対異世界防衛学園

くノ一

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メインストーリー

13.デスマッチ3

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 零は建物に隠れながら移動を続けていた。付近に誰かが潜伏しているからである。零は気付かれずにあと50mの所まで来ていた。さっきと同じく待ち伏せしている可能性を考えてだ。真正面から襲っても問題ないのだが、偵察スキルがどれくらいあるのかを知る為にやっている。
 相手が隠れているビルの後ろを回っていた。ちょうど背中が少し見えた。どうやら隠蔽しながらの待ち伏せのようだ。後ろからでも気づけるように足元には破片があっちこっち散らばっていた。音で察知して襲うためであろう。だが零には振動を使って音なく浮く事が出来る。こんな小細工など全く通用しない。
 真後ろまで来たらサブマシンガンを構えて撃った。もちろん気づいても耐久値は無くなっている。また一人と倒れた。
『世羅君ログアウト』
 残り時間はあと10分だった。そして残り人数は3人まで減っていた。だが移動開始する前に、
『冴凪さんログアウト』
 あっちの方でやり合っていたのか二人だけになった。零には残ったのが誰なのかが分かっていた。
「やっぱ葵か……」
 右手に装着されていたモニターの名簿を見た。生き残っている人が浮上して、倒されるとこの名簿から消されていく。モニターには『東野月 葵』だけ写っていた。彼女には小細工は不可能に近いので、それなりの準備が必要と零は感じていた。
「いや…そんな時間もくれそうにないか」
 突如何かに反応した零は一歩後ろに下がった。すると零の足元に魔力弾が飛んできて地面で弾いた。
「もう見つかったか」
 零が上空を見上げた。そこには葵が飛び降りて急降下していたのだ。彼女の両手にはハンドガンとサブマシンガンらしき物を持っていた。多分先ほどの数発はサブの可能性があった。
 葵が空中で両手の銃を撃ち始めたので零もそれに対応する為に撃ち始めた。魔力弾と魔力弾の衝突が空中で炸裂を起こした。結果的に相打ちになり、葵が地上に立った時にダッシュして零に急接近して地上戦に持ち込んだ。
「いつまで持ちますかね」
 葵が零の目の前に迫って零の腹に銃口向けて放った。だが零も撃たれる前に銃を払ったので実質地面に飛んだ。それが両者で攻防が繰り広げられて、両者が距離を一時的にとった。
「そう簡単には倒させてくれないようですね」
「そっちこそどこまで持つかな」
 残り時間は5分。時間内に勝負を決めようと両者が動いた。

「二人ともやるなあ」
「さすがに同じ道場で鍛えられた感じはするね」
 零と葵がやりあっている時に控え室では潤、早希、鏡花がモニターを見ていた。潤が関心して、鏡花は納得していた。
「あ、あんな接近戦を二人は軽々と…」
 早希はおどおどしながら呟いた。
「簡単な事だ。この二人はSクラスにいてもおかしくない人材って事だ」
「でもあの二人、Sクラスには行きたくなかったって言っていたよ。何か色々とあるみたいで」
 潤が言った事を鏡花が付け加えるように言った。潤は鏡花が言った事を聞いて少し残念そうな顔をした。
「まあ、中等部からいるSクラスと同じ優遇の0クラスとかに四獣神の特殊能力保持者候補生がいるのも理由らしい」
 潤は零との会話を思い出しながら言った。四獣神という特殊能力は世界でたったの四人しか出ない。現在は三人だけで一人だけ欠けている。それがもう10年以上も続いているのだ。
「四獣神ってどんな能力なんだろうなあ」
「さあな、四つともそれぞれ異なっている話だし。これに詳しそうな人が今戦っているからなあ」
 潤はモニターを見た。零なら詳しいだろうと思ったのだろう。
「まあ、さておき試合も残り時間わずかだし見よ」
 鏡花の言葉に二人は頷いた。

 二人は接近戦で銃を撃ち合っていたいうより既に格闘戦に近い事になっていた。両者とも一歩も譲らずに互角な状況になっていた。接近しては銃を撃ってはそれを受け止める。そんな光景が何回も行われているのだ。
「そろそろ…終わり頃…じゃないの」
「そっちこそ…まだやるつもり?」
 両者とも息を切らしながら睨み合っていた。すると突如上空に制限時間が残り1分を知らせたいのかタイムだけがスクリーンとして上空に現れた。二人はそれを確認すると最後の攻撃を仕掛けようと構えた。
((ここが勝負どころ))
 50秒になった時に二人はダッシュした。そして銃と銃がぶつかり合う金属音と無数の発砲音が辺り一面に広がった。魔力弾を回避しながら発射しては、人がやっと見えるほどの速さで二人はやりあっていた。残り時間が10秒を切った時に両者が反動で距離をとりながら銃を構えて発射した。
 勝負は時間切れで終わった。両者が最後に放った魔力弾は真ん中でぶつかり合って弾いたのだ。二人は時間切れでの引き分けになった。
「私もまだまだね」
「今回は引き分けで終わったか」
 葵は疲れ気味の顔をしていたが、零には疲れを見せる素振りもしなかった。彼にとってのこれはただのきつめの準備運動しか思っていない。
『では、瞬間移動させるのでそのままでいて下さいね』
 名虎先生がそう呼びかけてから二人は瞬時に別のところに移動された。

