対異世界防衛学園

くノ一

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メインストーリー

19.生徒会の仕事6

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『何があった。他の班は何をしているんだ!』
『分からない…、数人はやられた。敵は2人、藤咲姉妹だ!!』
 通信が何かを見たのか慌てていた。二人組に襲われて数人がやられたと言っていたのだが、
「もう相手行動起こしたのか」
 隣で通信を聞いていた葵が呟いていた。零が設置していたトラップ系統も突破されていた。零の感覚では5分後に来ると予測していたが、早めに行動を起こされたのだ。
 現在零と葵は屋上からダッシュしながら移動していた。
 屋上から別の屋上に飛び移った時に、するとすぐ後ろの方で爆発と銃声がしていた。
「あら、もう敵はここまで来ているみたいだよ」
「あーもー、作戦変更だ。先に厄介な相手と殺り合うよ!!」
「分かった。なら私は姉様をやるわね」
 一度立ち止まり、そしてすぐに引き返した。一つのビルを飛び越えた先の屋上の真下では味方の班の二人組が銃撃戦をしていたが、相手1人が一気に近づいて持っていた剣で2人を切り倒していた。
 戦い方は零と同じ戦法を使っていたのだ。
「それじゃ姉様は頼むね」
 そう零は言い残して屋上から飛び降りた。

「もうちょっとマシな相手いないものなのかな」
「そう焦るな妹よ。私達に対抗出来る人材はいるはずだから」
「そう言われても…歯応えがないのですよ」
 来夏と雪が会話していた。2人は生徒会長の命令で動いている。
「無数のトラップに二、三人で動いている所が殆どだからかな…、てか相手はどうやってこんなにトラップを設置出来るの」
 やたらと疑問点を口に出していた。来夏も溜息をつきながら、
「敵にも私達の行動が分かっていた人がいたかもね。だから足止め程度のトラップだったんじゃー」
「あれどう見ても殺しに掛かっていたんだけど」
 威力的にと見ていた雪は白い髪をゆさゆさしながら警戒もせず前へと進み始めた。すると、
「!?」
地面に向かって魔力弾が飛んで来たのだ。一つではない。もっと無数に左右の壁と上から降り注いできたのだ。雪はそれを華麗に回避行動をしたのだが、かすり傷程度のを食らっていた。
「やってくれるじゃない」
 雪は右側の壁を走りながら降りてくる1人の姿を眺めていた。

「あれでもかすり傷程度のダメージか」
 零はビルの壁を走っていた。飛び降りる際に無数の魔力弾を壁や直接狙ったのだが二発程しか当たらなかったのだ。削れた耐久値は一桁に等しい。
 すると雪が片手に持っていた剣を構えて、そのまま零に向かってジャンプダッシュをした。零は右手に持っていたハンドガンを右腰にしまい、同じく右腰に装着していた折りたたみ式の剣辺りに、右手を近づけるとセンサーが組み込まれているため自動射出で受け取れるようになっている。それを受け取り1回転させるだけで一瞬ではまる音とともに長くなった。
 空中で剣と剣が擦りあった。そしてその反動で両者は地面に叩きつけられた。
「やっぱりあまたも前線に出てくるんですね」
 雪の後ろで来夏が言っていた。
「俺が前線に出ないと他の班が全滅するんでね」
「なら、ここでくたばりなさい!」
 雪が一気に近づいてきて剣を振りかましてきた。能力は使えなくても威力だけは十分にあった。右側に回避したが、斬撃の如く零がいた所から後ろが一直線に切れ目が入っていた。
 剣に魔力を包ませているのだ。そして何らかのスキルを行使しての出来だと感じた。雪も零と同じくいくつものスキルを持っている。
 零は左手を切り裂くように上から地面に向けて振り下ろした。振り下ろした所は爆発するかのように煙と地面に傷跡を残した。
 煙が発生してわずか2秒程で雪に一気に近づき、剣をお返しの如く振り下ろした。
 その事に近づいた雪は後ろに下がった。雪が先程したように零の斬撃がビルの壁を走った。
「さすがに避けられるか」
 零の不意打ちの攻撃だ。煙が起きた瞬間の行動だ。普通の人では気付く前に攻撃が届く。
 だが雪の場合は全てを警戒していたため、零の斬撃を避けれたのだ。
 そしてそこから両者の行動がピタリと止まった。どちらも出方を伺っているのだ。

「この勝負長引きそう…」
 そう200m程離れた位置にいた来夏が呟いた。
「この場は雪に任せるわね。私は他の班を潰しに掛かるから」
 そう言い残し立ち去ろうとした来夏の前に葵が上から降りてきた。
「そうさせません!」
 葵は素早い動きで間近まで近づき葵も装着していた剣を振り下ろした。だが来夏は片手に持っていたマシンガンを盾にそれを防いだが、マシンガンは勢いとともに分解した。
 来夏は後方に下がり、懐から短剣を取り出した。
(あれは半刀…、姉様はなんでも使用出来るのね)
 半刀は忍者の兵科が使っていた短剣だ。
「折りたたみ式のじゃなくて短剣を使うんですね」
「この短剣はちょうどいい長さなのよ。普通の剣じゃ長くて振り回せないからね」
 そう言っている内に来夏は一気に葵まで近づいていた。激しい刃と刃が擦り合う音が辺り一面に響いた。
 葵はその勢いで後方に飛ばされた。転がり、なんとか体制を立て直した。
(これが姉様の実力ですか…、なら私も姉様に負けないようにするだけです!!)
 葵は立ち上がり、剣を構え直した。目を深呼吸をして神経を尖らせた。
 来夏がもう一度葵にハイスピードで近づいた。目にも止まらぬ早さで近づいているのだ。
 来夏が近づいたのを感知したのか目を開けて剣を右横から素振りするように斜め上に降った。来夏が空中から攻撃を仕掛けようとしていたらしく、剣と剣が交えてその場で爆風が吹いた。
 来夏がその場で着地した時、それを境に来夏と葵の激しい攻防戦が始まった。

