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第1章
前女皇
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己の母親からの呼び出しに応じ、一足先に彼女がいるであろう秘密の部屋にたどり着いたジュリアは、これから起こるであろう叱責かそれより恐ろしいことが起きるのではないかと事態を予測し、背中に汗をかいていたのであった。
秘密の部屋は、ぼんやりと光を灯す光源に照らされ、全面白い壁に覆われている。
だが、その壁一面には沢山の動物や化け物を模した非常に多くの可愛らしいぬいぐるみが同じ向きを向くように展示されているように綺麗なレイアウトにて配置されている為、一見して綺麗なのかもしれない。だがしかし、光源は床に置かれているためにぬいぐるみの下から照らされて不気味な様相になっている。
部屋の奥に何かしら装飾が施された絨毯が敷かれ高く盛られた台座と今は空の豪華絢爛な椅子があり、その後ろには天鵞絨の様な滑らかで仕立ての良いカーテンが掛かっている。それはまるでもう1つの玉座の様であった。
ジュリアが、玉座の前で傅き首を垂らすと同時に椅子の上には彼女とそっくりな金色の髪を頭の上で纏め上げ、複数の宝石を纏った黄緑の瞳を持つ女がカーテンの後ろから出てきて椅子にドカリと座る。女は若くジュリアよりも若い少女であった。少女は、ニヤリと厭らしく笑いながら太々しくも頬杖をついてジュリアを見下ろし、おもちゃを見つけたと言わんばかりな至極楽しげな表情でそのまま軽く身を乗り出す。
「やっときたわね。ジュリア」
その言葉に、ジュリアは顔を上げて見えてきたその少女の表情に一瞬顔を引きつらせて小さく頷き口を開く。
「はい、母上様。ただいまジュリア参りました」
ジュリアの言葉に満足げに少女はうんうんと頷きつ、表情は崩さずに口を開く。そう、この少女はジュリアの母であり前女皇のマートンである。
「よしよし、いい子だね。流石は私の娘だわ。胡散臭いアレから聞いたけれど、どうやら、面白い奴らが現れたとの事。実際どうなのかしら?」
娘であるジュリアを褒める言葉を紡ぎながらも、開口一番に彼女が開いた内容は、ほんの数時間前にこの皇国に降り立ったあの2人の事であった。
「それはひどいなぁ。僕にだって名前ぐらいあるのにぃ。あの子に決めてもらった、ジョンって名前がね」
マートンがその言葉を紡いだ刹那、突然マートンの背後の空間の大人1人が入りそうな大きさの面積が極彩色に水面の様にゆらゆらと揺らめき歪み、そして、その部分から男がゆっくりと抜け出してくる。その男はジョンだったのである。
「胡散臭いお前をなんと呼んでも支障がないだろうに」
振り返る事なく、マートンはそう吐き捨て退屈そうに足を組み替えて欠伸をした後にジュリアに改めて視線を向ける。再びいきなり現れたジョンにジュリアは顔を引きつらせているが、すぐに表情を不機嫌そうに歪めて小さく吐き捨てる。
「バケモノめ…。母上様、知っての通りです。コルダデソルトJrからの報告によれば、闇属性の薄弱なカナという名前の女と光属性のセトという、見目麗しい騎士様だと。ギルドのBランク相当だという事。伝承の通りならば、母上様と私にとって非常に厄介です。なので、私の命にて、女の方を国を揺るがしかねない魔王と認定するように手配しております」
ジュリアの報告に、下卑た笑みを浮かべたマートンは満足げに何度か頷いては組んだ足を戻しつつ、後ろに立つジョンに振り返り口を開いたのだった。ジョンは意を得たように、小さく頷いて答える。
「ふふっ……それはいいことね。是非ともわたくしもその2人に会いたいもの。それほどの力を持っているならば、わたくしの力となってくれる。そうでなくとも、本史では、貴方とロゼが結ばれるのだから、それだけで心強いのだから。ジュリア、必ず連れてくるのよ。さあいきなさい」
そういうマートンの言葉に、一転して嬉しそうにジュリアは笑顔を浮かべ破顔した後に頷き、「必ずや」と言った後に一礼をして足早に去って行ったのであった。
その姿を楽しそうに眺めつつ、ジョンはジュリアが去っていったのを見送り漸く口を開く。
「あーあ、その気になっちゃってるね。ジュリアちゃん。ま、いいけど」
ジョンのその言葉に、クスクスと浮かべたマートンは足をぶらぶらと揺らして背もたれに寄りかかり口を開いたのだった。
「いいのよ。あの子はロゼに夢中になっていればいい。その間にやるべきことをし、手に入れるだけだもの」
マートンの言葉にジョンは、口元に笑みだけ浮かべて口を開く。ただ、目は笑っていないのだ。
だが、マートンはそれに気づく様子はないままに玉座にて目を閉じる。
「そうだね。正しい物語に僕は導きたいからね。さて、彼女の側に僕は行かなければね」
「ああ、構わない。行くといいわ。わたくしも戻らなくてはね」
そういった瞬間、部屋の明かりは一瞬にして消え、何故かマートンの姿は玉座から姿は消えていたのであった。
