あの空は君につながっている

じえり

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小松かおり

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会計待ち
「ご馳走様」
「いいのよ お姉さんに任せなさい」
一通り食べて飲んで会がお開きになった
こんな女がこうちゃんの奥さんになるのか
心にマグマを沸き立たせながら極上のスマイルをハルに浴びせる
「ちょっと飲み過ぎたかな
2人と一緒でハイペースになった」
そう言いながらこうちゃんがハルの肩に頭をもたげる
「こらこらこんなところでイチャイチャしない」
ギリギリと奥歯を噛み締めながらこうちゃんの背中を叩く
「そうだよ 飲み過ぎ」
ハルがヨシヨシとこうちゃんの頭を撫でた
わざとだな
この女私を挑発してるのか?
「かおりさんどうしますか?私達は家に帰りますけどタクシー頼みますか?同じ方向なら送りますけど…」
ほんとは送る気なんてさらさらないでしょ
「じゃ送ってもらおうかな 実はこうちゃんのアパートの近くなんだ」
ハルの笑顔が一瞬崩れた
そうそう私をもっと警戒しなさい
こうちゃんを挟んでバチバチと視線を交わらせたらレジうちの男がハルを見てえっ?と声をあげた
「ハルじゃない?ハルでしょ?絶対ハルだよ」
誰だよお前って顔のハル
「知り合いですか?」
「俺だよ!俺俺!キスさせて」
そう言ってその男はハルに腕を伸ばしてくる
「え?なんだっけ?ちょっと待って中学の時の変態だよね なんて名前だっけ?もり?もりなんとかタクヤ?」
「ブー守屋佑だよ!」
「そうそうお久しぶり」
「まさかこんな所でレジ打ちしてるとは思わなかったよ」
「失礼だな 俺の店だぞ」
「ええ守屋がこんな洒落た店やってんの?信じられんわ」
「ハルは俺のことなんてなんも知らんじゃないか」
「それもそうか て言うかなんでハル呼びなんだよ守屋とはハル呼びされる仲じゃないとおもうけど?」
「まだちょっと飲んでく?積もる話あるだろ?」
「飲む飲む」
ちょいちょい何盛り上がってるんですか?
ヘロヘロのこうちゃんの脇を支えながらハルがさっきまでの猫被りの仮面をはがして店の店主とわちゃわちゃ話し出す
「えーと何?」
「あっ同級生なんですよ
かおりさん彼の事お願いできますか?」
は?
「14年ぶりの再会なんです!」
何キラキラした目でこうちゃんをもののようにパスしてくるのよ
「守屋タクシー呼んで」
「はいよ」
彼氏ほっといていい状況なの?
「すいません あとで彼には連絡しときます」
多分家に着いたらバタンキューだと思いますけど?連絡した所でどうなのよ
この店を選んだのが自分だという呪われた現実
「タクシーすぐくるみたいだよ」
店の店主守屋なる男が受話器を置きながらパスされたこうちゃんの肩を支えてくれた
「表でタクシー待ちます?」
ハルも一応後ろからついてきたが私達には全く興味がないようだ
すぐにタクシーが来てこうちゃんと2人押し込まれる
「じゃかおりさんお願いしますね」
とびきりの笑顔のハルを見て何故かわからないが敗北感で心がキラキリ痛んだ
酔っ払ったこうちゃんと2人きりにしてもいいなんて全く相手にされてないんだ
ただ負けた 何に対して?わからないが負けだ
何?なんなの?
勝手に同窓会始めちゃって14年ぶりの再会でも酔っ払った彼氏を放り出しますか?ってーの
タクシーに乗り込んでふつふつと湧いてくる怒りを抑えるためにむにゃむにゃ言ってるこうちゃんの可愛い寝顔を見る

