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大町初美
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「男女の友情なんてありえないでしょ」
「そうかな?」去年結婚した彼女は本当は苦手
給湯室
同期の友美が幼馴染と仲がいいって話
よくある親同士が仲良しで赤ちゃんの時から知ってる男女
その幼馴染が彼女できると絶対に合わせてくるけど逆に自分は絶対彼氏を合わせないんだとか
知らんわ
会社はつまらない いい男がいないから
女子短大出てようやく引っかかった会社
早く寿退社したいと思いながら8年たった
すっかりお局
いつまでも苦い思い出として残ってる
高校で初めて出来た彼氏
いつも「すき」って言ってくれるカズの事ほんとは大好きだった
ほぼ始めましてで告白されて「私の何知ってんの?付き合うとか無理」っていいながらすぐに心の中にはカズがいて誰にも渡したくないって思ってた
だからクリスマスに特別なプレゼントをあげたくてバイトを始めた
ほとんどが他の学校の高校生で後から交わるのはしんどかったけどそれなりのスキルはあるつもり
「初美ちゃんはどこの高校なの?」
「宝伝です」
「じゃここから少し遠いね」
「中学は?」
「金倉南」
「じゃ家も遠いじゃん」
「自転車だったら20分ぐらいだよ」
「20分チャリなんてしんどいよ」
乾いた笑い
マナーとして私も聞き返すのが礼儀です
「立花さんは?」
「リカでいいよ」
「私は高校は甲南で中学は八奈見第2
今ホールにいるハルは高校一緒で中学は八奈見第1」
指差した先のハル
人生楽しくてしようがないぐらいオーラ出まくりの子
「八奈見も甲南もここからそんな近くないじゃん」
「でも家まではチャリで5分」
大げさに手を広げて5本指を振る
そりゃよかったねとばかりの愛想笑い
「彼氏は?」
「いる」
軽く嘘
「そうなんだいいなぁ~誰か紹介してよ」
面倒くさ
こういう女子ノリ苦手
「大町さん困ってるじゃん 喋ってないで働け」
ハルが会話に割って入って溝をつくる
あなたとは近づきませんと線引きされた感じ
でも別にいい
友達ごっこをしに来たわけじゃない
金を稼ぎに来たんだから
でも八奈見第1はカズの出身中学
同級生ならカズの中学生活を聞きたい気もした
「カズ~」
休み時間にカズの席の前
ゲームでもやってるの?携帯から顔を上げずに
「何?今日もかわいいよ」
なんでそんな軽口叩くのよ ほころぶ顔
でもカズは会話を続ける気がなさそうで携帯から顔を上げない
とっさに頭に浮かんだハルの事
そもそもシフトがあまり同じにならない
同じになっても別な持ち場
明らかに避けられてる
こっちも仲良くする気はないけれど
どんな女か探り入れたいって欲求が思わず口をついて出た
「苗字わかんないんだけど同中の同級生でハルって子わかる?」
携帯からあげた顔が変わった 気がした
「どうしたの?」
「バイト先一緒で同中だって聞いたから」
見た事もないような笑顔
名前を聞くだけで笑顔になれる相手って「なに?」何?
聞くんじゃなかったって後悔
「元カノとか?」
「いいや」
そのいいやってどんな含みがあるのよ
「友達」
「友達?」」
「そう女友達」
女友達?
「大切な女友達だった」
「それ?好きだったの?」
「もちろん好きだったよ でもそれは友達としてだよ」
「男女でそんなのあり得るの?」
「俺達にはありえた」
誰も寄せ付けない俺達って言葉
2人にしかわからない2人の世界がそこにある
チャイム
何それ何それ何それ
心を掻きむしられる
いや自分で掻きむしってんだ
授業なんて聞いてられない
カズを誰にも渡さない
放課後
帰り支度してるカズの横に立つ
「ハルって子に会いたい?」
「うーんどうだろ?色々あってちょっと複雑」
「バイト終わるの8時だから終わりに来てよ」
大嫌いな母親が男たちにするように強引に腕を取り上目使いで甘えて見せる
「わかった場所どこ?」
バイト中は気が気じゃなかった
この女にカズを合わせてもいいのか?
