのおばあさん、敵じゃあないと思うんですけど……」
「ふん。女子供ジジババだからって弱者だとは限らないわ。油断は出来無いの。奴等はそうやって小賢しく私達を油断させようと手ぐすね引いて待っているのかもしれない。それで、隙を見せた奴等からやられていくのよ。己以外、何も信じるものは無いと思いなさい」
 なんだそのソルジャーチルドレンへの講習みたいな台詞。
「それにね。この世界はもっと単純みたいよ。……つまり、殴れるんだから敵なのよ!」
「ち、違うんです、このゲームは自由度の高さが売りなんです……。だから味方も殺せてしまうんです……。そしてそれを通してダティソは、行動の責任は自分に伴うということを教えてくれるんです。……そう、つまりダティソは人生なんですね!」
 あれれーー?? 黒栄ちゃーん? 結論が迷子だよーー???
「そ。まあ殺せるってことは死んでも問題ないってことでしょ(キリッ)」
 こいつら……、コミュ障の俺が引くくらい会話が成り立っていない……!
「ま、まあ、一応救済措置はありますけどぉ…………」
 なんかもう黒栄ちゃん泣きそうな目してるし。
「ど、どうなっても知らないですからねっ……」
 なっ……、黒栄ちゃんが闇堕ちしてしまった。そ、そんな……。
 ああ! でもそのちょっと怒った顔、いつもなら絶対しないその顔、かわ過ぎでは?
 ぷくっとしてるそのほっぺ、永久に冷凍保存したいっ! 萌える……っ!
 しかしさすがの雨宮リリ、素知らぬ顔!
「というか、なんなのこのババア。いつになったら死ぬのよ。どういう体力してるわけ? このゲーム会社はバランス調整とかしてないのかしら? ババアでこれなら、この世界の成人女性の体力は、きっと相当なものになってしまうでしょうに」
 たしかに、はっきり言ってこんな一悶着してる間もずっと延々タコ殴られているのに死んでいない画面上の老婆は、異常だ。
「そ、それは、先輩があんな素性を選んだから……。他の素性なら、最初から武器をもってるからもっとダメージがでますもん…………」
「なるほど。素手で戦っているから弱かったのね。たしかに、こんなババアなら、きっと棍棒で殴りでもすれば一発だったのかもしれないわ。惜しいことをしたわね……」
 ぶきやぼうぐはかならずそうびしてください! もっているだけじゃダメですよ!
 ――ということだろう。ま「持たざるもの」だから、装備どころか、持ってすらいないんですけどね、初見さん。
「なら、まだ序盤ですしやり直したほうが……」
「いいえ、それには及ばないわ。私、この「持たざるもの」という響き、気に入ったもの。現実世界では持っているものだし、ゲームでくらい、いつもとは違う自分を楽しみたいわ」
 普通の人は多分真逆のものをゲームに求めてるんだよなあ。
「ふぇ、この、一見頭のおかしくなった人が自暴自棄になっているようにしか見えないプレイに、そんなにも深淵博大な思慮があったとは……。黒栄には思いも寄らないロールプレイ……。か、感動しました! 黒栄、せんぱいの持たざるもの縛り、応援します!」
 いや、たぶん前者だよ?
「ふふふ、ありがとう。ルキア」
 しかし、先輩はそう言うと、何度も俺を虜にしてきたあの笑みを、黒栄ちゃんに向けた。
 ああ、こういうの、ジゴロの微笑みって言うんだろうなあ。
「えへへ……」
 なんともまあ無事やられてしまった黒栄ちゃんは、うっとりと、そんな声を漏らした。
 
 さあ、そんな美しい女性同士の関係性が結ばれている間にもフェラに殴られ続けていた老婆は、いよいよその拳をボディにもらった回数が五十回に達するかなという頃合で、落命!
「ふう、やったわ。じゃ、次に進みましょうか」
 こうして、フェラがこのゲームで一番にイカせた敵は、敵ではなく、おそらくはプレイヤーに協力的な立場にあるNPC老婆となったのであった。合掌!

 そんなこんなで、フェラの冒険は、絶えぬ流血で彩られていく。
 例えば、老婆殺害後も、フェラはしばらく進んで拠点っぽいはじまりの村につくなり、村中のNPCを殺して回り、確実に殺しちゃいけなそうな鍛冶屋っぽいおじさんや巫女っぽいお姉さんまでをぶっ殺した。
「このゲーム、いつになったら敵がでてくるのかしら?」
 などとたわけたことを言いながら、ばっさばっさとそのへんで拾ったダガーを振るって人間を殺していく彼女は、完全に、こないだのドミニオンで『魔女』によっておかしくなってしまった猪俣さんのようなギラギラとした目付きになっていた。
 うん、リリ先輩も、疲れてるんやなって。
 無論、村人も無抵抗ではなく、みな反撃してきて、あまりアクションゲームが上手ではないらしいリリ先輩は、何度もフェラを敗北(=YOU DIED)へと導いてしまったのだが、その度に彼女は何度でも蘇り、しなくてもいい闘争に身を投じていったのである。
 村人の装備を全て追い剥ぎ終えるまで、何度も。
 というか、こんなことで二十回も死亡しないで欲しい。死にすぎィ!
 黒栄ちゃんは、
「あ、あわわわ……、ひもちゃんを殺すなんて……。信じられません……。な、なんて取り返しのつかないことを……。せんぱいはもう、既に亡者だとでもいうのですか…………。」
 と、呆然とし、絶句していた。
「これでこの村は私のものね。ええ。今日からこの村を、フェラタウンとしましょう!」
「いやこれ、絶対そういうゲームじゃねえから!」
「そうなの? というかもう、やることがないのだけど、もしかして私、このゲーム、クリアしちゃったのかしら?」
「ちがいますよお……! というか、まだなにもしてません……。これからです……」
 その言葉通り、本当の地獄は、ここから始まるのだった。
 
 しかして、数時間後。
「やっぱりクソゲーじゃねえか!!!」
 そんな俺の咆哮が、リリ先輩の一人暮らし先のアパートの一室へと響く。
 そう、時刻只今午前零時、未明。
 なんと俺は、超絶美人なサークルの先輩の自室に、上がり込んでいた。
 しかも、二人きり。
 なぜ俺がそんなワン童貞喪失な未曾有の事態に陥ったのかといえば、それは……。

