あの空は君につながっている

じえり

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守屋佑

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中学の時一目惚れした女の子がいた
たまに校舎の中で見かける
どうやら同級生らしい
名前はハル
夏休み前にようやく名前を知る事ができた
俺は1組でハルは5組
廊下の端と端
一日中会えない日もたまにあった
休み時間になれば廊下側の1番後ろの席もしくは後ろドア付近でいつも廊下を監視した
廊下の端にハルが見えれば用事もないのに廊下に出てハルとすれ違う
体育の授業移動
音楽の授業移動
あとはうまくいけば登下校
中1の思春期真っ只中の俺の唯一の生きる糧がハルだった
それなりに友達とも付き合って女の子とも戯れたりしたがハルの存在を超えれる楽しみはその時の俺にはなかった
中2になってもクラスは違った
俺は3組でハルは1組
クラスは近づいたのに1組の方が階段に近いから廊下ですれ違うという楽しみは極端になくなった
でも休み時間のたんび何気ないふりで廊下を観察 ハルを探す
ある日イチャイチャしてるハルを見る
相手の男は去年同じクラスだった真田だ
息が苦しくて本当に保健室に駆け込んだ
これが恋なのか?熱もある
胸を抑えて1人布団にくるまって笑った 
気が変になったからじゃなくて恋の喜びを知って笑えてきたんだ
その日放課後真田の肩を叩いて呼び止める
「お前彼女出来たの?」
「いや」
「なんか女子と…やけに仲良さそうにしてたじゃん?」
「友達」
え?
ハルは彼女じゃなかった
羽が生えたような心の軽さ
「何?女紹介してくれるの?」
「俺に紹介できる女がいると思うのかよ」
「それもそうか」
失礼なやつ
「俺に女紹介してくれよ」
「俺に紹介できる女がいると思うのか?ってそのまま返す」
いやいやいるじゃん おまえ何故か異常にモテてるくせに
本当にただの友達ならハルを紹介してくれよ!!!!!
叫び出したいのを我慢して所在なさげに2人で笑う
こいつとは親友になろうそう決めた日だった

真田に会う為という名目でたびたび1組を覗く
でも1日1回以上は行かない
1週間ぐらいハルに会えない事も我慢した
ハルにクラスに友達いないんじゃないかと思われたくないし真田とハルが仲良さそうにしているのを見るのが嫌だった
真田に会うのにも理由がいる
別クラスなのに頻繁に会う理由は見つからない
そこで女を紹介することにした
俺に紹介できる女は幼馴染の友美だけだ
親が友達で物心ついた時からの知り合いだ
幼馴染というより知り合いという方がしっくりくるのは親の手前仲良くしているふりをしているから
友美は軽くて話しやすい人見知りしない嫌いなやつはおそらくいないはず俺以外は
いい子だと思う
でも2人でいると息が詰まる
俺は友美の笑顔が怖いから
理由はわからないが小さな頃から友美がニカッと笑うと喉を締められたように息が詰まった
まるでピエロを怖がる子供のようにその笑顔が偽物のようでその引き上がった口角を見るたんびに鳥肌がたったものだ
嫌いじゃないけど好きじゃない
心の平穏のためには距離が必要な女だった
放課後チャイムと共に1組の教室にダッシュ
ハルの視線を感じながら真田を呼ぶ
真田とハルの目配せだけの短い会話
真田が面倒くさそうに俺のとこに来るとハルは俺の横をさらりと通過して教室から出る
「真田くん喜びたまえ」
「なんだよ」
「女を紹介してあげます」
「いいよ なんか見返り求められそうで嫌」
「そんなことないよ」
なんて勘の鋭いやつなんだ
「幼馴染の友美って言う子なんだけど結構可愛いよ」
きっと俺は胡散臭そうな顔してるんだろう真田の顔がひきつってる
「友達紹介しろって言われて俺お前しか友達いないじゃんはははは」
嘘笑いで真田の肩をポンポン叩くと真田は「しようがねえな」と笑う
今更ながら友美に男いたらどうしようと焦った

久しぶり
お前彼氏いる?
男紹介したいんだけど?
何?いきなりキモいんだけど
女紹介しろって言われて
俺女の知り合いってお前しかいないじゃん笑
ギリいないけど?
なんだよギリいないって見栄
いい感じの男はいるって事だよ
じゃ今度の日曜日どもえばしの所で待ち合わせな 可愛くしてこいよ
私はいつも可愛いよバカ