ほんとうに恋愛抜きの男女の友情なんてあるのか?
ホールにいるいつものキラッキラなハルを横目で見ながら流れ作業で食洗機に食器を入れていく
「今日もお疲れ様気をつけて帰ってね」
大学生バイトと交代してロッカーでエプロン外しながらハルが店の外に出て行くのを待つ
ガードレールにもたれ掛かって携帯いじってるカズが顔を上げた
あの笑顔
ドキン心臓が跳ね上がる
急いで外に出て「お待たせ」と言いながらカズの腕に手を絡ませた
カズはちょっと意外な顔しながら私に顔を向けると絡ませた手をぎゅっと握る
「彼女?」
カズの目を覗き込むようにハルが言う
「うん」
その視線を遮るように私がうなずく
「カズと同中だってわかってカズに話したらなんか仲良かったって聞いてちょっと警戒しちゃった」
やばいぐらいに早口
「全く気にする事なんかないよ うちらほんとにただの友達だから」
ほんとなの?ほんとにほんと?詰め寄って問い詰めたい衝動を抑える
「ほら言ったっしょ 俺らそういう感じじゃないんだって」
2人の視線が嘘だよ
「男女の関係に友情なんて信じられないんだよね」
自分でも怖いぐらいに冷たい口調
「それに俺の方が惚れてるんだから」
そんな私を気遣うようにカズが私を見て笑う
「おいおい惚気やめろよ」
ハルがカズに肩パンして2人で無言の会話
やめてよね2人でアイコンタクトするの
絶対無理
戦う前にもう負けてた
カズがどんなに私を好きって言ってくれてもハルにはきっとかなわない
誰にも割り込めない2人だけの何かがある
でも渡さないから
「先行くわ」
ハルが背を向けて歩き出す
カズが追いかけるんじゃないかと思って絡ませた腕に力を入れた
「いつから俺は初美の彼氏になれたわけ?」
カズがとぼけた調子で私を見る
「今日がI日目だよ」
カズが私の腕を解いて手を絡ませた
あのあったかい手の温もりは今でも忘れられない
「そうかな?」去年結婚した彼女は本当は苦手
給湯室
同期の友美が幼馴染と仲がいいって話
よくある親同士が仲良しで赤ちゃんの時から知ってる男女
その幼馴染が彼女できると絶対に合わせてくるけど逆に自分は絶対彼氏を合わせないんだとか
知らんわ
会社はつまらない いい男がいないから
女子短大出てようやく引っかかった会社
早く寿退社したいと思いながら8年たった
すっかりお局
いつまでも苦い思い出として残ってる
高校で初めて出来た彼氏
いつも「すき」って言ってくれるカズの事ほんとは大好きだった
ほぼ始めましてで告白されて「私の何知ってんの?付き合うとか無理」っていいながらすぐに心の中にはカズがいて誰にも渡したくないって思ってた
だからクリスマスに特別なプレゼントをあげたくてバイトを始めた
ほとんどが他の学校の高校生で後から交わるのはしんどかったけどそれなりのスキルはあるつもり
「初美ちゃんはどこの高校なの?」
「宝伝です」
「じゃここから少し遠いね」
「中学は?」
「金倉南」
「じゃ家も遠いじゃん」
「自転車だったら20分ぐらいだよ」
「20分チャリなんてしんどいよ」
乾いた笑い
マナーとして私も聞き返すのが礼儀です
「立花さんは?」
「リカでいいよ」
「私は高校は甲南で中学は八奈見第2
今ホールにいるハルは高校一緒で中学は八奈見第1」
指差した先のハル
人生楽しくてしようがないぐらいオーラ出まくりの子
「八奈見も甲南もここからそんな近くないじゃん」
「でも家まではチャリで5分」
大げさに手を広げて5本指を振る
そりゃよかったねとばかりの愛想笑い
「彼氏は?」
「いる」
軽く嘘
「そうなんだいいなぁ~誰か紹介してよ」
面倒くさ
こういう女子ノリ苦手
「大町さん困ってるじゃん 喋ってないで働け」
ハルが会話に割って入って溝をつくる
あなたとは近づきませんと線引きされた感じ
でも別にいい
友達ごっこをしに来たわけじゃない
金を稼ぎに来たんだから
でも八奈見第1はカズの出身中学
同級生ならカズの中学生活を聞きたい気もした
「カズ~」
休み時間にカズの席の前
ゲームでもやってるの?携帯から顔を上げずに
「何?今日もかわいいよ」
なんでそんな軽口叩くのよ ほころぶ顔
でもカズは会話を続ける気がなさそうで携帯から顔を上げない
とっさに頭に浮かんだハルの事
そもそもシフトがあまり同じにならない
同じになっても別な持ち場
明らかに避けられてる
こっちも仲良くする気はないけれど
どんな女か探り入れたいって欲求が思わず口をついて出た
「苗字わかんないんだけど同中の同級生でハルって子わかる?」
携帯からあげた顔が変わった 気がした
「どうしたの?」
「バイト先一緒で同中だって聞いたから」
見た事もないような笑顔
名前を聞くだけで笑顔になれる相手って「なに?」何?