 大学が二十二時には締まる、つまり、それが原因だった。
 
 あの後、マップを攻略し、初めてきちんとした敵や、ボスと遭遇したリリ先輩。
 最初に攻略することとなったエリアの名称は、フロム大灯台。その立派な建造物の半分以上が水没してしまったといった趣の、宗教施設群だ。なんとも壮観で、素晴らしいステージである。沈みゆく教会のステンドグラスや、海水に差し込む陽光が、幻想的。
 数百年後、水面が上昇して人類が滅びゆき、モン・サン=ミシェルがもっと深く海に浸かったら、こんな感じになるのかもしれない。
 しかし、そんな思わずうっとりとするような情景のその地での冒険は順調とは言えず、フェラは何度も死ぬこととなった。
 このゲーム、やはり噂通りの相当に硬派で鬼畜難易度なガチマゾ用死にゲーらしい。
 そのうち、
「さすがにしんどいわ……。死んだら交代で、ツクルも一緒にやりましょう?」
 あまりの死亡回数に心が折れそうになったらしいリリ先輩は、それでもここまできたらもう引きたくはないらしく、折衷案として、俺に同じ苦しみを味わうことを強いた。彼女も出来れば全て一人で攻略したかったのだろうが、背に腹は代えられぬといった様子だ。
 わかるなあ。自分一人で何かを成し遂げた喜びは格別だもの。けれども、同時に、苦しみとは一人で舐めるには辛いものだ。ぼっちの身ゆえ、よくわかる。
 それに、俺も傍から見ているだけでは、色々ともどかしかったので、快諾。
「わかりましたー。俺もちょっとやってみたかったんですよねー」
 しかし、このダティソ、頭で想定していたような、生易しいドラクエ染みたゲームなどではなかった。俺は、軽く放ったこの一言を、後でどれほど後悔したことだろう。
 これはもはや、ゲームではない。苦行だ。

「はああああああああああああああああああ????? なーーーーんでこんな序盤のモブがべらぼうに強いねん??? バグかーーーー???? 調整不足かーーー??? 算数がわかんないのかなーーー??? ねーーー、デバックってわかりまちゅかー???」
 序盤のステージのセーブポイント真横にいるボスでもなんでもないノーマルエネミーの巨人騎士にいきなりボコボコにされ、五連続くらいそいつに殺された俺は、発狂した。
 こちらの火力は雀の涙で、何回殴ろうが相手はピンピンしてるのに、自分は相手に二回斬られたら負けIS何?
「く、倉本せんぱい! 心をつよくもってください! そういうゲームなんです! 難しかったら黒栄がアドバイスしますから!」
 普段ならこの黒栄ちゃんの懸命な声一つで、正気に戻ったのだろうが、このゲームの凶悪さは、黒栄ちゃんの天使っぷりを凌駕していた。まさに、悪魔的・ゲーム。故に俺は、彼女に声をかけられただけでなく、肩までをその柔らかな両手で優しく叩かれているというのに、動じず、
「いやいやいや、これ、そういう次元じゃないよね。だってもうおかしいもん。一対一なのに俺まけちゃってるしさ。え、これは俺が下手なの? そういうこと?」
 しかもこの強モブ、リリ先輩のプレイを見ているときに見えた範囲だけで、ボスのいるエリアに行くまでに十体くらい居たよ???? What????
「ええと、それは……。ま、まあ確かに、そこの敵は序盤にしては強すぎるなあと黒栄も思います。で、でもそっちは本来最初に行くルートじゃないし……、それに、ただでさえ装備もレベルも弱い「持たざるもの」を選んだのに、主人公をレベルアップさせてくれるひもちゃんを、こ、殺しちゃったし……。しかも、難易度が上がっちゃう誓約まで………」
 あ、なんか黒栄ちゃんがまた涙目に……。
 ごめん、言い過ぎた。というか、そうだわ、これ悪いのは黒栄ちゃんでも、この頭のおかしい難易度のゲームをつくった制作会社でもない、リリ先輩だ!!
 しかし、彼女はあくまでふてぶてしく。
「ねえ、ルキア。それはつまり、私が悪いと言いたいの?」
「そ、く、黒栄はそんなつもりじゃ…………」
「あなた言ったわよね? このゲームは自由なのが売りだって。だから私はそれにしたがって自由に楽しんだだけ。なにか間違っているかしら?」
「い、いえ……。た、ただ、結果的にその、対価が……。自業自得に……」
 自分の大好きなゲームを勧めたつもりがいつの間にやらこんな空気になってしまった黒栄ちゃんがかわいそ過ぎたのと、この理不尽難易度への苛立ちも込めて、俺も、訴える。
「いい加減認めませんか? これ、ぶっちゃけデータをやり直したほうがいいレベルでリリ先輩はやらかしちまってたんだってこと」
 けれど。
「時にツクル、あなたはそんな中途半端に生まれてしまい、いつからか社会に適合できなくなった自分の人生に、誇りを持っているかしら? 後悔のない選択をしてきた?」
「はあ? なんですか突然?」
 ゲームのやりすぎでおかしくなったのかな?
 ところが彼女は、俺にその澄んだ美しい横長の目を合わせ、肩に手をそっと置き、言い聞かせるように。
「後悔は。たぶん。してるでしょうね。もっといい人生が良かったなと思っていることでしょう。こんな完璧超人に生まれてしまった私でさえそうなんだもの、あなただったらなおさらそうに決まっているわ」
 人の話を遮ってまで人の人生の否定をする人を初めて見た。
 でも、不思議と嫌な気はしない。それどころか、彼女の語り口は、心地いい。
「でもね、きっと、それでもね。あなたはきっと、自分の生き方には、誇りを持っている。確固たる、揺るぎない、ね。たとえ、それが、どんなに醜いものであったとしても。そしてだからこそ、あなたはこのサークルに入った。私は、あなたを選んだ」
 リリ先輩は、そう言って俺を指差すと、にっこりと笑った。女神の様に。
 ん、なにこれ? 深イイ話?
 俺がきょとんとする間に、彼女はコントローラーを握り、フェラは走り出す。
「ルキアは言ったわ、ダティソは人生なんだと。だとしたら、どう? そんな簡単にやり直していいものかしら? あなたは自分の選んだ選択を、生きた証を、そんなに簡単にすてたりしない人だわ。私も、そう。そして私は、この醜くて生まれも最悪なフェラに、それでもこの呪われた世界を救って欲しいの。ゲームの中の話とは言え、私は真剣よ。しかもそのフェラの勇姿は、きっと醜いあなたを励ますわ。だからこそ私達は負けられない」
 そして、フェラはボスエリアに到達するまでに己の進行の邪魔をしてくる全十体の巨人騎士の猛攻をくぐり抜け、疾走。ひたすらに戦闘を避け、ひたすらにダッシュ。
 その、常時敵に背を向け続けるるような非英雄的逃走劇は、およそこの手のRPGで主人公がするような勇者的行いとは言い難かったが、思い出してみてほしい。このゲームの主人公の名は、フェラ。醜い出自の、持たざるもの。故に、彼女がする冒険の作法としては、このコソ泥が如き騎士道など糞食らえな戦法が、最もお似合いである様に感じられた。
「ふっ、これが彼女の生き様よ。見なさい、ツクル」
 しかして、フェラはボス前の靄のような白霧をくぐり抜け、このエリアのボスと対面していた。これまでの巨人騎士よりも、より大きく、立派な大盾とハルバードを装備した、一目で格が違うとわかる立派な上級巨人騎士と。
 そして刻まれる、画面下のボス用と思われる体力バーの上部「竜騎兵」、その三文字。
 言われずともわかる、それがこの強敵の名であろうことは!
 フェラは、眼前の自身の背丈の二倍はあろうかという強者に向け、これまでの及び腰が嘘だったかのように、果敢に立ち向かっていった……。
 
 ――三秒後。
「さあ、コントローラーを握りなさい、ツクル。あの鎧騎士を倒すのよ!」
 彼女はその手に固く握り締めていたものをこちらへ手渡した。
 画面に浮かぶのは例のアレ。「YOU DIED」。
 フェラは、一撃で死んだ……。それも、初撃で……。
 リリ先輩、あなた、逃げるのはそこそこ上手いのに、戦うの、下手すぎません……?