こうちゃんと会ったのは高3の時勉強の名目で仲良しグループで松下モカの家に泊まりに行ったのがきっかけだった
特別仲がいいわけじゃなかったけどグループの中にいたぐらいの関係
モカの家は父親は単身赴任で母親も深夜コンビニという子供にとっては自由な家庭環境だった
若さが許した 夜通し喋って明け方仮眠をとる
1番に目が覚めてトイレに行こうと部屋を出たらクリクリお目目の可愛い子が向かいの部屋から出てきた
「お姉さんおはようございます」
「おはよう」
ダボダボのTシャツにトランクス姿でぽりぽりと腰のあたりをかきながら欠伸をして階段を降りていく髪がボサボサの男の子がこうちゃんだった
モカの弟には会った事あったから弟じゃないのはわかったけどあまりにも可愛い男の子に尿意が引っ込んだ
直様洗面所に駆け込んで鏡をみる
お姉さんって言ったからあの子はモカと間違えたのかも?だったらこの最悪の出たちで記憶されるのはモカであってくれと願った
みんなが目を覚まして朝ごはんを食べようと階下に行くとモカの弟とかわいい男の子 ほか2名がゲームしてた
「おはよう」
私達女子4人は見てないふりでその子達をしっかりチェックしてた
「モカ今日暇なら俺らとカラオケ行かない?」
「ガキとなんて行くか!」
速攻断るモカに私達は目配せする
「どうせ暇なんだし行こうよ」
言い出した私に他の2人も同意して4対4で遊びに行くことになった
松下弟リク 可愛い康太
照れ屋の雅也 クールな和也
私達の一個下だから高2
私は速攻康太に狙いを絞り康太にもうアピール
結果それからこうちゃんとたまに遊ぶようになったけど高3の冬 受験があって疎遠に
私が大学に入ると今度はこうちゃんが受験で連絡は途絶えた
でも次の春突然連絡が来て私が通ってる大学合格したって
胸が高鳴った
こうちゃん私のこと好きじゃんって 付き合うってことかな?って思ったけど違ってた
私はリクの姉の友達という位置付け
大学だってたまたま私の通ってた大学に勉強したい科があったってだけだった
それでも私はこうちゃんの姉のように振る舞ってこうちゃんの彼女を吟味して時には褒めて時には貶していかなる女達も蹴落としてきた
こうちゃんは大学卒業してすぐにファッションブランドを立ち上げて通販で販売する会社を経営してる
今ひとつわからないけど外国の有名なミュージシャンがこうちゃんの会社の服を着てインスタに上げたとかでブランドは一気にグローバルになってこうちゃんは明らかな勝ち組だ
こうちゃんの仕事が忙しくて半年ぐらい会えなくて近況を聞いたら1年半ぐらい付き合ってる彼女がいて結婚考えてるって告白
こうちゃんは私に対して全くラブはない
わかってるけど私はこうちゃんの彼女になってこうちゃんの奥さんを夢見てる
彼氏も作らず29になって仕事では評価されてるけど毎日そんなに楽しくない

「こうちゃん起きて 着いたよ」
タクシー料金を払いながらこうちゃんを揺さぶる
「あれ?ハルちゃんは?」
「店に置いてきたよ」
「なんで?」
「なんでって…なんか店のオーナーが同級生だったらしいよ」
え?
こうちゃんの顔色が真っ青になる
「店戻って」
「なんで?どうしたの?」
「店の名前なんだっけ?」
大慌てで店を検索するこうちゃんを見てこっちまで心配になった
なんなの?どうしたの?
「守屋…か」
携帯を見つめながら安堵した顔をするこうちゃんの横で何が起こっていたのかまるでわからない私
「とりあえずおりましょうか?」
タクシーの運転手さんがにっこり笑ってドアを開いた

あの日の様子が気になって何年かぶりにリクに電話した
「何?珍しいじゃんかおり番号間違えてませんか?俺は康太じゃないですよーリクですよー」
わかっとるわ
「ちょっと聞きたいことあって」
「何?」
「ハルちゃんとこうちゃんって同い年だよね 元々学校とか一緒だったの?」
「いつものように康太の彼女が気に入らないって?」
「違うよ どうやって知り合ったのかなと思って」
「あの子デパートにいるじゃん
康太の服デパートでテナント持とうとしてデパート行ってて知り合ったんじゃない?」
「こうちゃんがデパートで服売ったりするかな?それにハルちゃん化粧品売り場でしょ?普通出会うかな?」
「そういえば出会い聞いてないな
別にどうでもいい気するけど?」
「じゃハルちゃんとこうちゃんの共通の同級生っている?」
「さあ?高校も違うし大学も違ううけど地元隣の市だし同い年なんだから探せば共通の友達ぐらいいるんじゃない?俺興味無いことにとことん興味ないから 知りませーん」
「じゃリクが思いつくこうちゃんの友達って誰?」
「高校の付き合いなら俺と雅也だけど大学はわからん」
「初めて会った時4人だったじゃん」
「ああもう1人いたな あいつあの時初めましてだったんだよね
雅也が塾が一緒とかで塾帰りにそのまま俺の家に来た感じで俺はあの日だけつるんだ感じ」
「そうなんだ じゃ雅也くんの連絡先教えてよ」
「面倒くさ 康太に聞けばいいじゃん」
使えないやつ
こうちゃんのあの慌てよう見たらリクだってなんなのか知りたくなるはずだよ
と思いながら唇を噛む

思いがけず雅也から連絡があったのはそれからすぐだった
なんやかんや言いながらリクが繋いでくれたらしい
雅也が私を苦手に思ってることわかってるから私も知らず知らずに苦手意識がある
「なんか探ってるんだって?」
「何?探ってるって…ただこうちゃんとハルちゃんの共通の同級生って誰なのかな?って気になってるだけ」
「共通?そんなやついるの?」
「私が聞いてるんだけど?」
「確かに康太とハルちゃんっていつの間にか付き合ってたから誰かの紹介とかかもね」
それはいい情報だった
こうちゃんからこの間のお詫びという名目で飲みの誘いがあったからもういっそ気になること聞いてやろうと思った
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