「あっちでも始まったみたいだね」
「姉様は勝つわ。姉上は私よりも強い方だから」
 零と雪はどちらも睨み合いをしていた。先に動いたのは零。加速とは思えない早さでビルの壁を走り、上から雪に突進したのだ。
 雪は零の振り下ろしてきた剣を受け止めた。
 そして零は連続で剣で攻撃を仕掛けて、雪もそれに応戦した。
 どちらも互角と言っていい程だ。その場に連続で鳴り響く金属音と剣と剣がぶつかり合う時に出来る風が吹き続けた。
 そしてその範囲は一気に広がり、空中など移動しながらの戦闘に入っていった。
 壁を走り回り激しい攻防戦の末、ビルの屋上に両者が立っていた。2人はまだ疲れというのを見せてない。2人はまだこんなもんじゃ物足りないというばかりなやる気を見せていた。
「これじゃあいつまで経っても決着がつきそうにないわね」
 雪はそういい、構えていた剣を下ろした。そして、
「だから本気で行ってあげる」
 彼女の左目の赤色の瞳が青色の目へと変わった。零もそれを一目で分かった。そう…、彼女が『特殊型オッドアイ』という特殊能力者なのだ。
「『特殊型オッドアイ』……か。それで五感と自身の持つ技術や身体能力の底上げって所かな」
 さっきまで相手していた雪とは違う。『特殊型オッドアイ』は色々と効果を持つ。彼女の場合は身体能力や五感の底上げになる。反射神経やどんなに速い動きをしても捉えられてしまう。
「今のあなたに私を止められるかしら…」
 彼女は『加速』を使えるのだが、オッドアイをしている時のスピードは想像以上に速い。零も気付いたら目の前に来られている程だ。
 そして剣での攻撃、零は何とか受け止めたがその勢いで吹っ飛ばされた。
 後ろ側にあった道路の上を飛び越えた先にあるビルに何とか着地するが、雪の追撃による攻撃が続いた。
 攻撃の隙を見せない程だ。防御をしながらの攻撃などをさせてくれなく、零の持つ『神速』でも避けるのが困難な程だ。
 何回も何回も雪に剣の攻撃が続く。そして、
「?!」
 先ほどよりも速い太刀筋の攻撃を零は避けた。避けさせる隙を作らなかった雪にとったら驚くのも無理はない。
(さっきの一瞬で彼が早くなった……、いやそんなはずはないはずなんだけど)
 雪は横に避けた零に攻撃を続けるように横に振り、そこ反動で体を横に向けさせた。だがその剣の一撃も止められる。
 雪が次のステップに入ろうとした時、零が剣で切り掛かってきた。雪はそれを防いだが、先程の零と同様に吹き飛ばされた。雪は体制を立て直し、スピード勝負に入った。それに確認した時、雪の猛攻の攻撃から零も攻撃をするようにした。防御しながらの攻撃をだ。スピード勝負では雪と互角、そのスピードのある攻撃を両者が繰り返すのだ。その勢いで両者の耐久値がほんの少しずつ削れていく。
 一撃一撃のぶつかり合いが風を生み出していた。場所も屋上から道路に飛び降りたり、空中戦になったりと場所関係なく2人は攻撃防御を繰り返していた。
  もはや銃撃戦など関係なくなっていた。何回も周囲に金属音を鳴り響かせている2人にとっては、魔力弾が飛んできても切り落としてしまうだろう。
 先手に魔力弾での攻撃を開始したのは零だった。腰に装着していたハンドガンを手に取り、そして数発撃ち込む。雪はそれを全て切り落とした。
 2人はその後も周囲に音を響かせていた。

 零と雪がやりあっている時、葵と来夏は銃撃戦になっていた。来夏は手に持つのはマシンガン系統の『BMG_T(バトルマシンガン=トライ)』を使用していた。
 葵の持つのはツインハンドガン系統の『マグナムS(セカンド)』だ。連射系統のハンドガンを使用していた。
 空中で魔力弾が飛び交う。だが空中で弾く音が響いていた。来夏の撃ち込んだ魔力弾と葵の魔力弾が衝突していたのだ。リロードなしの撃ち合い、一つでも当たれば一方的に不利になる戦いだ。
 だが、この撃ち合いは来夏が一枚上だったらしく、葵に被弾かよく来る。
 葵はそこから建物の壁を利用して移動を開始した。
「どこに行くのかなー、子猫ちゃん」
 来夏は葵との撃ち合いを楽しんでいるかのような口調だった。
「私だってまだまだなんですよから」
 葵は逃げていたが途中で向きを戻し、建物の壁を能力で加速しながら走る。歩いていた来夏に上から攻撃を仕掛ける。
 来夏もある程度予想はしていなかったらしく、被弾した。
「やるわね、前よりは腕を上げているようね」
「それはどうもです」
 2人の激しい防衛はまだまだ続いた。

「作戦通りって所ですかね」
 生徒会長の前に女性1人がそう言っていた。
「ええ、あの姉妹が零と葵の足止めをやってくれるなんてね」
 美濃会長は着々と足を運ぶ。後ろには数名の生徒達がいた。
「残り20分ですか……、全班に通達です。一斉攻撃の開始の準備及び、移動出来る班は直ちに強襲せよ」
 彼女は通信を利用して班全体に伝えた。後ろに振り向き、
「作戦開始です。各班罠などに注意を」
 彼女の微笑みには何かが秘めていた。
 
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