 あの絶望的事件から一時間、黒栄ちゃんは門限があるとかで、お家に帰った。
 大学生なのに未だ門限があるのかわいすぎるし、それってつまり夜遅くに外出不可ってことだからマジ黒栄ちゃん信用の塊。なにそれ、軽率に恋しちゃう。
 しかし、このダーティーな夜は、明けない。
 門限のない俺達の闘いは、その更に一時間後も未だ続いていた。
「あああああああ!!! なんなんだよこの鎧人間! しね! しね! おもんな!!!」
 黒栄ちゃんの厚意により、彼女が帰宅した後もPS4を借りることが可能となった我々は、大学を出なくてはならぬギリギリまで、粘り続けていたのだ。
 そうして、竜騎兵への怨嗟の念が、ひとしきり部室に溜まった頃、彼女はふと、呟いた。
「ねえ、ツクル。今日は金曜日よね?」
「え、なんですか急に。たしかにそうですけど」
「つまり、明日は暇ということね?」
「まあ、はい。残念ながら」
 学生だしね。明日はバイトもイベントもない。
「でしょうね。じゃあ、今日は私の家に泊まっていきなさいな」
「あ、はい。わかりましたー」
「じゃあ、もうそろそろ出ないと大学出禁になるし、行くわよ」
「あっはい。………………って、え?」
 ん? なんかさっき、リリ先輩、おかしなことを言わなかったか?
「なにをボケっとしているの? 早く片付けてちょうだい。というか、これはどうすれば電源を切れるのかしら? コンセントを抜けばいいの?」
「いや、直で抜くのはまずいでしょ! ……ってだからそうじゃなくてですね、」
「なにをブツブツ言っているのかしら」
「えっ、だっていいんですか? その、ええと、だって、異性、ですよね?」
 あまりの事態にテンパりすぎて、言葉のチョイスのセンスがゴミ。
「なら、あなたはいいの? このままこの、自分の意志で戦っているかすら定かでないただでかいだけのガラクタ鎧野郎に負けたままで。敗北という事実から目を背けたまま家に逃げ帰り床に着いたところで、気持ちよく眠れるわけ?」
「いや……だめです!! こいつに負けっぱなしでいるくらいなら、プライドを捨ててウェイに媚を売りながらグループ学習をするほうが五千兆倍マシだ!」
 こう見えて負けっぱなしは嫌なのです。そのせいで高校時代は暗黒の青春を過ごすこととなったけど、それはまた別の話。
「そうでしょう、そうでしょう。よく言ったわ、ツクル。私はあなたならそう言うはずだと、信じていたもの。というわけで、行くわよ」
 というわけで、いった。

 法盟大学から徒歩十五分、そんななかなかに神立地な場所に、彼女の住処はあった。
 学生が住むには、やや小奇麗過ぎるのでは? っていうくらいの、マンション。閑静な住宅街の中にひっそりと竚むその十階建てくらいの建物に、俺は心臓が破裂しそうになるのを必死で宥めていた。気分は、「し、鎮まれ、俺の右手ェ……」って感じだ。
 ここにくるまでに、夜の街をありえん美人な先輩と二人きりで歩くという境遇に何度も緊張とか期待とかなんか色々で死にそうになっていたが、そのドキドキが最高潮に達したといったところである。
 いっそこのまま気絶してこの張り詰めるような心地から解放されたいという気持ちと、これはなんというか下世話な話ワンチャンあるのではムクムクみたいな気持ちがせめぎ合い、けれど俺はなぜかその二つを第三者目線で眺めながら、「や、ぼくはくるみんの夫なので」と無心で念じ、それらをごまかしていた。
 しかし、彼女は、そんな俺の緊張など手に取るようにわかっていたらしく、
「ええと、先に言っておくけれど、私の家で射精したらそれがどんな経緯であれ900万支払ってもらうからね?」
 などと、絶望的にときめかない下ネタを口にした。
 なんか、この人はいつも通りなのに、一人でに浮き足立ってる自分がバカみたいだった。
 
