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戦争 中章
183.魔王の所に
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この基地を放棄するのは既に決めていたことだ。ある程度の物資を馬車へと載せ、騎士達は他の騎士団と合流するために移動を開始する。
昨日のうちに龍の里の者達と合流をしている。戦力を増やした所で今のところ魔王軍勢と対等と言える立場だと思っている。
それでもまだ戦力などの差は大きい。幹部の人数、そこが謎だ。
「移動開始する。全軍我に続け!」
そして大移動が開始する。魔王軍の領土を直行しながら。
薄暗い部屋、そこへ慌てるかのように兵士が部屋へと直行する。
「お知らせします!クジャク様が戦死なされました!」
敬礼を忘れずに大きくその場にいる者に知らせる。その場には7人の幹部と玉座に座る魔王がいる。
「・・・分かった。下がれ」
「し、失礼しました!」
兵士はその場から退出していった。その場にいた者達はいなくなってから喋りだした。
「あいつが死ぬとなると、相当だな」
「油断して死んだんでしょうね」
笑いながら、戦友の死を軽く見ていた。そして鎧を装着し、ヘルムで顔を隠した者が魔王の前へと立つ。
「魔王様。ここは我が動きましょう」
「あなたが動いてどうするのよ」
「クジャクの埋め合わせだ、アーメイヤよ。ここからは俺の戦いだ。口出しされちゃ困るのよ」
アーメイヤと呼ばれた女性は舌打ちしながらも下を向いた。
そしてヘルムを被った幹部は魔王へと目線を向ける。ヘルムのせいか完全には見えない顔からただならぬ邪気を放っていた。
魔王は彼の決意を見たのか、
「いいだろう。全兵を倒せとは言わん。ある程度は殲滅せよ」
「御意。我が名誉の為、魔王様の為、その言葉従いましょう」
鎧を着用した幹部はすぐに扉へと歩み寄り、その扉を開け出て行かれた。
「では、我々もこれで」
次々と幹部達は扉を通り抜けて、出て行かれた。その場に残った魔王は何かの気配に気付いたのか、辺りを見渡す。
「先程から誰だ」
「あら、気付いてたのね」
声が部屋に響いた後、目の前から突如空間が現れた。そこから傘を指した少女が現れる。
「さすが、私と同じよう観測者な事」
「・・・何しに来た?」
「見に来たのよ。クジャクって子、私の世界の住人が秒殺していたわよ」
魔王は傘を指した少女の言葉を聞くだけだ。彼女からは感じられない何かを感じ取り、警戒だけは緩めなかった。
「この世界もちょって終わりかな」
「なんだと・・・」
「あなたも分かってるでしょ?あなたが死ねば他の魔王も同時に死ぬって」
「・・・」
彼女は通路をウロウロとしながら、さらに続けて語る。
「この世界に観測者が4人いるなんておかしかったのよ。仕組みが分かれば納得だわ」
「・・・」
魔王は彼女の言葉に黙り込んでしまう。彼も気付いていた。自分はただの置物でしかない事を。
「それだけか?小娘よ。ここにいる以上、生きて帰れるとは思うなよ!」
彼は手から球体を作り、彼女のいる所へと放った。彼女は身軽な動きで避ける。
「あら、わたしとやりあうっての?」
「俺をなんだと思う。お前なんぞ一瞬だ」
「実力差ってのを知らないようね」
魔王が次の攻撃を行おうとした時、突如となく地面へと倒れ込む。そして地面に大きなくぼみが生まれる。
「き、貴様何を」
「重力による攻撃よ。今のあなたでは私を倒すどころか、私にボロボロにされるわよ」
少女は笑みを浮かべながら、先程彼女が来た空間を展開させる。
「まあ、もう少し観測はしてあげるわ。無残な死に方を見ていてあげるわ」
彼女は笑いながらその空間に入り、そして消えて行った。
それと同時に魔王は重力の呪縛から解放された。
「これが世界の差ってわけか」
彼は立ち上がり、玉座へと戻り、座り直したと同時に部屋に兵士達が入ってくる。
「魔王様ご無事で!」
「俺は大丈夫だ。下がれ。何もない」
「し、しかし」
