勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

くノ一

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ドラゴン討伐

35.それぞれの思惑

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 武器をしまい、周りに誰もいない事を良い事に、兵士達の死体を漁り始める。戦利品の回収とも言うべきだろうが、これを見てる限り盗賊にも見えてしまう。
 金品類を回収する為にあらゆる所を触り、あれば取り出し、懐へとしまう。

「こんなの金になるんか・・・」

 金になりそうな物を取っては、漁った兵士の死体を蹴り飛ばす。そして、次の死体へと向かう。
 見ている俺らにとって、その行為は嫌になりそうな程だ。今すぐにでも吹っ飛ばしたい、そう思い、その場から出ようとした時だ。
 彼らが全ての死体を漁り、一旦集まっている時だ。その場から出ようと立ち上がろうとした時、微かだが、微妙に嫌な気配が前進へと走った。すぐに思い留まり、体勢を低くする。
 トルゥも、俺に続こうとゆっくりと立ち上がっていたが、すぐに姿勢を低くした。
 すると、崖の上から勢いよく地面へと何かが落ちた。普通の落下ではなく、スカイダイビングの時に感じるスピードに近いかもしれない。

「・・・たく、気分いい時にまだ生き残りがいたのか」

 煙で何も見えない状況だが、彼らはそちらの方向へと武器を再度取り出しては向けた。
 だが、俺は感じていた。煙の中から感じた気配は、普通の人間並ではない。

「人の陣地へと、のこのこ転がり込んで来た生き物はどいつかしら」

 煙からその声が響く。女性の声であり、威圧など一切感じない。彼らはその声を聞いた時、何を思ったのか、鼻で笑っていた。
 彼らは彼女から感じる異様な気配を気付いてない。

「へ、また雑魚か。いい気になるなよ。どうせ俺の経験値になるんだし」
「いい気になってるのはそっちでしょ?舐めてると、死ぬよ」

 そう言った瞬間、体勢を低くして一気に走り出した。いや、飛んだに等しいのかもしれない。
 彼らへと空中を一気に駆け抜け、目の前にいた者を横へと蹴り飛ばす。そのまま降りる事なく、空中で一回転しながら、横にいた者を逆の方へと蹴り飛ばした。

「あなた達には武器なんて必要ない。格闘だけで十分よ」
「こいつ・・・どんな反射神経をしているんだ」

 慌てた勇者は連れの1人と後方へと下がる。蹴り飛ばされた2人はその威力を語っており、遠くへと飛ばされては身動き一切してなかった、
 蹴りだけで、重い攻撃が出来るというのだ。他のとは比べ物にならない程の異様とも呼べる強さを保持している。今の彼らでは足止めさえ十分に発揮されないかもしれない。
 すると上空に何かが飛び立つたのか、影が現れる。大型の鳥、そんな影がうようよと現れては、地面へと兵士達が落下してくる。

「ベレニアス様、我々も助太刀します」
「私1人で十分よ。最近の新人の勇者は強者を知らないみたいだから、再教育は必要でしょ?」

 その言葉を聞いた時、兵士達は後ろへと一歩下がった。
 上空には翼竜、地上は兵士達で囲んでいた。そう簡単には逃げ切れない。寧ろ、あの怪我で逃げられるとは思ってもいない。
 彼らにとっては絶体絶命、状況を打破する程の力も残っていないだろう。

「様子見は終わりだ。彼らを助ける」
「でも、今行けば私達も・・・」
「勝てるかどうか分からない。だが、彼らをここで見殺しには出来ない」

 俺は右手にチェーンブレードを作った。翼竜は数匹が上空へと停止しており、角度を決め、投げの体制を作る。こちらへと気付いてない事を確認した後、チェーンブレードを大きく振り回した。そのままチェーンは分離し、空中へと無数の刃が飛び交う。
 本来は気付かれるが、あの勇者へと向いていた為に一歩遅く気付き、その時には既に目の前まで迫っていた。空中へと無数の爆発と共に浮いていた翼竜全部が地上へと落下する。

「・・・な!?」

 先程まで空中にいた仲間達が突如と爆破し、地上へと落下した。その光景を見た時にはなにが起こったか理解が出来ない。ちゃんと見てないから言える事なのかもしれない。

「まだネズミが隠れてたみたいね。翼竜は全滅したのは痛手ね 」
「続け!奴らを取り囲め!」

 彼らにとっては痛手だったと言えるはずだが、それでも展開が早い。まるで捨て駒、だったのかもしれない。
 展開される前に、こちらが先手を打つ。チェーンブレードで移動している兵士を狙う。そのまま飛び出し、威力を出す為に地面へと勢い良く叩き落とし、風を生み出す。
 その威力は兵士を吹っ飛ばすほど、威力が出ていた。

「これはこれでまずいかも」

 彼女は指を鳴らし、前衛にいる兵士達を後ろへと下がらせた。立てない兵士は他の兵士達の肩を借りながら共に下がって行った。
 兵士達とはすれ違いながら、ベレニアスと呼ばれたリーダー格は指を鳴らしながら前へと進み始めた。

「これくらいの相手、あなた達では荷が重いわね。私がやるわ」

 腰に装着している剣を抜かずにそのまま前進してくる。そして、気付いた時には目の前まで迫っていた。
 咄嗟の判断に体はついて行けず、重い一撃を腹へと入れられた。そのまま後ろへと飛ばされながらも、足で減速させ止めたが、その一撃は流石に重かった。

「見えない移動に攻撃、普通の兵士とは一枚違う訳だ」
「そこら辺の士官クラスと一緒にしない方が身の為よ。最も私は手を抜いてるんだけど」

 実力は実力だ。今の俺では倒す事も叶わない相手。今まで鍛えてきたとしても勝てる確率は非常に低い、いや確率自体がないかもしれない。
 だからこそ、その中に勝算は生まれてくる。確実に負けゲーム、彼女は手を抜いてると言った。だからこそそこに漬け込みさえすれば勝てる。

「・・・やる気だな。その実力、拝借させてもらうとしよう」

 彼女は前へと進み始めた。
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