 さて、そうこうして入った彼女の部屋は、本来ならばきっと綺麗なワンルームだったのだろうが、なんというか、ひどかった。
「う、うわあ……」
 ゴミ屋敷ってわけではないけれど、汚部屋と言っても過言ではないくらいには。
 うーん、なんて言えばいいのだろう、場末のヤリ部屋? ナマポアル中のねぐら? だめだ、なんか最低だ。でもまあ、そんな感じ。 
 床には大量の空の酒瓶や空き缶が散乱し、あるいは壁際にそれっぽく並べられている。そしてその隙間を縫うように……下着やら(あの、隠しておいてくれません?)、寝巻きやらの衣服とプリント類がやりたい放題になっていた。
 しかも、おそらくはこの部屋に一つしかない窓であるテラス戸は、酒瓶がこれでもかと積まれ飾られたでっかいキャビネットに、その殆どを塞がれている。
 今は夜だからいいけど、昼とかどうしてるんだろう……。
 てか、女の人の部屋ってさ、もっとこう、可愛いものとかあるのかなって、期待してたよね。まあ、逆にリリ先輩がそんな部屋に住んでたら、普段の尖った感じとのギャップ萌えで俺が勝手に興奮死してたろうから逆によかったまであるけども。
 あと、全く関係ないけど未婚三十路女性声優さんには猫を飼っていて欲しい!(ドン!)
 そして、肝心のリリ先輩は、
「ツクルはビールとか飲む~? 強い、弱いー?」
 部屋に着くなりカバンを放り投げてそう言いながら、大量の洗い物がぎゅうっぎゅうに放置されておよそ使用不可能となっているシンクがそびえる悍ましいキッチンへ、真っ先に向かっていった。
「あんま飲んだことないんでわかんないです」
 今年成人したばっかだし。
「ふーん、まあいいわ。じゃあ取り敢えず飲んでおきなさい」
 彼女はそう言って冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、にっこり笑って差し出す。
「ありがとうございます」
「んじゃ、かんぱーい!」
「か、かんぱーい」
 まだ飲んでもないのにきもちハイテンションなリリ先輩にちょっと気圧されながらも、ゴクリ。ぶっちゃけ苦いという感想しか沸かなかったが、目の前の先輩がぐうかわいいのと、ゴクゴク鳴る嚥下音がどちゃシコえっちだったので、結果、おいしかった。
「ぷはーーー! 最高ね! このまま寝ちゃいたいくらい!」
 え? 寝る? ねる……? ねる……だと……っ?! 
 つまりここでいう寝るとはつまり第一義か第二義か。それこそが今は重要だ。嗚呼、言語の不可能性よ。だが、だがしかしだ、ここでいう寝るが仮に第二義であった場合、僕は今日というこの日を境に生まれ変わりもはや僕ではない僕、新たな自己として再構築、事物存在から道具存在に成り下がるといことにほかならない! ゾルゲに身を窶しぼっちという矜持をなくしたこの俺は彼女との未来に自己を投企し主体を捨てたダスマンと化して広漠たる中間の存在など忘却し家庭を持つことが最善だなどと不抜けた真理に身を委ね快楽的性の生得観念によって下半身の全自動的ピストン運動をする動物的機械人間に……。
「やだー、ツクル~。野獣の目になってるぞ~」
 ハッ、俺は一体何を!?
 俺は、リリ先輩のそんなふにゃけた声によって覚醒した。
「も~、センパイの色香にやられちゃったのかにゃ~?」
 がばっ。
 彼女はなんと、俺の背後から子泣き爺のようにおぶさる形で抱きついてきた。
「ひィっ!」
 なんだこれ?! 不可解すぎる状況に、恐怖さえ覚えた。一瞬、実は自分が酒にありえん弱い体質で酔って幻覚でも見てるんじゃないかと思ったくらいだ。
「えー、なにー? その声―? こんなにかわいーセンパイが抱きついてんだぞー? もっと、こう、あるでしょ~?」
「ていうか、なんなんですか先輩、酔っ払ってんですか?」
 まるで、職場では自分に滅法厳しい女上司が二人きりになった途端彼氏である自分にべた甘えてくるという、王道を行く展開のようなリリ先輩の豹変っぷりに、胸のバクバクが止まらない。おま、そういうのマジでずるやぞ……。
「そんなんじゃないよー。まだ二杯目え―。ツクルもいる~?」
「え、いや、まだあまってるんで……むぐっ!」
 甘い声に耳朶を犯され、判断力を失いかけていたところ、アホみたいに開けていた口へ、無理矢理酒を流し込まれた。
「ほれほれー、もっと飲めー」
「いや、ちょ、間接キス……」
 は、はじめての女性との間接キス、奪われちゃった……。
 そんな俺のときめきをあざ笑う、泥棒猫。
「あっはは、この歳でそんなの気にしてんの? だから童貞なんだぞ~。えへへ~」
「よ、余計なお世話です!」
 え、というかこの年頃の女性はつまりそういうの気にしないってこと?? は? だったら俺と同い年のくるみんはそういうの気にしないってこと??? え? は? それマジ?? え、じゃあくるみんと間接キスしたい……(ダメです)。
 いや逆に考えるんだ、今の文脈で言うと、間接キスを気にする人間は性に疎い。つまり、間接キスを気にする女性は処女。よってくるみんは間接キスを気にするから(盲信)(出典不明)――処女(願望)(優しい世界)(ご報告よさらば)。QED。
 やった!
 などと俺が意味不明かつ死んだほうがいい思考で現実逃避していると。
 いつの間にか、リリ先輩のまとう空気が、変わっていた。
 俺の肩から腹部にかけて絡みつく彼女の細い腕が、ぎゅっと、熱を帯びる。
「じゃ、ほんとにキスしたげよっか?」
「へ?」
 耳にかかった熱い吐息と、首筋を撫でる頬の肌触りに、なにも考えられなくなる。
 鼻から入ってくる空気が、頭の中の、なにか大事な部分を、めちゃくちゃにどうしようもなくしてしまう。いい匂いで、おかしくなりそうだ。
 服従なんてしていないのに、支配されていく。
 理性をつなぎとめている糸が、いまにもぷつんと切れてしまいそう……。
「私のこと、好きって言ったらいいよ。リリセンパイ、大好きれふ、って」
「いやいやいやいや、からかわないでくださいよ」
 最後の防波堤が、なんとかそんな言葉を紡いでくれた。
「はー??? 私は本気だぞ~?? こんな機会一生ないんだぞ~??」
 つうっと、細長い指が肌を撫でる、俺にうんと言えと、指揮するように。
 思わず、言ってしまった。
「え、マジすか?」
「マジだよお~」
 はあ、そんな甘い声、無理だって……。なによりいま、二人きり……。
「ほらほら~、早く言わないと締め切っちゃうよ~??」
 彼女は、「もしかして俺はいま脳髄に電極を直接差し込まれてるのかな?」と錯覚してしまうくらいに抗いようのない甘美に過ぎる小悪魔的な嬌声で、「さん、にい、いち、」と、カウントダウンを始めた。
 そんで目の前には、舌をいたずらっぽく出したかわいさの極みみたいな顔面。
 もう、なんでもいいや。
 叫んだ。
「リリ先輩、大好きです!!!」
「じゃ、目、閉じて?」
 閉じた。真っ暗だ。
 何も見えない、わからない、というのは得てして不安を呼ぶ。
 そして不安というのは、異性と共有することで、興奮になっ――
「いたっ!」
 額にはしった痛み(たぶんデコピン)に、反射的に瞳を開く。
 したらば、そこには腹を抱えて笑う一人の悪女の姿が投影された。
「ふっ、あは、あはははははははは!!! もう、ツクルってば本当にどうしようもない残念童貞ね。まったく、そんなに私とキスがしたかったの?」
 蔑み嘲るような目がこちらを見る。
 が。

