勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

くノ一

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ドラゴン討伐

34.勇者の戦い方

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「へ、魔王軍ってのはこんな程度なのか」

 剣を駆使し、魔王軍を次々と撃破していく。魔王軍の兵士達は距離を取りつつ、警戒していた。

「颯爽と勇者様が来てやったんだ。俺の経験値にさせてくれよ」
「不意を突かれたからと言って、調子乗んなよ!」

 俺らが来た時には既にこの状態だった。途中で何人も兵士が倒れていたが、その原因が彼らが仕留めたのだとこの場に立った時に気付いた。
 兵士達とやりあってる間は、俺らは草陰で身を潜める。後ろから静かに近づいて来るトルゥに手で合図を出し、近くまで来た後、ささやき声で話す。

「今は動かない方がいい。目の前にいる彼らに任せておいた方がいい」
「分かったけど、あの勇者様は何がしたいの」
「・・・察してやれ」

 剣を片手に勢いを乗る彼は、魔王軍兵へと煽りをしていた。彼は魔王軍も同じ人間ではなく、魔物として見ているのだろう。だから、兵士達を突撃させ、カウンターで仕留める。それが彼のやり方だ。
 だが、それは命取りだ。同じ種族だからこそ、学習する。既に兵士達は魔法使いや弓兵を集め、彼の周りを防衛系の兵士達が取り囲んでた。
 勇者と名乗る男性は腰から短剣を抜き、その動作で一回転する。剣を大きく地面へと叩きつけては疾風を作り、魔法や矢はその風で軌道からずらしては攻撃を避けていた。

「そんな程度かよ。もっと掛かってこいよ」
「くそ!」

 第2の攻撃へと準備を始めた時、盾持ちの兵士達が前へと出ては、徐々に牽制している。
 連携の取れた行動だ。獲物を仕留める為、もしくは強敵を仕留める為だけに行動しているようなものだ。
 勇者と侮っては負ける、それを既に認識しているのだ。

「実力はあるみたいですね。他の三人もかなり強い」
「実力はそうだな。だが、そのリーダーがあんな性格だったのが残念だが」

 前会った勇者の方がマシに見えてくるが、それでもあの勇者と同レベルなのかもしれない。

「俺の経験値になってくれよ。どうせ、お前らはモブだしな」

 ゲーム感覚、彼はそのように感じているはずだ。無論、これはゲームなどではなく、現実だ。だからと言って、相手を煽る行為は命取りになりかねなかった。
 兵士達は距離を取ったり、近付いたりしながら様子見していた。仲間がやられたからと言って、彼らは人数でのゴリ押しではなく、囲いつつ、遠距離攻撃へと徹している。
 だが、勇者は前へと出ては盾を持つ兵士を踏み台にし、上空へと高く飛んでは後ろにいた魔導師や弓兵へと剣を振り下ろす。
 その一撃によって、何人かが飛ばされ、壁に激突、もしくは遠くに吹っ飛ばされる者もいた。
 彼らの後ろは崖の真下に位置しているた為に逃げ場などない。彼らは徐々に退路なき後ろへと下がるが、勇者の方が徐々に近づいていく。

「勇者がこれほど強いとは」
「我々が数を揃えようと勝てる相手ではない・・・」
「ベレニアス様なら、なんとかしてくれるかもしれない」

 このドラゴン部隊を指揮する司令官、多分その人物こそが、彼らの言うベレニアスだろう。
 この事を伝える為にその場を離れようと数名の兵士が後方へと交代を始めた。残った者達は勇者が彼らを追いかけないように足止めへと徹底しながら、周りを取り囲んでいた。

「へぇ、彼らを庇うんだ。なら、容赦はしないぜ」

 囲まれながらも、余裕の表情で対応していく。盾があろうがなかろうが、剣で薙ぎ払っては悲鳴が響いた。
 更には片手に持っていた短剣を投げ、兵士へと刺さってはその方へと走り、倒れる前にその短剣を抜き、勢いに任せながら周りにいた兵士も剣で薙ぎ払った。
 隣にいるトルゥは状況が分かってなかった。その為、囁きながらその状況を伝える。

「彼らは時間稼ぎだ。大将が来るまでのな」
「それだけに人は命を惜しまないんですか?」
「多分、彼らはその大将を信じてるんだと思う」

 勇者は味方のバフを利用しながら次々と持っている剣で仕留めて行く。兵士達は必死に抵抗しながら、彼らの猛攻へと足を突っ込んでいた。
 仲間の為に自らその命を差し出すかのように。

「彼らは彼らなりの覚悟があるんだ。だから、彼らは命を惜しまない」

 俺の一言を最後に、目の前にいた兵士達は全滅していった
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