「はい、皆さんお疲れ様でした」
 名虎先生はニコニコしながら喋っていた。現在いるところは会場の外にある駐車場だ。さすがにみんな疲れ気味のようだった。
「これは一ヶ月後にやるFPWSの第二学園学年クラス対抗大会です。先生方の噂はSクラスが優勝すると言っている人が多いですが、皆さんが頑張れば勝てるかも知れませんね」
 先生の言っている通り、SクラスとAクラスとの実力差は大きい。Aクラスで強い人が一人二人いたところで実力者が多いSクラスには勝てない。Sクラスでは魔力の多さで決めてるわけではなく、実力で選んでいる。
「お前らじゃまだまだ実力がない。私がみっちり鍛えるから覚悟しておけよ」
 煤久根先生が気合いを入れているかのように大声で言った。
(だから体育系の先生は苦手だ…)
 零も少しは不安が残った。
 先生が喋り終わってから少し時間が経過した時にバスが到着した。
 現在は12時14分。まだ4限目の時間である。実技の授業は大抵2限を使用して行う。今回もそうである。
 全員がバスに乗った時にバスは学園に向けて出発した。

 学校に着いて、零は葵と食堂に向かった。授業が終わる5分前に着いたため、席が空いている今のうちに入ろうとしたのだ。食堂は零が見込んだ通り人は空いていた。実際は学園の食堂で食べなくても外にあるファミレスでも食べられるのだが、近いという事で学園内の食堂にしたのだ。
「今日は定食にしたの?」
 葵は丼を持ちながら、零のトレイに乗っている物を見た。
「たまには良いかなってね」
 零はトレイを空いているテーブルに置いて座った。葵も零の向かい側に座った。
「そんな葵はチーズ牛丼ですか…」
「え、あったから頼んだんだけど……美味しいよ?」
 葵は食べながら美味しいと零に言っていた。零はその話を黙々と聞いてた。ちょっと食べている時に、
「お、零もここか?」
 そこへ潤、鏡花、早希の3人がやって来た。
「座っていいよ。二人だけと言っても次の授業の事だけど」
「二人だけなのにすまないね」
 葵の隣には早希と鏡花が座り、零の隣に座った。3人とも零と同じ定食にしたようだ。
「次の授業ってなんだったけな」
「お前なあ…次は魔設計だろ。アーマーに入れる魔力の方式についての勉強」
 零は忘れがちな潤に説明した。
「そもそも俺達も使って体験していると思うけど、俺らが最初に使ったのが魔力弾式初期設計が組み込まれたアーマー。そしてついさっき使ってた銃に組み込まれてたのが魔力弾変形式初期設計なの」
「違いってあるの?」
 零の説明を聞きながら潤は聞いた。鏡花と早希は零の話を聞きながらぼうとしていた。
「違いはアーマー。スーツはただ魔力を高める働きをするだけだから。アーマーを来てやる『マジックマスターリー』…通称『MMR』か、その時に着られるアーマーには幾つか使われる方式を入れている。だがさっきやっていた『FPWS』のアーマーには組み込まれてない」
 零の話に向かい側に座っていた鏡花と早希は先にポカーンと動きを止めた。零の隣に座っていた潤も目を丸くして零の話を聞いてた。なお葵は美味しく丼のチーズ牛丼を食べていた。
「これは共通だけど武器に方式を組み込む事が多い。銃とかには事前に決められた方式を組み込まれている。剣には魔力が流れやすいようにするための方式を組み込む……って話聞いているの」
「す……すまねえ。途中から全く分かんねえ」
「私もですー」
「あー私もギブ」
 3人とも揃って言うかのように息を吐いた。葵は丼を食べ終わって満足そうな顔をしながら、
「零は一度聞いた事や見た事は絶対に忘れる事ないのよ。スキルの絶対記憶だっけ」
 葵はそう言って席を立ち上がり、丼を持って、
「私は先に行くね。色々とまとめたい事あるから」
 葵はその場から去っていった。
「お前…案外すごい奴なんだな…」
 潤の言葉に女子二人も「うんうん」と動作をしながら零を見た。零は息を吐きながら食べた。
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