「………………………………………………………は?」
「あ、ごめんなさい。さすがにそこまで傷つくとは思ってなかったわ。ごめんね?」
 あまりの俺の心の凍てつきに、外道リリ先輩の心にも謝意が誕生したらしい。
「え、ああ、はい。また一つ僕の人間不信が加速しましたけど、まあいいです。別に。はい。勘違いってオタクの特権なんで。オタクってばキモいんで」
 思い出すなあ、中学校の時、俺に毎日話しかけてくれてた山下さん。元気にしてるかな。どうせ俺のことなんてもう覚えてもなくて、今頃経験人数がふた桁超えてたりするんだろうなあ。なんだろう、どうして人間って有性生殖なのかな。雌雄の区別があるのかな。全部同個体でよくない? 男いらなくない? 美少女さえいればいい!
 あー、生まれ変わったら女性の男性器になりたい(意味不明)。
 って、いかんいかん。久しぶりに闇が……。
 だが、はたしてその元凶は、俺の死んだ目を見て、逆ギレ。
「もう、なんなの! だいたいおかしいとか思わなかったのかしら? この私がそんなたったビール一缶飲んだくらいであそこまで出来上がるわけ無いでしょう! というか、もしそんなに酒が弱い癖に男を自宅に連れ込んで自分からいきなり酒飲み出すって、私どんだけ痴女なのって話になるじゃない!」
 そんな現実を持ち込まないで欲しい。男は女に、いくつになっても幻想を抱きがちなんだもの。オトメチックなのは乙女だけじゃないんですよ?
「いや、そうなのかなって。やっぱメンヘラ痴女だったのかなって」
「殺す! 殺してやるわ!」
 ごめん、確かに幻想の中身汚すぎたわ。幻想は幻想でもうんこでできた幻想だったわ。
 でも、だからって、それは人をヘッドロックしていい理由にはならないと思うの。
「いた、いたたたた! どうしてそうなるんですか! 元はと言えば先輩が蒔いた種なのにィ! いた、痛い! 離して!」
 俺は彼女のこの細い腕の中に、なぜここまでの力が込められているのだろうと思いながら、彼女に首を絞められていた。
「なーにが「痛い、離して、」よ。そんなこと言って、こうしてるあいだにも、「あ、先輩いい匂いだなあ」とか、「おっぱい、当たってる……」とか思ってるくせに!」
 な、なぜそれを!? じゃ、じゃあ、おっぱいってそんな大きくなくても中々に心地良い感触を与えてくれるんだなって思っていることもバレているというのかァッッッ!!?
「そ、それは確かにそうですけども! それでも痛いものは痛いんじゃい!」
「うるさい! 世の中の男の七割は金を払わないとこんなことさえしてもらえないのだから、感謝しながら私のストレス発散に付き合いなさい!」
 あ、よかった。そっちはバレてなさそう。
 ま、でもそれはそれとして。
「いや、そのりくつはおかしいいいいいいいいいいい!!」
 結論。アルコールはトラブルの元なので気をつけよう。間違えても女の子を泥酔させてTo LOVEる、なんて期待してはいけないぞ(戒め)。