聞くんじゃなかったって後悔
「元カノとか?」
「いいや」
そのいいやってどんな含みがあるのよ
「友達」
「友達?」」
「そう女友達」
女友達?
「大切な女友達だった」
「それ?好きだったの?」
「もちろん好きだったよ でもそれは友達としてだよ」
「男女でそんなのあり得るの?」
「俺達にはありえた」
誰も寄せ付けない俺達って言葉
2人にしかわからない2人の世界がそこにある
チャイム
何それ何それ何それ
心を掻きむしられる
いや自分で掻きむしってんだ
授業なんて聞いてられない
カズを誰にも渡さない
放課後
帰り支度してるカズの横に立つ
「ハルって子に会いたい?」
「うーんどうだろ?色々あってちょっと複雑」
「バイト終わるの8時だから終わりに来てよ」
大嫌いな母親が男たちにするように強引に腕を取り上目使いで甘えて見せる
「わかった場所どこ?」
バイト中は気が気じゃなかった
この女にカズを合わせてもいいのか?
ほんとうに恋愛抜きの男女の友情なんてあるのか?
ホールにいるいつものキラッキラなハルを横目で見ながら流れ作業で食洗機に食器を入れていく
「今日もお疲れ様気をつけて帰ってね」
大学生バイトと交代してロッカーでエプロン外しながらハルが店の外に出て行くのを待つ
ガードレールにもたれ掛かって携帯いじってるカズが顔を上げた
あの笑顔
ドキン心臓が跳ね上がる
急いで外に出て「お待たせ」と言いながらカズの腕に手を絡ませた
カズはちょっと意外な顔しながら私に顔を向けると絡ませた手をぎゅっと握る
「彼女?」
カズの目を覗き込むようにハルが言う
「うん」
その視線を遮るように私がうなずく
「カズと同中だってわかってカズに話したらなんか仲良かったって聞いてちょっと警戒しちゃった」
やばいぐらいに早口
「全く気にする事なんかないよ うちらほんとにただの友達だから」
ほんとなの?ほんとにほんと?詰め寄って問い詰めたい衝動を抑える
「ほら言ったっしょ 俺らそういう感じじゃないんだって」
2人の視線が嘘だよ
「男女の関係に友情なんて信じられないんだよね」
自分でも怖いぐらいに冷たい口調
「それに俺の方が惚れてるんだから」
そんな私を気遣うようにカズが私を見て笑う
「おいおい惚気やめろよ」
ハルがカズに肩パンして2人で無言の会話
やめてよね2人でアイコンタクトするの
絶対無理
戦う前にもう負けてた
カズがどんなに私を好きって言ってくれてもハルにはきっとかなわない
誰にも割り込めない2人だけの何かがある
でも渡さないから
「先行くわ」
ハルが背を向けて歩き出す
カズが追いかけるんじゃないかと思って絡ませた腕に力を入れた
「いつから俺は初美の彼氏になれたわけ?」
カズがとぼけた調子で私を見る
「今日がI日目だよ」
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