メッセージのやり取りでも透けて見える友美の顔
ニヤニヤしてるんだろうなと思うと腕の毛が逆立つ

約束の日
真田の私服のセンスに足が震える
こいつこんなにいい男だったのか?
古着バンドTに黒のチノパン
至ってシンプルなのにスタイルの良さも手伝って俺が惚れそうだ
「よっ」
不自然に軽く手を挙げる
「おう」
真田もぎこちなく挨拶を返してくる
「何お前?なんでお前が緊張してんの?」
眩しい‼︎甘い笑み
「こんにちは」
友美の甘ったるい声
最上級にかわいいでしょアピールしたフリフリした服とミニスカート
小柄なのに胸がある
男ならきっと好き
「こんちは」
真田の反応が薄くて残念
そう思ったのは友美も一緒だったようで取ってつけたように真田のTシャツを褒める
「かっこいい服」
「いとこが古着屋やってて好きそうなの入ると教えてくれるんだ」
「古着って高いんでしょ?」
「ピンキリだよ あんまり高いのは買わないよ」
「そうなんだ」
おっ結構会話続くじゃん
「じゃ俺行くわ」
俺の役目は終わったとばかりに宣言したが友美が俺の服を引っ張る
「早速2人なんて気まずい」
友美が真田を見ながら俺に訴える
そうだな
お邪魔虫の俺も含めお茶でも飲もうと近くの喫茶店に入りそれなりの会話の後3人で映画を見た
真田が何もかもスマートで俺は置いてけぼりを食らった気分だ
喫茶店の注文から会計
映画のチケットの取り方や友美のエスコート
どれも同級生とは思えない大人びた真田
友美とバイバイした後真田との帰り道
「タイプじゃなかった?」
「かわいい子だとは思うよ でも俺は苦手かな?」
「そうか 残念」
「でも友美ちゃんがまた会いたいって言ってくれたらまた会うよ」
「それは俺に気を使って?」
「バカ 友美ちゃんに気を使ってだよ」
「付き合うとか無理なんだろ?じゃ断れよ」
「ああいう子は振られるの無理なはず」
「お前女に詳しいんだな」
「知らなかったのか?」
「なんだよそれ」
本当になんだよそれ 
「何度か会って俺が振られるから慰めろよな」
なんだよそれ
本当になんなんだよそれ
真田が冗談のように笑うから俺もモヤモヤ抱えながら笑う
家に帰って携帯開いたら早速友美から真田と次の約束したってメッセージ
本当に振られるのか?真田

1ヶ月たって本当に真田が振られた
あんなに好き好き言ってた友美の熱は1ヶ月しか持たなかった
どんな嫌な男演じたらそうなるのか?
俺には皆目見当も付かない

中3になってまたもやハルとは別クラス
俺はしつこくまだハルを思い続けてる
俺は5組でハルは2組
階段に近いのは2組
その頃俺は真田と距離があった
真田から得体の知れない怖さを感じたからだ
たまに俺の全てを見透かしているような目をするあいつに全裸で立たせられているような羞恥心を持った
「おっ久しぶり」
放課後真田に後ろから肩を叩かれて俺は飛び上がるほど驚いた
「何?そのビビりよう」
「いや別に」
「この頃あんまり絡んでこないねなんで?」
「なんでって俺は勉強で忙しいんだよ」
真田の晴れ晴れした顔をまじまじ見ながら俺はなんでこいつを怖がっていたんだろうと思う
でも俺の野生の感は火災報知器がバカになったかの如くビリビリビリビリなってた
「残念 お前にいい話持ってきたのにな」
「嘘つけ」
「嘘じゃないよ お前ハルの事好きだろ?」
ドッキーン ズッキューン
「は?は?何言ってんの?は?は?」
動揺しまくりじゃん
「なんで?」
「そりゃ見てりゃわかるじゃん
なんやかんや言って俺よりハルみてたし」
こういう所 俺を見透かしてる
「バレてた?ぶっちゃけ中1から好き」
「まじ?キモっっ」
キモってなんだよ
「明日日曜じゃん ハルんち行こうや」
ポンポン肩を叩かれて気持ちをなんとか押さえ込みとりあえず深呼吸
まじ?まじ?
ハルの部屋の空気吸えるの?

女の子に好かれる方法ってなんだろう
ハルの気持ちを知るためにはどうしたらいいんだろう
漠然と悶々とその夜枕を抱えながら答えの出ない問いを何度も繰り返して
しなきゃいいのに友美に電話
「そりゃキスでしよ」
「キスすりゃ相手の気持ちなんて一発でわかるよ」なんか大人な答え
そうかキスか いよいよ俺も初チューか
今思えばそんな言葉を鵜呑みにした俺が悪い
舞い上がってたと言う言い訳は通用しない
ハルの家 花壇の花 ハルの家の玄関 ハルの私服 ハルの部屋 ぬいぐるみとかかわいいものは少ない いつか真田が着てたバンドTのバンドのポスター 机の上がぐちゃぐちゃ 反対に整頓された本棚 漫画 
全てにどきどきしてる
「俺のこと知ってる?同じクラスにはなった事ないよな?守屋佑」
キスキスキス キスしなきゃ
「キスをさせて」
自分自信は声高らかに発した言葉に違和感はなかったのにハルの部屋の空気が一気にピキーンと張り詰めた
ハルの苦虫潰したような苦い笑顔は中3の俺の脳裏に焼きついてトラウマを植え付けた
大失態を犯したであろうハルの部屋を追い出された帰り道真田がいきなり大爆笑
「お前いいやつだけど変態だったんだな」
淡い初恋と気のいい友達を失った中3の初夏
それから本気で誰かを好きになったことはない
遊びの軽い付き合いならできたけどそんな関係ですら手さえ繋げずにいた
たまに気の合う友達も出来たけど上っ面の付き合いでノリと勢いだけで楽しんだ
いつも深い心の奥底に小さく小さく折りたたんだ2体の紙人形が俺の心を揺らし続ける