 ところで、俺はリリ先輩と性的合意をするためにここへやってきたわけではない。
 てなわけで、やいのやいのとひとしきり暴れた後、俺達はダティソ攻略へと取り掛かる。
 そして、この頃になると、二人の間で役割分担がなされつつあった。
 その理由は話すと長い。だが、落ち着いて聞いて欲しい。
 さて、まずこのゲーム、ボスに挑むためには、基本的にリスポーン地点である拠点からそこそこ距離のあるボスエリアまで、毎回己で歩いていかなければならない。しかし、リスポーンされるのは主人公であるフェラだけでなく、エネミーも一緒なのだ。
 つまり、ボスに挑むためには、毎回、ボスエリアまでの道に立ち塞がるエネミー、全十体を、倒すor避けることに成功しなければならない。言い換えれば、ボスと戦うために、毎回ダンジョンの入口からボスのいる最深部まで進まなければならないのだ。当然、コンティニューなどの軟派な代物は存在しない。
 故に、ボスエリアに辿り着くだけでも、結構しんどいのだ。俺なんて、三回に一回くらいしかボスまで行けない始末。
 そして、そこにやっとの思いでついたとしても、たぶん百回くらい切りつけないと死なない厨ボス、竜騎兵が俺達をワンパンでぶち殺してくる。
 しかも、だからといって逃げ回っていると、円形闘技場っぽい小さな戦場の周囲を覆っている落下地点という名の禁則領域(なーんでこんなもんがあるんですかねえ? しね?)にぽちゃりして、無事「YOU DIED」。
「やっぱりクソゲーじゃねえか!!!」
 こういうわけである。
 だが、そこで俺達はめげなかった。戦略を練ったのである。
 さっきの説明でもあったように、ボスを倒すまでに必要な工程は二つある。
 ボス部屋まで辿り着くこと、ボスを倒すこと、この二つだ。
 よって、俺達はそこを分業制とした。そう、江戸時代の工場製手工業に学んだのである。
 内容はいたってシンプル。リリ先輩がボス前までを走り抜け、俺がボスと戦う。完璧なマニュファクチュア。お互いの攻略ポイントを分離し、それそれが自分の担当技術へと特化して当たることで、お互いの技量が無駄なく上昇したのだ(そもそも、一人用ゲームを二人で攻略しているこの事態が間違っているとかいう、元も子もないクレームはNG)。
 それによって、リリ先輩は道中で死亡することは十回に一回くらいに減ったし、俺もボスの体力を安定して五割程度は削れるようになった。
 しかし、ここに至るまでに、二時間かかった。
 さっき時計見たら、普通に日付変わってて絶望して以来、時計を意図的に見ないようにしているから、もしかしたら本当はもっと経っているのかもしれないけど。
「いいわよ、ツクル、その調子……、あっ、危ない! ……ふう。」
 運び屋としての役目を果たし、俺にコントローラーを譲ったリリ先輩は、そんな指示厨みたいなことを言いながら、呑気に焼酎を呑んでいる。ロックで。銘柄は黒霧島。
 なんかさっき、「黒と霧ってのがこのゲームっぽいわね」みたいなよくわからんことを言って呑みだしたのだ。こじつけ方が完全にオタクのそれで草。黒霧島さんサイドはキレていい。
 ちなみに、画面ではフェラたそが小さなダガーで竜騎兵をちびちびと切りつけてはその大振りな攻撃を回避、というくっそ地味なループ染みた光景が繰り広げられている。
 百回近くこいつに殺されてわかったことだが、さすがに序盤のボスなだけあって、一応モーションのパターンは少なく単調なようだ。アクションゲームが下手過ぎてノベルゲーばかりやるようになった俺でも、段々動きを見切れるようになるくらいにはわかりやすい。
 しかし、それでも、一つミスしただけで即死、というのはあまりに大きすぎる関門で。毎回体力を削り切る前にこちらの集中力が切れ、負ける。
 けれど、今回は、いけるかもしれない……。
 なぜなら――
 そう、今さっき、敵の残存体力が、残り一割を切った!
 初めての展開に、身体が熱くなる。
 すると。
「つ、ツクル……、これ、あと十回くらい切り刻めば……」
 彼女が背後からそう言ってくる声が聞こえたと思ったら、俺の頭頂部にちょこんと、そ、その綺麗な(といっても今は画面に集中してるから見れないんだけど)小顔を載せてきやがった……! な、なんか他の部位もあちこち当たってるし……。体の熱が増してしまう。
「は、はい……」
 くっ、なんてことしてくれやがるんだ雨宮リリ!!
 別に他意はないんだろうが、こんな一つの操作ミスが死を招くようなタイミングでそんな童貞が動揺するようなことをしないでくれ!!!
「あっ! 当たるっ! よけて、よけて!」
 上段からハルバードを振り下ろそうとする竜騎兵の姿を見て、そう叫ぶ先輩。
 だが、言わせて欲しい、そんなことは俺かてわかっているし、当たってんのはお前の艶かしい肢体と綺麗なお手々じゃい! と。
「ふう、よかったあ……」
 敵の一撃をすんでのところでかわしたフェラたそを見て、安堵の声を漏らす先輩。
 けれど、俺はまだ、安心するわけにはいかない。
 相手がハルバードを振るった後の一瞬の硬直をついてダガーをひと振り、距離を取る。
 そして竜騎兵が再び得物を振りかぶったのを見て、⇒×、R1。
 するとフェラたそはローリングで敵の叩き付けをかわし、また一発、反撃。
「はあ、はあ……」
 まるで、剣客が命懸けの斬り合いをしているような気分だ。
 一発もらったら負けるという緊迫感と、あと数発入れれば勝てるという極限状況に、精神が張り詰めに張り詰められて吐きそうだし、胸がジェットコースター乗った時に感じるGのような圧迫感まで感じ始めた。
 しかも、その上、リアル世界ではめっちゃかわいい先輩が体を俺に寄り添わせているわけで、ドキドキが止まらない。
 なんだこの状況。胸いてえし体温の上昇と冷や汗は止まらねえしで、過負荷やばすぎてこれ後十分くらい続けてたら俺、死ぬんじゃないかな?
「よし、いいわよ、その調子……」
 彼女の言葉通り、再度敵の身に刃を入れたフェラたそ。
 たぶんこれで、あと、1、2回攻撃すれば、勝てる。
 今、竜騎兵は、なんの予備動作もしていない。ゆえに、今こちらが動き出すのは危険。次、奴がそうした動きを見せ、隙を見せたたところを、突く。
 動いた! よし、これをかわして……、
 なのに――
「ツクル、あなたがこのクソ鎧野郎に勝った暁には、ご褒美として今私が履いているパンツを見せてあげてもいい。だから、絶対勝つのよ。わかった?」
 ん、この女、今なんつった?
「え、……は、……マ?」
 思考が、止まる。
「って、バカ! なに固まっているの!? 早く避けて! 早く!」
「あっ……………………」
 止まったのは思考だけではなかった。
 画面の中では、無操作状態となったフェラたそが、無抵抗で一槍の下に屠られていた。
 秒で溶ける右上の生命力バー。死は、明白だった。
「YOU DIED」。
 そこには、これまで嫌というほど見てきたあれと同じ、無慈悲な横文字だけがあった。
「「……………………………………。。。」」
 それを呆然と眺める俺達。言葉さえ浮かばぬ暗黒。
 だが、次の瞬間。二人は。
「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」
 コントローラーなどうっちゃって、示し合わせたかのように同じタイミングでばっと立ち上がると、地中から初めて引き抜かれたマンドラゴラの様に猟奇的奇声を上げながら手を取り合ってぐるぐる回り、謎の舞を舞った。
 そしてそれを息が切れるまで続けた後、バタッと床に倒れ伏し、これまた奇声を上げながらごろごろと転がり、駄々を捏ねる子供のように泣きながらじたばた暴れのたうつ。
「はーーーーーーーーーーークソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ!!!!」
 更に、リリ先輩なんて、万年床っぽい布団へダイブすると、もうその美貌からは想像もつかない人外行動をとり始めた。
 デスボイスみたいな声を上げながら、びったんびったんと、水揚げされた活きのいい魚のモノマネみたいなことをしだしたんだ。なんだろう、この世の地獄だなと思った。
 そんな感じで、僕達は、やり場のない怒りと、実りそうだった六時間の成果があっさりと消えたことへの絶望を、言葉を交わすことなくしばらくの間消化していた。
 そうして、リリ先輩の枕へのヘドバン回数が大台に乗ろうとしていた、その時。
 カァッ! と目を見開いたかと思うと、そのかわいそうな枕をこちらへめがけ投げつけてきた(こんな時になんだが、いい匂いでした!)。
 そしてそのままこちらへ歩み寄ると、床に寝転がる俺に覆いかぶさり、殴りかかってきた(もちろん本体も、いい匂いです!)。
「ばか! ばか! ばかなの? ツクル! あと一発、あと一発だったというのに! なんで! なんで、そこでやられちゃうのよ! ばか! ほんっとーーーにばか!!!」
 ばかという度に殴りかかってくる彼女の拳は、ガチの拳で、よくある「ばかばかばかー(ぽこぽこ)」みたいなかわいいもんじゃまるでなかったので、俺はさっきの失態の責任を取らされて、このまま殺されるんじゃないかと思った。
 なにせ彼女の目は、極度の疲労と怒りで、血走っている。
 俺は、必死に弁明した。
「いや、それはこっちの台詞ですよ!! 人が集中してる時になんて爆弾ぶちこみやがったんですか!! あれがなければ絶対勝ってたでしょ!」
「なによ、あなたが頑張っててえらいなと思ったから、良かれと思っていい思いをさせてあげようとしたのに! そんな言い方ってないじゃない!! ならあなたは私のせいで負けったていうの!?!」
「はい!!!(威圧)」
 逆にそれ以外に何があるんですかね?!
「ふーん、そう。じゃあなによ? あなたは私のパンツなんてどうでもいいわけ?」
「いや、それはとこれとは話が別です! 創、気になります!(迫真)」
 どうでもいいわけねえだろうが!!!! だからこそ気を取られたんやぞ!!!
 怒りに身を打ち震わせていると、
「はいはーい、ツクルくんは自分に正直でえらいでちゅねー。そんなえらいこにはお姉さんが頭をナデナデしてあげちゃうぞー? それーいいこいいこー」
 人の腹の上に騎乗位で跨りながら焼酎を瓶から直でラッパ飲みし始めやがったリリ先輩に、頭を撫でられた。
「うわああああああああああ!!! バブみで話を逸らすなああああああああ!!!」
 とりあえず言えるのは、リリ先輩のマンションの、壁が厚くて、よかった。

 そして。先の敗戦から、実に三時間後。
 このゲームを開始してからで考えると、幾星霜。ついに、その時はやってきた。
 ああ、これまで、なんとも長い道のりだった。やっと、もう一度チャンスがやって来た。
 俺達は今、ようやく。今度こそ、最後の一撃を――。

 思えば、あれから色んなことがあった。

 竜騎兵二マケ 竜騎兵二マケ 道中モブニモ落下死ニモマケル持たざるものヲ貫キ
 市ヶ谷カラ徒歩拾伍分ノワンルームノ酒蔵二タムロイ
「もういいわ、データを作り直しましょう」という絶望のリリ先輩あれば、「ここで諦めたら今までの努力はなんだったんですか」と言って励起してやり、
「もういいです。黒栄ちゃんが言ってた通り、毒や遠距離攻撃に頼りましょう」という姑息のツクルあれば、「今更そんな卑怯な手段で勝って、あなたは果たしてそれでいいの? ていうか、また“ちゃん”づけ……?」と言って正気に戻し、
「せめて盾くらい、使ってもいいんじゃないかしら?」という妥協しそうなリリ先輩あれば、「そもそも持たざるものってステ低くてまともな盾すら、持てないんですよ。それと、今そういう関係ない話するのやめません?」と言い、
「やばい、もう寝そうなんですけど」という睡魔のツクルがあれば「今夜は寝かさないわよ? ……それと、ルキアと寝たら殺すから」と言い
 敗北ノ時ハ涙ヲ流シ 勝チヲ逃セバオンオン喚キ ミンナニフェラトヨバレ
 コンティニューモ出来ズ ボス前セーブモサレズサウイフクソゲーヲ、早クヤメタイ――