「下がれって言ってるんだ」
し、失礼しますっと兵士達は言った後、玉座の間から離れていった。
魔王は誰もいない空間でただ1人で笑い始めた。
昨日のうちに龍の里の者達と合流をしている。戦力を増やした所で今のところ魔王軍勢と対等と言える立場だと思っている。
それでもまだ戦力などの差は大きい。幹部の人数、そこが謎だ。
「移動開始する。全軍我に続け!」
そして大移動が開始する。魔王軍の領土を直行しながら。
薄暗い部屋、そこへ慌てるかのように兵士が部屋へと直行する。
「お知らせします!クジャク様が戦死なされました!」
敬礼を忘れずに大きくその場にいる者に知らせる。その場には7人の幹部と玉座に座る魔王がいる。
「・・・分かった。下がれ」
「し、失礼しました!」
兵士はその場から退出していった。その場にいた者達はいなくなってから喋りだした。
「あいつが死ぬとなると、相当だな」
「油断して死んだんでしょうね」
笑いながら、戦友の死を軽く見ていた。そして鎧を装着し、ヘルムで顔を隠した者が魔王の前へと立つ。
「魔王様。ここは我が動きましょう」
「あなたが動いてどうするのよ」
「クジャクの埋め合わせだ、アーメイヤよ。ここからは俺の戦いだ。口出しされちゃ困るのよ」
アーメイヤと呼ばれた女性は舌打ちしながらも下を向いた。
そしてヘルムを被った幹部は魔王へと目線を向ける。ヘルムのせいか完全には見えない顔からただならぬ邪気を放っていた。
魔王は彼の決意を見たのか、
「いいだろう。全兵を倒せとは言わん。ある程度は殲滅せよ」
「御意。我が名誉の為、魔王様の為、その言葉従いましょう」
鎧を着用した幹部はすぐに扉へと歩み寄り、その扉を開け出て行かれた。
「では、我々もこれで」
次々と幹部達は扉を通り抜けて、出て行かれた。その場に残った魔王は何かの気配に気付いたのか、辺りを見渡す。
「先程から誰だ」
「あら、気付いてたのね」
声が部屋に響いた後、目の前から突如空間が現れた。そこから傘を指した少女が現れる。
「さすが、私と同じよう観測者な事」
「・・・何しに来た?」
「見に来たのよ。クジャクって子、私の世界の住人が秒殺していたわよ」
魔王は傘を指した少女の言葉を聞くだけだ。彼女からは感じられない何かを感じ取り、警戒だけは緩めなかった。
「この世界もちょって終わりかな」
「なんだと・・・」
「あなたも分かってるでしょ?あなたが死ねば他の魔王も同時に死ぬって」
「・・・」
彼女は通路をウロウロとしながら、さらに続けて語る。
「この世界に観測者が4人いるなんておかしかったのよ。仕組みが分かれば納得だわ」
「・・・」
魔王は彼女の言葉に黙り込んでしまう。彼も気付いていた。自分はただの置物でしかない事を。
「それだけか?小娘よ。ここにいる以上、生きて帰れるとは思うなよ!」
彼は手から球体を作り、彼女のいる所へと放った。彼女は身軽な動きで避ける。
「あら、わたしとやりあうっての?」
「俺をなんだと思う。お前なんぞ一瞬だ」
「実力差ってのを知らないようね」
魔王が次の攻撃を行おうとした時、突如となく地面へと倒れ込む。そして地面に大きなくぼみが生まれる。
「き、貴様何を」
「重力による攻撃よ。今のあなたでは私を倒すどころか、私にボロボロにされるわよ」
少女は笑みを浮かべながら、先程彼女が来た空間を展開させる。
「まあ、もう少し観測はしてあげるわ。無残な死に方を見ていてあげるわ」
彼女は笑いながらその空間に入り、そして消えて行った。
それと同時に魔王は重力の呪縛から解放された。
「これが世界の差ってわけか」
彼は立ち上がり、玉座へと戻り、座り直したと同時に部屋に兵士達が入ってくる。
「魔王様ご無事で!」
「俺は大丈夫だ。下がれ。何もない」
「し、しかし」
「下がれって言ってるんだ」
し、失礼しますっと兵士達は言った後、玉座の間から離れていった。
魔王は誰もいない空間でただ1人で笑い始めた。
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