店を持ったのは25歳
高校を出て調理師の学校行っていろんな店転々とした
どこで働いても長続きしないのは俺が誰かの下で働くのが無理だということ
自分の力量もわかってないのに無駄に自信だけはある
だから金を借りまくって店をオープンさせた時成功しか見えてなかった
現実は甘くない
自分で背負う全てのことが苦しくて
雇われていた時よりも自由はなくて
飛んでしまいたいと何度も思った
でも頑張れたのは友美のおかげ
「あと1年頑張ろう 1年だけでも頑張りなよ」そう言って沼に沈みそうな俺を強引に引き上げた
ほぼ放棄しかけた経営をなんとか立て直しトントンまで持ってこれたのは友美と友美の母親と俺の母親が頑張ったからだ

「ありがとうございます」
常連客の1人が夕方から飲み始めるのに早めに店を開け出来上がったその客をタクシーに乗せて店に戻ろうとした時店の中に入るハルを見た
幻覚?いや絶対ハルだ
何故か確信があって慌てて店に入るとハルは1番奥の予約席に座っていた
8時から小松の名前で予約
結婚したのか?それとも友達の名前?
幸い今日は空いていて厨房でオーダーを待ちながら店内の観察をする
遅れて男女が予約席に座った
ハルの向かいに女 ハルの隣に男
普通に考えて男はハルの彼氏?
修羅場?男を取り合うとか?ただの友達?
ホールのバイトに探りを入れても3人がどんな関係なのかわからずに美味しい料理を作ることに集中できなかった

男はやたらと酒を飲んで笑っている
ハルは白ワインを飲んでいる 不思議だ
14年ぐらいたつのか?
中学の時はショートヘアだったのに今は髪が長いんだな
当然ながら化粧もしてるから益々綺麗だ
ハルを遠目に見ながら考える
俺は今でもハルが好きのか
流石に自分でも気持ち悪いわ
1人で自分に突っ込んでニヤニヤしてるとハル達が席をたった
レジ打ちの苦手なバイトが前の客に手間取ってる間に「変わる」とレジを横取りした
ハルの肩にもたれかかりヨシヨシされる男
金額打つ指先に力が入る
ちょいケバい女が財布から金を取り出すタイミング
今だ
「ハルじゃない?ハルでしょ?絶対ハルだよ」
声の張りにわざとらしさはないか?
「知り合い?ですか?」
キョトン顔のハルとケバい女
「俺だよ!俺俺!キスさせて」
そう言って俺はハルに腕を伸ばす
「え?なんだっけ?ちょっと待って中学の時の変態だよね なんて名前だっけ?もり?もりなんとかタクヤ?」
変態って!あえてそのツッコミは控えた
「ブー守屋佑だよ!」
「そうそうお久しぶり
まさかこんな所でレジ打ちしてるとは思わなかったよ」
聞いて驚け
「失礼だな 俺の店だぞ」
「ええ守屋がこんな洒落た店やってんの?信じられんわ」
ああ洒落た店やっててよかった
「ハルは俺のことなんてなんも知らんじゃないか」
「それもそうか て言うかなんでハル呼びなんだよ守屋とはハル呼びされる仲じゃないとおもうけど?」
それは真田がハルって呼んでたからだよ
「まだちょっと飲んでく?積もる話あるだろ?」
今真田の話はしたくなくて話題を変える
「飲む飲む」
酔ってるのかな?少し赤いハルの頬
「ちょいちょい何盛り上がってるんです?」
ケバい女が会話を遮る
「えーと何?」
「あっ同級生なんですよ かおりさん彼の事お願いできますか?」
は?
「14年ぶりの再会なんです!」
そうだよ 14年ぶりなんだよ 邪魔すんなや
「守屋タクシー呼んで」
「はいよ」
「すいませんね あとで彼には連絡しときます」
やっぱりこの男はハルの彼氏なのか…
と少し残念に思いながらタクシーを呼ぶ
なる早で速攻でお願いします
ほとんど専属的な個人タクシーの松山さんが近くにいる事を祈りながら男の脇を抱えて外に出る
本当なら道路に放り投げたい気分だけどグッと堪えて男を観察
普通にイケメン 
カッコいいというよりかわいいタイプか?
年下か?でも時計は高そうで着ているスーツもいいもののような気がする
銀行?いや証券?まさかベンチャー社長?
値踏みするように視線を這わせていたら松山さんが本当に速攻で来てくれた
目配せして男と女をタクシーに押し込むとドアを閉めて一応頭を下げた
「ありがとうございました」
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