 そして、そんな苦難を経た俺達は!
 とうとうゴールを、グランドフィナーレを、迎えようとしていた――。
「……!(ゴクリ)」
 今度はリリ先輩も、固唾を呑んでくれている。
(ここで左×。そして、R1!)
 画面上では、俺の思い描いた通りに動いてくれたフェラたそが、竜騎兵の突きを左にローリング回避、からの、抜刀!
 さあ、その、敵のハルバードの十分の一以下のサイズしかないのではなかろうかという、なんとも頼りない、きっと料理包丁よりも小さなダガーが、敵の装甲を叩く!!!
 ――届いた!
 こんな小刀がこの鎧をどう害すのかというような、しょっぱい一撃、その百発目が。
 そして。
 『ジャキン!!』
 その、今まで一度も聞いたことのない音と共に、倒れふす敵影。
 勝鬨の電撃が、体中を駆け巡っていく。まるで体中の血液が全部炭酸になったみたいだ。
 目前の画面に浮かぶのは、「VICTORY」ただ一文字。
 そうして、俺は今、今度こそ、憎き竜騎兵とかいう鎧畜生に、止めを差した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「やった……!」
 歓喜にの雄叫びを上げる俺に、そう言って抱きついてくるリリ先輩。
「やった、やったわね! ツクル!!」
「はい。やりましたね……! ゲームでこんなに興奮したのは初めてかもしれません!」
 ドーパミンやらアドレナリンやらがバーゲンセールでぶっしゃーしていた。
 なんかもう、興奮が、やばい。眠気も、ぶっとんだ。圧倒的、快!!!
 ああ、たまらねえぜ!!!
 だけど。
 この腕の中の彼女は。
「ええ、私も……。これで、こころ、おきなく…………」
「ん? どうしたんですか、先輩?」
「すぅ…………。すぅ…………。」
 眠っていた。
 寝息と寝顔までかわいいのは、もう神様のえこひいきか調整ミスとしか思えない。
 マジでなんなんだこの人。かわいいとか綺麗とかのイデアなわけ? 概念の具体??
 形而上学的形而下の存在なの???
 全ノットイケメンフェイスを代表して、やり場のない怒り。
 しかし、神は死んだと誰かが言ったように、そんなこといくら言っても仕方ないので。
 ふと、時計を見ると。もう四時近かった。え? もう、朝じゃん……(絶望)。
 これじゃあ、緊張の糸がほぐれた瞬間眠ってしまうのも仕方ない。
 俺は先輩を起こさない様に、そおっと布団まで運んであげた。
 細身な見た目通り、本当に軽くて助かる(身長は、俺よりちょっと低いくらいなのに、もしかしたら二〇キロ以上差があったりするのかもしれない)。
 だが、それでも足元に乱雑に転がる酒瓶の数々を踏まないように布団まで運ぶのには一苦労だった。この人、顔の整い具合に部屋のそれが反比例し過ぎでは? まあ逆に顔が綺麗だからこそ部屋が汚くても許されるんだろうけど。かわいいの正義みよ。
 布団に寝かしつけた彼女の端正な寝顔を見ながら、そう思った。そう、許してしまった。
 あーまじでかわいいな、この人。
 さすがにしないけど、今ならこの人になんでも出来ると思うと、彼女には、もう少し自分の美しさに見合った行動をしてくれと思ってしまう。こんな、ともすればなにをするかわからない気持ちの悪い童貞の前で、そんな隙を晒さないでくれよと。
 だって、実際に、これが俺じゃない誰かなら、それこそなにかされていたかもしれないわけで。そんな想像をしたら、どうも気分が悪くなった。
 だからそれに対し、また勝手に、自分のものでもないのに、なにを? と思う。これだから処女厨は気持ち悪いんだと、自己批判して心の体裁を保つ。そんなのは女性声優には彼氏がいないと信じ込むような身勝手の偶像視と同列に唾棄すべき厚顔さだと。
 なぜなら、俺が彼女にそれだけ信頼されてるだとか、ましてや――いや、それは恥ずかしい幻想過ぎて、言葉にすらできない――という風には、もう二度とそんな思い上がりはしたくないからだ。異性に対して、そういう期待を今生でしたくないからだ。
 だって、裏切られたくない。傷付きたくないんだ。
 わかるだろう? 期待という名の水を水瓶に少しずつ貯めていく、そしてそれが溢れそうになって、思わず煽った時に、実はそれが毒であったと気付くんだ。遅すぎる。その、かつて期待だったなにかは、この胸をひどく締め付けるのに。
 でも、彼女になら。
 また俺は思ってしまう。そんなわけないのに。
 でも……。でも、これくらいなら、いいのかな……。
 俺がそう思った、その刹那――。
「あれ、わたし……。寝ていたのね……」
 彼女はねぼけまなこでそうつぶやいて、起き上がると、座って彼女を眺めていた俺に、またまた、枝垂れがかってきた。
 いつもより、彼女が、あつい。
「な、なんですか急に!? 寝ぼけてんですか……?!」
「だったら、どうする? 今ならなにされても、忘れちゃうかも」
「はあ? 止めてください。また酔ったふりですか?」
「あはは……、そうかもしれないわね。あなたの顔をみたら……、だってこんなこと、あなたには言うまいと思ってたこと、なんか言いたくなっちゃたんだもの」
「……」
 それは、修学旅行の晩のような、真夜中の公園や校舎のような、非日常的な声だった。
 いつだって人は、そういう日常と切り離された不連続な存在となったとき、そのことを誰かへ語りたがる。そうして彼等は、断ち切られた己の存在を、そこに繋げようとする。
 夜の闇は、人を饒舌にさせる。
 キャンプファイヤーの火も、星の瞬きも、祭りの屋台や花火も、等しく。
 だから彼女も同じように、その浮つきに人肌をのせて、そのあたたかさの内に隠していたものを、こちらの中へと、流し込んでいくのだろう。
「ちょっとだけ、昔話をしてもいいかしら?」
 彼女は俺の視界から逸れて、耳元で、囁くように語り始めた。
 