暗くなった部屋でジョンも天井を見上げ、真顔になりそのまま姿を消していったのであった。
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閲覧ありがとうございました。
今回、前女皇の項目を後程更新したいと思います。
秘密の部屋は、ぼんやりと光を灯す光源に照らされ、全面白い壁に覆われている。
だが、その壁一面には沢山の動物や化け物を模した非常に多くの可愛らしいぬいぐるみが同じ向きを向くように展示されているように綺麗なレイアウトにて配置されている為、一見して綺麗なのかもしれない。だがしかし、光源は床に置かれているためにぬいぐるみの下から照らされて不気味な様相になっている。
部屋の奥に何かしら装飾が施された絨毯が敷かれ高く盛られた台座と今は空の豪華絢爛な椅子があり、その後ろには天鵞絨の様な滑らかで仕立ての良いカーテンが掛かっている。それはまるでもう1つの玉座の様であった。
ジュリアが、玉座の前で傅き首を垂らすと同時に椅子の上には彼女とそっくりな金色の髪を頭の上で纏め上げ、複数の宝石を纏った黄緑の瞳を持つ女がカーテンの後ろから出てきて椅子にドカリと座る。女は若くジュリアよりも若い少女であった。少女は、ニヤリと厭らしく笑いながら太々しくも頬杖をついてジュリアを見下ろし、おもちゃを見つけたと言わんばかりな至極楽しげな表情でそのまま軽く身を乗り出す。
「やっときたわね。ジュリア」
その言葉に、ジュリアは顔を上げて見えてきたその少女の表情に一瞬顔を引きつらせて小さく頷き口を開く。
「はい、母上様。ただいまジュリア参りました」
ジュリアの言葉に満足げに少女はうんうんと頷きつ、表情は崩さずに口を開く。そう、この少女はジュリアの母であり前女皇のマートンである。
「よしよし、いい子だね。流石は私の娘だわ。胡散臭いアレから聞いたけれど、どうやら、面白い奴らが現れたとの事。実際どうなのかしら?」
娘であるジュリアを褒める言葉を紡ぎながらも、開口一番に彼女が開いた内容は、ほんの数時間前にこの皇国に降り立ったあの2人の事であった。
「それはひどいなぁ。僕にだって名前ぐらいあるのにぃ。あの子に決めてもらった、ジョンって名前がね」
マートンがその言葉を紡いだ刹那、突然マートンの背後の空間の大人1人が入りそうな大きさの面積が極彩色に水面の様にゆらゆらと揺らめき歪み、そして、その部分から男がゆっくりと抜け出してくる。その男はジョンだったのである。
「胡散臭いお前をなんと呼んでも支障がないだろうに」
振り返る事なく、マートンはそう吐き捨て退屈そうに足を組み替えて欠伸をした後にジュリアに改めて視線を向ける。再びいきなり現れたジョンにジュリアは顔を引きつらせているが、すぐに表情を不機嫌そうに歪めて小さく吐き捨てる。
「バケモノめ…。母上様、知っての通りです。コルダデソルトJrからの報告によれば、闇属性の薄弱なカナという名前の女と光属性のセトという、見目麗しい騎士様だと。ギルドのBランク相当だという事。伝承の通りならば、母上様と私にとって非常に厄介です。なので、私の命にて、女の方を国を揺るがしかねない魔王と認定するように手配しております」
ジュリアの報告に、下卑た笑みを浮かべたマートンは満足げに何度か頷いては組んだ足を戻しつつ、後ろに立つジョンに振り返り口を開いたのだった。ジョンは意を得たように、小さく頷いて答える。
「ふふっ……それはいいことね。是非ともわたくしもその2人に会いたいもの。それほどの力を持っているならば、わたくしの力となってくれる。そうでなくとも、本史では、貴方とロゼが結ばれるのだから、それだけで心強いのだから。ジュリア、必ず連れてくるのよ。さあいきなさい」
そういうマートンの言葉に、一転して嬉しそうにジュリアは笑顔を浮かべ破顔した後に頷き、「必ずや」と言った後に一礼をして足早に去って行ったのであった。
その姿を楽しそうに眺めつつ、ジョンはジュリアが去っていったのを見送り漸く口を開く。
「あーあ、その気になっちゃってるね。ジュリアちゃん。ま、いいけど」
ジョンのその言葉に、クスクスと浮かべたマートンは足をぶらぶらと揺らして背もたれに寄りかかり口を開いたのだった。
「いいのよ。あの子はロゼに夢中になっていればいい。その間にやるべきことをし、手に入れるだけだもの」
マートンの言葉にジョンは、口元に笑みだけ浮かべて口を開く。ただ、目は笑っていないのだ。
だが、マートンはそれに気づく様子はないままに玉座にて目を閉じる。
「そうだね。正しい物語に僕は導きたいからね。さて、彼女の側に僕は行かなければね」
「ああ、構わない。行くといいわ。わたくしも戻らなくてはね」
そういった瞬間、部屋の明かりは一瞬にして消え、何故かマートンの姿は玉座から姿は消えていたのであった。
暗くなった部屋でジョンも天井を見上げ、真顔になりそのまま姿を消していったのであった。
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