 
 私はね、昔から、ずううっと、一人だったの。
 家にも学校にも居場所はなくて、ずっと一人だった。
 それでも、最初の頃は居場所を作ろうとしたり、作ってくれそうな人に期待したりしたのよ? けれど、ダメだった。そんなものはどこにもなかったの。
 それってきっと、この私がかわいすぎるのが良くなかったのだろうけど、たぶんこういう、嫌味なところも悪かったんでしょうね。
 かつては、それを治そうとしたこともあったのだけど、結局、こんなにかわいい私にむかってかわいくないって言ってくる意味のわからない奴等ばかりだったし、そうして手に入れたものは到底心の安らぐ場所ではなかったわ。
 だから、ずっと、やっぱり一人なんだって思ってた。
 でもね、私、また、中途半端に夢を見たの。
 それも、アイドルに。
 その名前は、何度もテレビかなにかで、聞いたことがあったわ。頭の悪い職業だと思ってた。かわいいしか誇るところのない馬鹿が、金儲けにしか興味がない馬鹿に騙されて、それよりももっとどうしようもない馬鹿騙して金を稼いでるんだなって。
 でも、そんなのは嘘で、いいなあって思ってた。
 だって、彼女達は、私にはないものを持ってたんだもの。
 だから、街を歩いている時にその名前を耳にしたときは、思わず、飛びついてしまった。
 本当に、私というのは、どうしようもなく、馬鹿なんでしょうね。でも、そういう意味では、むいていたのかしら。なんて。
 けれど、その道っていうのは、当然、そんなにみんなが思い描くほど夢のある世界でもなくて。しかも、私がなったのは、地下、地下のアイドルだった。
 だから、そんなどこの誰かも知らないド素人の歌やダンスを有難がる馬鹿なんて、ほとんどいない。そんな理由で、私は必死でレッスンを始めたのだけれど、そのレッスン代や衣装代のせいで、バイトの掛け持ちまでしないといけなくなってしまったの。
 そうして、ライブにレッスンにバイトで、私はおかしくなりそうなくらい働いていたけれど、やっぱり、子に無関心な両親は、何も言わなかったわ。少しだけ、叱ってもらいたいなんて、恥ずかしいことを思っていたのは、一生内緒。
 全然人の来ないライブ、ほとんど売れないグッズ、雀の涙みたいなお給料。かさばるレッスン代、増えるバイト……。そんな、火の車な毎日。
 そういう、アイドルと聞いて思い浮かべていた理想からはかけ離れた地下深くで、汗水垂らして、しんどくて。それでも私がそれを辞めなかったのには、当然、理由があったわ。
 私は、その地の底で。初めて。無償の愛というのをもらったの。
 ただ、私が、私でいるだけで、それだけでいいのだという愛を。
 それは、愛に飢えていた私にとって、間違いなく劇物だったのでしょうね。だから、それを無抵抗に呷った私は、愛に狂った。全てを捨てて、愛を吸い尽くそうとした。
 他の全てを投げ打って、このアイドルという楽園に全てを捧げた。
 幸せだった。ここが、初めて出来た自分の居場所なんだって思った。だから、守らなきゃって、今までよりも、ずっと必死になって。なのに……。
 でもね、いつからか、そこは楽園ではなくなってしまったの。
 歯車が狂いだしたのは、お客さんがある程度増えてきた頃から。
 だから、そう、あの時、私が、もっと人気にならなきゃ、なんて。思わなければよかったのに。なんでだろう。まだ私は、人間という集団を。理解していなかった。
 そうして、ある日から。徐々に。ユートピアは、ディストピアになってしまった。
 アイドルは、雨宮リリリは。パノプティコンに閉じ込められてしまった。
 私は、社長や、私のファンを名乗る人から、人気であることを求められだした。
 今思えば、その時点で私は、ランキングという牢獄に収監されていたのでしょうね。
 囚人よりも多くの看守がいて、囚人たちはその看守に気に入られようと、他の囚人を蹴落とすことばかり考えている、そんな下らない牢獄に。
 私は、昨日まで私に笑顔を振りまいていた同僚が、裏で私のしたこともない悪事を暴露しているのを見た。こないだは元気に挨拶をしてくれていた女が、ゴミを見るような目で私を見るのを見た。SNSは顔見知りの陰口で溢れていた。
 でも、それだけならよかった。そんなものはこの業界に入る以前から、見知ってきた摂理だから。けれど、ことはそれに収まらなかった。
 私のことを好きだと言う大人の男が、私を推す代わりにと、肉体関係を求めてくるようになった。別の子はやらせてくれたと、最低な言葉を呟いて。
 しかもそれが事実なのを、私は知っていた。涙が出た。
 あるいは、私のせいで。私に好意を向けてくれていた人達が争うのを見た。
 あるいは、お前はもっとこうした方がいいと指図されるようになった。
 けれど、それは、私がそうした方が伸びるというわけではなく、結局はただの、その人間の願望の押し付けだった。
 あるいは、私に使ったお金の多寡で、私を自分のものにしようとする人を見た。
 あるいは、そういう人のせいで、ありのままの私を愛してくれていた人が、去っていくのを見た。私が、好きだったひとたちが。
 あるいは……。
 そうして私は気付いた。結局何も変わらないということに。
 アイドルになっても、私を取り巻く環境は、あの閉塞に塗れた箱庭と同じなんだって。
 勘違いしていた。自分がもっと大きな、異なる、特別な空間にいる気がしていた。
 でも。それは気のせいだった。人間の集団は、いつでも、どこでも、最低だった。
 気持ち悪かった。どうして私は、こんな種族に、こんな容姿で生まれてしまったんだろうって。こんな、こんな醜悪な人間達を惹きつけられても、何が……。何が……っ!
 それからしばらくして私は、事件に巻き込まれかけて、怖くなって、このお仕事を止めた。孤独に、一人の世界に、戻った。
 でもね。でも。ここからは最高に笑いどころ。
 なのに、なのに私は、どうしようもない愛の飢えに耐え切れなくて。
 自分で自分を愛してごまかしていけるほどには、つよくもなくて。
 いっそあの味を知らなければ、耐えられたのかもしれなかったけれど。
 あの時の感情が忘れられなくて。あの熱をもう一度だけ感じたくて。どうしよもなくなって、あんなビラを書いたの。ヘルメットを被って白衣を着たの。
 やけくそだった。やぶれかぶれだった。死んだほうがいいとも思った。
 けれど、あなたは。あなたは、あんなにも、真剣な眼で…………。
 だからね、ツクル。そのときからずっと、私は――――。
  
 そこまで言うと彼女は、急に押し黙った。
 そして。
「……っ。」
 ほっぺたを柔らかな感触が襲い、一瞬の後にいなくなった。
「きのうの……、あれ……、ごめんね? 本当はあのときも、ちゃんとする気だったんだよ? でも、できなくて。だから、いまは、これがせいいっぱい。」
「え……、……え?」
「ふふ、……そういうとこ、ほんとにかわいいわ。ふぁあ……それじゃ、おやすみなさい」
 雨宮リリは、そう言い残し眠りについた。
 朝に眠る覚悟をきめて。
 それはもう、その過去へ戻らないという暗示なのか。
 夜にでも自分を照らしてくれる光を見つけたと、そう言ってくれているのか。
 それは俺にはわからない。
 ただ俺も、その輝かしい時間帯に起きていよう等とは、もう二度と思えない人間であることだけは、確かだった。
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